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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第7章 御雷氷・八龍・御氷
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第167話 「突然の告知」

2016.04.24 1話め

「別に、わざわざ一言かけなくてもいつでも来て良いのですよ?」


 結局、寮に戻ったのは夜の九時を回ったころだった。俺はすぐに飯も食わず鍛錬をしたあと、古都音の部屋に向かう。

 最近あまり夜に立ち寄っていない。正直毎晩一緒にいたいが、流石に相手にも迷惑だろうし……。


 雪璃はどうしてるかって? 雪璃は特別に一室与えられている。

 部屋の中には何もないけれど。


「いや、流石に悪いかなって」

「合鍵お渡ししましょうか?」


 その言葉は有り難いが、まだ遠慮しておこう。

 付き合ってから何ヶ月だ? まだ3ヶ月、これから生涯添い遂げると誓ってはくれたが、人生何が起こるかわからないからな。

 正直、俺とうまくいくかまだわからない。今は古都音が俺に合わせている感じがあるからな。


「まだ早くない?」

「いいえ? 私はそうとは思いませんが?」


 そういって、問答無用というように彼女は合鍵を渡してくる。

 うーん、持ってたってココに来ることは少ないような気がするが、なー。


 こういう時って、俺も渡したほうが良いのだろうか。でも俺は持っていないし。

 こういうの、校則ではどうなっているのかね。まあ、多分厳格に定められていても御雷氷の名前を出してしまえば通りそうな気がするが。


 だからこそ言わない。


「お腹すいた」

「……さては、夜ご飯も食べずに鍛錬をしていたんでしょう?」

「ご名答」


 俺が頷くと、古都音ははぁと溜息をついてニッコリと頷く。

 そんなことだと思っていました、と笑って俺を中に招き入れた。


 女の子のいい匂いがする、と表現すれば少々変態的なのかもしれないが、確かにそんな香りがする。それと交じるのは、魚の焼かれた香ばしい匂いだ。ただでさえ俺は空腹だというのに、これは正直やめて欲しいところだけれど……。


「ちゃんと用意したんですよ?」


 ……あ、もらえるんだ。超が付くほどのお嬢様だというのに、家事も料理も出来るだなんて完璧じゃないか。

 頂きます、と両手を合わせてご飯と一緒に描き込んで見る。


 文句なし。

 俺が食べている間、ニコニコと無言で見つめ続けていた古都音は、最後の一口を食べ終わった俺の皿を運んでいく。


「……鍛錬後だというのに、汗の臭いがしませんね」

「いや、洗ってきたよ」

「鍛錬を忘れるはずはないのは知っていますが。30分程度なら汗もかかないのかと考えておりました」


 さすがに、それはない。そんなに生ぬるいものなら練習量を少なくとも増やしているだろうし、少なくとも俺は「【神牙結晶】を取り外して」、「顕現力を調整しながら」、「通常詠唱で【顕現オーソライズ】する」というものだからだ。

 勿論、肉体のものもやっているけれど。


 正直、宣言をした瞬間から【顕現オーソライズ】が始まるのを無理やり抑えているからめちゃくちゃ体力と精神力を使う。

 毎回倒れそうになるのを我慢するんだけれど、今日はなんとなく上手く行った気がする。


「……冷撫さんは、どうだったのです?」

「俺には何も出来なかったけれど、あのままで良いと思ったよ。明日から問題なく学園生活には戻れる」


 古都音に、冷撫が俺の事を「最初から存在していなかった」ように忘れていたことを伝える。その言葉に対して、顔をしかめた少女は「なんとも思わないのです?」と。

 アマツが俺に言ったことと同じようなニュアンスで問いかけてきた。


 勿論、俺は問題ないと答える。

 確かに精神的には色々とくる物がある。けれど、それを直したところで大切な冷撫が幸せに過ごせるかということとは全く違うものなんだ。


 それを考えている限り、冷撫は幸せになれないような気がしたのだから。

 俺への気持ちとアマツへの気持ち、両方に対して板挟みになっている状態よりは、今の状態の方が良いだろうと判断してのこと。

 だから、俺はこれ以上に問題が無いならそっとして欲しいと古都音に頼んだ。


「……それで、本当にいいのですね?」

「ああ」


 俺は即答する。神牙家の将来も、冷撫の幸せも。

 それら全てを考えると、俺の私情一つでなんとかしてはならないのだ。


「……ゼクス君がそれでいいのなら、私はこれ以上何も言いませんけれど」


 少々ふくれっ面になって、少女古都音はそっぽを向いた。

 しかし、すぐにこちらへ向き直り、何かを言いにくそうに手をもじもじとさせる。

 その姿は実に可愛らしく、可憐で……。


 俺は、【神牙結晶】を持ってこなかったことを後悔した。


「あの、ですね。直接的にはゼクス君に関係のない話なのですが……」

「うん?」

「いやでも、ゼクス君に迷惑をかけることかもしれないので言いますね?」


 そういった少女は、何を言いにくそうにしているのか俺には到底考えの及ばない状況で何かを悩んでいた。


「ええと、アガミ君が来月から交換留学で八顕学園からいなくなるんです」


 ……はぁ?

 アガミの性格上、古都音のそばから離れることなんて無いと思ったんだが。


 とりあえず、明日になってから彼に聞いてみるか。

次回更新は多分今日です。

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