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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第6章 元兄弟
138/374

第138話 「【顕煌遺物】-パートナー-」

2016.04.01 1話め

『ゼクスの予想通り、あの刀は我と同じ【顕煌遺物】じゃな』

「危険なものなのか?」


 昼休み、俺は【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】と会話するため、少々古都音たちと離れて誰もいない体育館裏にやってきていた。

 正直、こうやって話をするのは本当にリスクが伴う。他の人から見れば、虚空に向かって……イマジナリーフレンドと話をしている少年に見えることだろう。


 目を閉じて話をする、という方法も確かにあるけれど、それは別だ。

 あれは時間がかかる。数分の間ずっと目を閉じているのも、それはそれで変に思われる可能性が高いだろう。


『わからん。わざわざ相手のことまでこちらは知らん。……例えば相手の人格が女性か男性か、それとも両方を兼ね備えた存在か。……姿かたちが人間型か、それとも動物か、または霊体か。我が分かるのは、相手と直接対話した時のみ。それは相手も同じじゃ』


 ああ、やっぱり人格っていろいろな形があるんだね。

 そんなことを考えながら、俺はどうしようかと……どうしよう?


 相手がどんなものなのか、よく分からないからなぁ。日本刀型だということは分かった。でも、それだけだ。

 【顕煌遺物】である以上、いろいろと能力は持っているのだろうと。


 うーん、どうしようかな。

 俺としては、敵として戦いたくないものなんだろうと考えている。

 だって、もう蒼穹城進は「敵」ではなくなった。


 少なくとも。彼だけは、まだマシな部類に戻ったと思っている。

 ……俺、甘いかね?


 甘いか。当たり前か……まあ、いい。


『蒼穹城進が、ゼクスに危害をこれから加えるのか加えないのか、それはこれから分かること。……その時になって、やっと相手の目的も分かるじゃろ』


 俺は、とりあえず。……進への復讐は、完遂できたのだから。

 何、俺は清々しい気持ちになってるんだろうな、自己満足でしかないというのに……。


「つまり、何が言いたいんだ?」

『我はゼクスの味方じゃぞ。もう運命共同体なのじゃから』


 結局、何を言いたいのかはわからなかった。

 俺は自分の意志に悩んでいただけで、その【顕煌遺物】についてどうするのか全然考えていなかった気がする。


『ただ、唯一わかることがある』

「ん?」

『あれは、本契約ではない』


 本契約? よく分からない言葉に、俺は首を傾げると。

 オニマルは丁寧至極に説明してくれた。有り難い限りだ。


 つまり簡単にいえば、俺と【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】の関係が本契約で、あちらは仮契約ということらしい。

 違いもある程度説明してくれた。……こう考えると、俺的にはどうなんだろう?


 普通に本契約出来たというのは幸福なことなんだろうか。


『当たり前じゃ。いつでも乗り換え可能と比べるな』

「そうだな……」


 ちゃんと考えてみたら、そっか。

 【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】は、ずっと俺と一緒にいてくれるんだから、な。


「これからも宜しくな、オニマル」

『宜しくなのじゃ』


 あー、やっぱり。

 俺の周りの人は、暖かい人ばかりだ。




---



『へえ、あれが【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】と八龍ゼクス、か』

「当分の間は敵になるつもりはないよ。少なくとも、勝てる見込みがついてからだね」


 僕……蒼穹城進は、【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】と……。

 屋上にいた。


 学園の屋上っていうのは元々開放されていない場所と、開放されている場所があるんだけれど。

 今、僕は前者の方にいる。周りには誰もいないし、ここにいるのはカネミツと僕だけだ。


 だから、話をしていられる。


『進は、彼の仲間になるつもりかい?』

「まさか。……そんな資格、僕にはもう無いんだよ?」

『その身体にした男に、復讐したくはないのか?』


 【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】が、何を言いたがっているのか分かるような気がした。

 そもそも、僕が彼に見初められたのはそれが原因だ。


 復讐心、憎しみ。それが原因だ。

 でも、思ったよりも……今の僕は、そんな気持ちを一切感じない。


 ちょっとだけだけれど、八龍ゼクスの気持ちが分かった気がするんだ。

 それは本当にちょっとかも知れない。そもそも、そのちょっと分かった気がするそれが、間違っているものかもしれない。


 でも。

 僕は……。


「それをやってるといつまでも止まらないよ、終わらないんだ。ただただ、お互いにお互いを憎み続け、最終的には両方共死ぬ」

『ほう』

「僕はね、彼と好敵手ライバルになりたいんだよ。前の関係に戻れなくても、戦いで会話できればいい。……僕の目指す場所と、彼の目指す場所はあまりにも違いすぎるし、僕は全く自分のことが見えていなかったからね」


 僕は、あの時選択を間違えた。

 だから、今回こそなんとかしたいんだ。


 具体的には何があるのかわからないけれど。








『けっ。……面白くなってきやがって』

次回更新予定は明日です

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