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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第7章 御雷氷・八龍・御氷
172/374

第172話 「もう一人の復讐者」

2016.04.25 2話め

「事を荒立てないでと言ったのに」


 斬灯りとは、少々不機嫌というよりは困りきった顔で俺を見つめていた。

 仕方のないことだとは思う。けれども、あの手で古都音に触れられていたら俺はきっと今回以上に彼を攻撃していただろう。

 それに今回、俺の偏見であるが典型的なああ言う良家というのは、親にすがりつく様なタイプだと思っていたのだが……こちらとしても都合がいいことに、決闘に応じてくれた

 

 慢心は駄目、と知っているが勝ちがほぼ決定している決闘には力が抜けるというもの。

 いや、もしかしたら奥の手を使うのかもしれない。

 俺はやはり慢心せず、日々の鍛錬を重ねようと心に誓う。

 

「でも、本気で怒ってくれた時。私は嬉しかったですけれど」

「それとこれとは別。……確かに、私も少し羨ましいなとは思ったけれど」


 古都音と斬灯が顔を赤くして笑いあう。いや、多分斬灯が触れられそうになっても同じ行動をとったと思う。

 何度でも言うが、俺は自分と仲間の輪に外から干渉を加えられることへ拒否反応を起こす。

 結果的にその輪にはいるのならば、少々様子を見たかもしれないが。

 あれは無理。

 

「……俺も、ゼクスの行動は間違っていないと思う」

善機寺ぜんきじくんは、ゼクス君のことになるとイエスマンと化すから参考にならないなー」

「そうではなく。自分の愛する人、大切な人を護ろうとする姿勢は間違っていないということだ」


 俺がゼクスの忠臣となったのも、ゼクスとその周りに居る人物を守るためだとはやては断言し、冗談めいてからかった斬灯が恥ずかしさで赤面する。

 颯は気持ちがまっすぐだからな。俺みたいに迷うこともなく、……いや彼にも悩みはあったのかもしれないが。

 

「ごめんね、善機寺くん」

「問題ない」


 っと、俺は鳳鴻おおとりの表情の変化に気づく。

 先ほどの表情は消えていた。あの、強い憎悪は今感じられない。

 

「鳳鴻、どうかした?」

「……いや、何でもないよ」


 そういうなり、黙りこくってしまった彼へ斬灯も何か違和感を覚えたようだ。

 だが、何か質問をすることを、その態度が許さないようにも見える。

 

「僕は先に部屋へ戻ろうかな」


 そういって去っていった彼を、俺たちは呆然と見送ることしか出来なかった。


 仕切り直し、というように咳払いをするのはアマツであったが。

 

「とりあえず、どこか飯でも食いに行こうぜ」




ーーー


 天舞照あまて鳳鴻は、1人中庭を歩いていた。若干うなだれ、何かを思案するように。

 そんな彼に話しかける者は居らず、皆彼を避けて通り過ぎたため誰とも衝突せずに校舎裏までやって来れたのだが。

 

 そこで、彼を待っていたように現れる1人の人影がある。


『アマテ』

「なんだい? ザスター」


 鳳鴻の表情が一段階鋭くなった。

 そこにいるのはトラン=ジェンタ・ザスターである。今回は決闘ではないということで、ゼクスは一切表立った傷を負わせなかったのだ。

 

 鳳鴻の表情と同じように、ザスターの表情も鋭い。


『さきほど、【精神操作】をしただろう』

「言いがかりだね。僕は何もしていないよ、ただ君が終夜さんに手を出そうとして、ゼクス君がキレた。僕は君が入国するときに忠告したはずだ」


 ザスターの問いに、鳳鴻は失笑をこぼした。

 口は笑っているが、目は全く笑っていない。


『貴様は、わざと決闘に俺が向かうように仕向けた、違うか?』

「それこそ、なぜ僕がそうしなきゃならないか、だね。やろうと思えば、僕の顕現特性はなんだってできるんだよ? 「遺書を書かせ自殺させる」ことだって可能だというのに」


 いま、ここで試してみようか? と鳳鴻は両手を広げて白い光を迸らせた。顕現特性は非常に強い作用を起こす時、光り輝くが鳳鴻の状態はまさにそれであった。

 

 流石に相手が悪すぎる、と判断したのかぜスターは動かなかった。

 数十秒後、光を収めた鳳鴻は肩をすくめて、ザスターの言葉を待った。


『御雷氷ゼクス、か。ふん、親を呼んで代理人として決闘させることだって可能だ』

「ゼクス君が戦っても、親である冷躯さんが戦ってもそう変わらないと思うけれど? 君だって、【不可侵】くらい知っているだろうに」


 結局は親頼り、という状態に対して次は本気で鳳鴻が笑う。

 顔をさらに歪ませたザスターに対して、子供に言い聞かせるようにして語りかける。


「あそこは最強の家系なんだ。血は繋がっていなかったとしても、あそこはどの家庭よりも強く繋がっている」


 そして、次は警告だ。

 鳳鴻は愛想のいい顔を全て引っ込めて、醜く歪んだ憤怒の表情をザスターに見せた。

 

 身体中から顕現力が溢れ出し、ザスターには鳳凰が目の前に現れたような神々しく、恐ろしい光景を「感じ」させる。


「くれぐれも、今回の決闘で負けたら手を出さないことだ。次は僕が出る」


 その目には、確かな金色の焔が宿っている。


「もう、ミサキのような目には合わせたりしない」


 強く燃え盛り、それは ザスターを焼き尽くさんばかりに勢いを増した。

 鳳鴻はゼクス、という少年のことを思い浮かべる。

 

 それに自分を重ね合わせた。彼方も自分も、復讐者(アベンジャー)でなく復讐者(リベンジャー)だと確信する。


「彼が復讐者なら、僕だって……。君をいつでも付け狙う、復讐者なんだから」




次回更新は今日です。

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