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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第7章 御雷氷・八龍・御氷
169/374

第169話 「閑話:神御裂の傍観」

2016.04.24 3話目

3話目ですので、ここから入った方は1話目2話めを先に読んだほうがいいかなと。

「ねーねー、勇魚いさな?」


 学園寮、天井。そこには一組の男女が座って、フェンス越しに学園を眺めている。

 1人は巨躯な男、1人は小さな少女。神御裂兄妹はそこにいた。


 小悪魔的に笑い、双子の兄を笑っているのは妹の方である。


「どんな気持ち? 味方しようとしていた派閥は無くなっちゃったけれど」

「……ぐうの音も出ない」


 勇魚イサナはうなだれた様子もなく、ただ事実を伝えるように答えた。

 追い打ちを掛けるように少女は言葉を掛けるが、どうじた様子はない。


「今では、もう『何派』では無くなっちゃったけれど」

「……何が言いたい、緋毬ヒマリ


 代わりに、少女緋毬に向けられたのは鋭い視線だ。ナイフとも見紛うそれを、緋毬は正面から受けたが微動だにしなかった。


「私が言いたいのはー。……これからこのまま、傍観者でいつづけるかってこと、かな?」

「……まだ動くべき時ではない」


 勇魚の返答は、単純だが明快ではないものだった。

 動くべき、というのをどう捉えているのか。緋毬は双子であるからこそ通じ合えると信じたそれが全くの嘘っぱちだったことに妙な腹を立てながら、口を尖らせて反論する。


「そうかな? 『八龍』ゼクス君は『御雷氷』ゼクスになった。これから、彼の行動一つで日本が、ひいては世界もが変わるかもしれないのよ」

「……広げすぎた風呂敷はたためなくなるだけだ。心配の必要はない」


 勇魚の表情は変わらない。地蔵のように淡々と話し続けるのに、妙に聞き入ってしまう。

 それが一体何を意味するのか分からず、首を傾げた緋毬は……しかし動けないでいた。


「耐え切れなくなった時、勝手に自爆する」

「あらあら。……ま、勇魚がそう言うならいいけれどもね」


 緋毬の返答は簡単なもので、何処までも単純明快なものである。

 少なくとも、もう「蒼穹城・刀眞派」というのは消滅してしまった。


 ということは、神御裂家の意向は一つだけである。それならば、特に事を荒立てる必要もないだろうと。【八顕】の全状況を把握している真の「中立」は、それを崩すためにどうするべきか考えてきた。


 2人で一つ、とう言う訳にはいかないが。


「緋毬は動かないのか?」

「イマハマダ、ウゴクベキトキデハナイ」

「……似てない」


 兄に問いかけられ、冗談めかして緋毬は声真似をした。

 が、一蹴される。それに腹を立てず、少女はいたずらが見つかった少年のように笑って立ち上がった勇魚に続く。


「正直、私はどちらでも構わないのよ。正直……うーうー」

「そのうーうー言うのをやめろ」


 言葉を逃した少女に、少年はようやく表情を崩す。

 慈しむような、そして柔らかな表情。それは勇魚のイメージからは大きくかけ離れたものである。


「もう、機会逃しちゃったかな、って」

「介入のか?」

「そうそう。もっと早く仲良くなってたら、今頃いろいろサポートしてあげられたのになぁ、って思う」


 妹の言葉を聴きながら、ああそういうことかと。

 少年はゼクスという少年の、周りにいる人々を知っている。


終夜よすがラ古都音ことねに、月姫詠つきよみ斬灯りと、[コード:100020セツリ]、【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】。彼に恋慕を抱いているのは終夜古都音と月姫詠斬灯だけとしても、流石に遅すぎるだろう」

「そう、なんですよぉ」


 親友・幼なじみ・家族。全てに裏切られた少年、その結果【拒絶】という強力な否定の力を生み出してしまった人間を包むのは、あまりにも温かいものだ。

 新しい親友・恋人・家族……。


 彼を見捨てる人間が居るのなら、彼を受け入れ包む人間も同じように居るということだろう。

 勇魚はその少年のことを考える。


「……ま、精々」


 自爆はしないでくれや、と勇魚は考えた。

 本人が潰れないかぎり、直接的にも間接的にも、援助する人間は存在する。


「そして……敵も現れる」


 神御裂はそれになり得ないが、と。

 少年は、次に起こることが全て分かっているように意味深な目線を、虚空へと向けた。

次回更新はまた今日、とか言ってみたいが多分いけますね。


また今日です!

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