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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第7章 御雷氷・八龍・御氷
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第160話 「定例会議」

2016.04.17 2話め

ここから新章です。

「……それでは、【日本顕現者協会常任理事会会議】を始める」


 厳かな声が響き、粛々とした雰囲気の中で会議は始まった。

 場所は、日本顕現者協会の会議室。巨大な円卓に、総勢10人の当主が集まり、『神御裂かんみざき』当主である創空郎そうくうろうの言葉を待っていた。


「今回、メンバーに変更があった。『刀眞家』に変わり……『八龍家』改め『御氷みこり家』改め、『御雷氷みかおり家』が加わることになった」


 創空郎の言葉に、一瞬だけだが反応したのは『蒼穹城そらしろ』当主、こう。刀眞家が【八顕】から引きずり落とされたのは情報が入っていたが、こう会議で明言されてしまうと心に来るものがある。


 しかも、代わりに入ってきたのは……。

 劫はすでに頭を抱えたい状態に【八顕】がなっていることを感じていた。


 『御雷氷』という存在。それに引かれるのは当代の時点でこちらがわでなかった『善機寺ぜんきじ』。

 それに全く気づいていなかった自分と、周りへ恨めしく感じながら必死に平静を保とうとする。


「周知の事だろうが……一時的に、代わりの【三劔】が選定されるまで、引き続き『八龍家』が一角を担うことになるが、宜しいか?」


 創空郎の言葉に、他の【八顕】【三劔】が「異議なし」と肯定するのを見て、蒼穹城劫はどうすることも出来ず渋々頷いた。

 今、確実に蒼穹城は危機に瀕している。御雷氷ゼクスという存在が、「顕現特性により【八顕】から特定の家を追い出す」ことを可能と示してしまったのである。


 決して彼等が傀儡になることはありえないと思うが、それでも万が一ということがある。

 蒼穹城だけではなく、全ての【八顕】からすれば一大事だろう。


 しかし、劫は他の人々が妙にリラックスしていることが気になった。

 他の家たちは、誰も危機感を覚えていないのだろうか?


「……で、どうするの?」

「どうするも何も……うーん。僕としては、『御雷氷』『神牙』『善機寺』と『亜舞照』『須鎖乃』『月姫詠』を分けて、中立を『神御裂』『蒼穹城』にしたほうがいざこざも少なくなって有り難いのだけれど」


 今までは対立だった関係を、相互協力という形で分けるのはどうか。

 そう提案したのは、亜舞照鳳鴻おおとりであった。


 すでに当代となっている若干16歳の少年は、圧倒的な威圧感を纏うほかの当主たちに負けていない。

 唯一、日本で精神に干渉出来るという「抑止力」を持ち合わせている少年は、その場に居るだけで存在感を強く主張している。


「その心は?」


 冷躯が、疑問を感じ質問をした。

 恐らく、一番最初に出した名前がその中でのリーダー格になると主張しているのだろう。その場合、自分たちが新参であるにもかかわらず「そう」なってしまう。

 そうである必要性はあるのか、と。


 考えを察したのか、鳳鴻は柔らかい笑みを浮かべてそれに答える。


「『御雷氷』には、英雄になってもらう必要があるから、かな。僕達【三貴神】は個別の仕事があるから一緒にした方が良いと思う。……ザイラさんは少々不服気味だが、私情を入れている暇はないと思うよ」


 鳳鴻に指摘され、月姫詠ザイラは慌てて元の無表情に顔を戻した。

 私情を挟む暇があれば、ザイラは真っ先に自分が『御雷氷』に付くと言っていただろう。


 しかし、月姫詠は【三貴神】の役目が存在する。間接的に協力することは出来ても、そちらに付くことは許されていない。


「英雄?」

「そう。少なくとも冷躯さんは民衆の英雄ヒーローでしょう? なんたって【三劔】に『八龍家』が選ばれた時、メディアは印象操作も含めて八龍家だけを特集していたくらいだからね」


 当時のデータを交えながら、鳳鴻は有無を言わせない雰囲気でそう言い切った。

 そもそも、功績と言っているが冷躯以外、そう目立ってはいない。


 証明するように、蜂統はちすべジンと栄都当主は嘆息し、苦虫を噛み潰したような顔で心境を吐露する。


「まあ、『蜂統』は終夜家の護衛が主だったわけだし、仕方ない」

「……悔しいことだが、『栄都』も刀眞家のお付だっただけだ。そもそも【三劔】は『御氷』と御氷冷躯の便宜上、そうせざるを得なかったという問題があったし、この件で【三劔】解散となっても不思議には思わないだろう」


 ぐぬぬ、と難しい顔をするのは冷躯であった。

 その理由は分かっている。しかし『御氷』の名前を護るためにやってきた身としては、その結果【三劔】で苗字が「八龍」に変わった時、違和感を覚えたものだ。


「しかし、国民は不思議に思う。理由付けの以上、功績を称えるという意味で作った物だ」

「……次の会議までに、探すしかないか」


 当主たちが話をしている中、冷躯はこの場に座れていることを、心底ゼクスに感謝していた。

 『御氷』という名前は『御雷氷』に引き継がれている。

 正直そのままでも良い気がするのだが、担当している【神座】が雷属性である以上、そういうニュアンスは含んだほうが良いだろうという話になったのだ。


 もっとも、それに意見を出したのは『神牙』『善機寺』という、全く関係のないものだったのだが。



「それぞれ、次回までにすべきことを決定する。各々相談し、宣言を」


 結局、勢力決定以外は難航した。

 【三貴神】の状況、神牙の研究、諸々……。


 5時間後、会議が終わり帰る頃、冷躯は善機寺おろしにこう漏らしたという。


「対立してたほうが良いんじゃないのか」


 と。

次回からゼクスが出ます。


次回更新は……明日の予定です。

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