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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第7章 御雷氷・八龍・御氷
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第174話 「古都音の部屋にて」

2016.04.26 1話め

 その日の夜、俺は古都音の部屋で今日もごちそうになっていた。

 古都音は「寧ろココで二人暮らしません?」なんて言っているけれど。それはもう少し後にしよう。

 その誘いは嬉しくない訳ではないけれど。ザスターを片付けてからにしよう。


「なんか、一気に疲れた感じがする」


 飯も食い終わり、俺は背伸びしながら地面に寝っ転がりそうになったところを古都音に止められ、ベッドへ誘導される。

 洋室だものな、流石にまずいか。自室なら鍛錬が終わった後とか普通にそうしているけれど。


 最近は、自室にいてもあまり楽しくない。前みたいに冷撫がこっそり侵入してくるのは困り者だが、楽しくもあった。

 前は毎日のように朝迎えに来ていたアマツも、最近は冷撫につきっきりだ。


 これで良かったかもしれない、と本気で思う。代わりに颯が護衛をしているのかと思うほどの堅い表情で迎えに来てくれるが。


「……あの、ありがとうございました?」

「震えてたろ、あの時」


 古都音の声が聞こえ、俺はそう答えた。

 あの時、確かに彼女の身体は震えていたし、鳳鴻おおとりも震えていた。

 彼女は恐怖や嫌悪だと思うが、鳳鴻はもっと強烈なものだと思う。


 鳳鴻は、絶対何か秘めている。今まで曖昧なことしか言わず、意味深に場を流してきた彼の裏側に、きっと何か存在するはずだ。

 わざわざ、それを表立って詮索しようとは思わないが……、俺にもう少し余裕があればよかったのだけれど。


 蒼穹城そらしろ刀眞とうまと2件片付けて、だいぶ精神は落ち着いてきたはずだった。けれど、俺は古都音のことでまた精一杯になってしまっている。


「……はい」

「ならやってよかった」


 まあ、彼女が何を言っても俺は自己満足で止めるんだがな。


「怖かった?」

「正直に言えば、はい」


 だって、古都音……俺の影に隠れるくらいだものな。

 そこまで嫌悪しているんだなーと。やっぱりアガミのいうことって間違ってなかったのか。


 アガミはどうしてるかね。てかアガミって英語喋れんのかな。

 顕現力を通して話をするのも、「だいたいこんな話をしている」程度のことしかわからないから、しっかりと向こうの言語は覚えて損はないんだよな。


 軽口が挑発に聞こえたら元も子もないし。


 ……そんなことを考えていると、なんか急に古都音がもじもじとし始めた。


「あの、ゼクス君自体の負担というのはどれほどなんでしょうか」

「【拒絶】は発動した瞬間に消費されて、維持費は必要ないから問題ないよ」


 とりあえず、そう言っておく。古都音を安心させるためだ。

 正直、よくわかっていない。顕現容量はだいたい数値化されて、ランク分けされているけれど、それも本当に「大体」のものしか判明していない。


 詳しいことは何もわかっていないけれど、今日の昼にやったやつをそのまま継続しているし、蒼穹城と刀眞家はそもそも外そうと思わない。

 だから問題ないのだと思う。


「そうですか……」

「俺の心配はしなくてもいいよ。これでも顕現容量の管理はできていると自覚してる」

「でも、無理をしそうで怖いんですよね」


 彼女の言葉に、俺は笑ってみせた。


「無理をすべき時には無理するよ」


 途端、古都音が泣きそうな顔をし始めたのを見て俺は慌てる。

 なんか変なこといったかね。確かに、無理しないでと言われているのに無理すると返したらそうなるか。


 けれど、これは俺の意志だから。ってのもあるし、正直彼女を守れるなら俺は後悔なんかしない。

 古都音だって、目の前で俺が死にそうになったら自らを犠牲にしても回復させようとするだろう。


 それの逆。


「自分を責めないでくれ。……俺が勝手にやりたくてやっているだけだから、俺のためであって古都音のためじゃない」

「……責任を自分に押し付けるの、迷惑がかからないと思っているかもしれませんけれど、私は寧ろ不安になりますよ」


 しかし、この少女は納得しない。

 俺は特に、自分に責任を押し付けるとかって言う考えではない。


 古都音と付き合って、恋人同士になれた。

 将来のことも考えてくれている。

 だから、彼氏としての責任を全うしたいだけなのだ。


 俺はいなくなっても、雪璃せつりが次代候補として残っている。

 しかし、終夜家には次の代が古都音しかいない。


 終夜という名は、俺が御雷氷みかおりとして【八顕】に参入してしまった時点で残せないかもしれないが、その技術や思いは古都音が受け継ぐことが出来る。

 だからこそ、俺は自分のために彼女を守りたいのだ。


「私がゼクス君と一緒にいるのは、ゼクス君と一緒にいたいからです」


 やっと分かったのだ。

 俺は、古都音が好きだ。ずっとこの思いが何か分からなかったが、一度それを理解してしまうともう止まらなくなる。


 自分の命は、一度無くしたと同じようなものだろう。

 刀眞胤龍が、八龍ゼクスと名を変えた時点で俺は一度、死んでいる。


 だから、何も問題はないのだ。


「……では、就寝の準備をしましょうか、ゼクス君」

「ん?」


 そんな声が聞こえて、俺ははっと我に返る。

 ……目の前のこの、少女は何を言っているのだろう?


 流石に今日は帰るぞ。毎日のように厄介になったら迷惑だろうし。

 しかし……。こういう時の古都音はかなり強引だ。


「今日も一緒に寝てくださいな、私が安心するために」


 そう言われたら、断れないんだよ……。

夜くらいはゼクスに幸福を。


次回更新は今日です。多分。

LOLに侵食されないかぎりは今日です。

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