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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第7章 御雷氷・八龍・御氷
170/374

第170話 「暴発」

2016.04.24 4話目

 ――誰もが、その人に対して物言いを出来ない状態。

 少年は、それを許したりはしなかった。自分の力をすべて持ってしても、友の頼みに従った。


 少年は後に周りにも影響を及ぼし……。






---



 アガミが一旦学園から去って、俺達は代わりにやってきた少年を見てため息をついていた。

 映えるような金髪に同じく金眼、騎士が来ていそうな制服、気取った顔。


 その顔からは自信が有り余っているようにも見えて、というか実際有り余っているのだろう。

 顔がそこそこよろしいからか、女子生徒から黄色い歓声が湧き上がるのに対し……。

 俺たちは、ただただため息をついていた。


「……中身もへったくれも無い顔だ、虫唾が走る」


 颯が、少なくとも俺は聞いたこともない声で言葉を吐いたのに物騒な何かを感じ取りながら、俺はさてどうしようかと考えた。

 要注意人物とされているトラン=ジェンタ・ザスターが目の前に居る。


 出来れば古都音に何かが起こる前になんとかしたいところではあるが、流石にこちらからは駄目だ。

 古都音からもらった情報によると、ザスター家ってのはアメリカ連合国では名の知れた名家らしい。


 いや、知らんがなっていってぶん殴るとかもいいけど。流石に父さんに迷惑が掛かりそうだ。

 今のところ、古都音に実害は出ていない。


 何かあったらその時考えよう。最近は……。

 詠唱の必要なく、顕現特性を扱えるようになってきたのだから。

 ただ、勿論のこと【神牙結晶】があると出来ない。


 ハイリスクハイリターンだと思う、本当に。


「古都音? すっごい顔がひきつってるんだけど」

「……そりゃ、私だって会いたくない人はいます」


 私も人間です、と古都音。

 そうだよな、古都音は女神じゃないもんな。ただの1人の、とんでもなく優しい美少女だ。


「あの、隠れててもいいですか? 目を合わせたくない、ので――」

「あれ、そこにいるのはコトネ?」


 いきなり気づかれた。

 やはり古都音は他の人と違うオーラを持っているらしい。


 俺はこちらに喜々として近づいてきたザスターとは対象に、アマツや颯や、鳳鴻おおとりと言った人々が警戒態勢に入ったのを感じ取る。

 いや、それは古都音に向かうザスターを警戒しているわけではない。


 ……【神牙結晶】を持っていない俺を警戒しているのだ。勿論、ザスターも何かしでかせば文句があるのだろうが。


「抑えてね、ゼクス君」


 斬灯りとが釘を差してきたが、正直何かするようであれば俺は抑えられない気がする。

 俺にはどうしようもないよ、正直。


 そうこうしているうちに、近づいてきている。

 古都音は反射的に俺を楯にするようにして、視線を外そうとした。

 俺の手を握る彼女が震えているのを感じ取って、反射的に強く握りしめる。


 嗚呼……。


『なんだい、君?』


 多分、そんな事を話していたような気がする。

 明らかに不機嫌そうな顔で、俺を見つめているのが分かる。他の人にはさほど興味を示していないようにも見えるが、その真意はどうじゃろか。


 ちなみに、英語がそれほどわかっていないのに相手の言葉が分かるのは、顕現力のおかげだ。

 顕現力で相手の話しているニュアンスを感じ取る、っていう方式をとっている。

 これは【顕現者オーソライザー】ならほぼ誰でも出来る芸当で、外国人と日常的な会話をするならわざわざ言語の習得をする必要はない。


『邪魔なんだけど、僕のコトネに触らないで――』


 そう言って、俺を押しのけ古都音に手をのばす。



 ――その瞬間、トラン=ジェンタ・ザスターは、何かに【拒絶】されたように勢い良く空を舞った。

 愉快、と感じ取ってしまうほどの飛びっぷりである。3メートルほど空中へ人間大砲のように吹っ飛び、地面に激突する。


 俺は、わけも分からず辺りを見回した後こちらに近づいた男に言葉を投げかける。

 

「ああ、すまん。能力が暴発した」

『は?』


 相手はまったく意味がわかっていないようだ。

 もしかして、ザスター家では俺の話が出なかったのかな? なんだか知らないけれど、俺のことはあちらでも有名らしいのだが。


「古都音に触れた瞬間、古都音がトラン=ジェンタ・ザスターの顕現力すべてを拒絶するように発動して()()()()。申し訳ない」


 顕現力を完全に消し去ることは出来ない。どうしてもと方法を取るならば、蒼穹城そらしろ)にやったようにする必要がある。

 しかし、結局俺も相手も、この学園に居る人全員は【顕現者オーソライザー】であることに対して何らかの優位感を持っているものだろう。

 絶対に手放せない。勿論、俺だって手放せない。


『僕のコトネに変な細工を……!』

「いいえ、申し訳ありませんが、私は貴方のものではありません」


 古都音が我慢できなくなったのか、そう断言した。

 言葉にザスターはきょとんとする。そして耳を疑ったように顔をしかめ、歪ませる。


『何を言っているんだ、コトネ』

「その問には俺が答えよう」


 古都音が再び堪えきれなくなったのか、俺の背後に下がるのを横目で見て、視線を戻す。





「誰の女に触わろうとした?」




気が向いたら本日5話更新します。



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