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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第6章 元兄弟
144/374

第144話 「仕えたい人」

2016.04.09 1話め

「遼!?」


 俺、善機寺颯が栄都アインと対峙していた頃のことだ。

 いきなり、刀眞遼が空を飛ぶ。そのあまりにもシュールな光景に栄都は素っ頓狂な声を上げ、助け起こそうとそちらに動き始めた、その瞬間――。


 俺は動き始めた。今まではゼクスの指示である「その場にとどめておけ」というものを忠実に守っていたのだ。

 ゼクスの敵ではないが、決して容赦はしない。

 そのため、【大竜巻】の拘束力を利用させてもらった。その結果がこれだ。


 けれど、彼女は想い人が吹き飛んだのを見るやいなや、拘束を解除した。

 どうも、今まで手を抜いていたらしいということを思い起こしてくれるいい動きだが、こちらとしてもゼクスの邪魔をさせるわけには行かないのでね。


 俺は属性をまとって身体の能力を加速させながら、竜巻に乗って彼女の前に立ちふさがる。

 こちらは、一応はそちらに居た人間だ。何が問題なのかというのも分かる。


 刀眞とうま獅子王ししおうは、息子の遼と「刀眞家」につかえている栄都アインを使って「終夜古都音」を手に入れようとしている。

 けれど、栄都アインが思いを寄せているのは刀眞遼で。さらに言えば手に入れたいとは思っているけれど、刀眞遼が本当に好きなのは東雲契である。


 恐ろしいほど多角関係だが……。やはり、どの人々も報われないな、という。

 一番報われないのはアインだろう。好きな人のために、別の女を手に入れる手伝いをさせられるのだから。


「……何故、そこまで必死になるんだ?」

「貴方にはわからないでしょうね。……裏切り者」

「そうだな、俺にはわからないよ。自分の仕えたい人に仕えている俺には、いやいや【刀眞家】に仕える栄都の気持ちがわからない」


 俺のするべきことは時間稼ぎ。なら、それに集中しようじゃないか。

 復讐が美しいものだとは思わないが、決して思うことは出来ないが。

 それでも、俺はゼクスの邪魔をしないし、それが間違ったことだとは思えないからな。


 彼の自己満足だったとしても、彼のしたいようにすればいい。

 この世界ってのは、こんなふうにできているものなんだから、俺は……。


 八龍ゼクスの補助をするだけだ、この生命を持って。


「今回、それが現実化すれば更にその可能性は少なくなるというのに? まだ、栄都はこのまま努力をするつもりなのか?」


 とにかく、今は彼女の心を揺さぶろう。それが吉と出るか凶と出るかは別問題であり、その間にゼクスがやるべきことを済ませてしまえば俺は万々歳である。


「……私は、そんなの関係ないのよ」


 ぼそり、と。

 少女は俺にしか聞こえないような声で呟き、悲しそうな顔をこちらに見せた。


 この間も、ゼクスの強襲は止まっていない。それが何か問題のあるものかと思えば、どうも彼は迷っているようだ。


 殺意が高まりすぎて、どうしようか迷っているのだろうな。

 立場上は元とは言え、目の前に居る男は血のつながった男で。


 しかし、ゼクスが家を追われる時、彼は何もしなかった。


「私はね、遼と結ばれたいよ? けれどもね、それをこの時代は許してくれないし、刀眞家も栄都家もそれを望んでいないの」

「……下らない信念など、ててしまえ」


 今は敵同士だったとしても、俺はひたむきに1人の男を思い続ける彼女を放っては置けないし。

 それと同時に、俺は自分の目的を達成できている。


「え……?」


 栄都アインは、俺の言葉に困惑したようだった。

 眉をひそめ、こちらが何を言わんとしているのかを考えているのだろう。


「自分の本当に仕えたい人に仕えろ、その人を支えろ。刀眞家自体はもう終わる。次代からは、新しい時代が始まるんだから」


 あくまでも、俺の考え方だがな。

 八龍ゼクスという存在が頭角を現し始めたこの状態。


 それによって、蒼穹城・刀眞派はすでに瓦解し始めている。

 きっと次代からは、今まで通りには行かないだろう。


 ……その直接的原因を作ったのは、他でもない善機寺家なのだが、ね?

次回更新は明日になると思います。

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