第135話 「意思無し」
更新が遅れてしまい、申し訳ありません。
「……これでどうやって胤龍に勝てるんだろう」
俺は、若干の絶望を覚えながら唖然としていた。
今、俺はシミュレーターで擬似戦闘を行っている。レベルごとにわけられていて、今は一番難しい「10」に挑戦しているのだが……。
正直、目の前で見た時の彼は、これ以上だ。
まず、あの時俺は全く反応が出来なかった。
気がついたら地面から打ち上げられていて、気がついたら地面に激突していた。
空中に浮かぶフワッとした感覚、あれはほとんど感じられなく、ただ恐怖が自分をどうされるのかと想像してしまっていたのだ。
お父様にも稽古をつけてもらったことは何度もある。けれど、本気でないにしろ、それよりも胤龍のほうが強い。
それを感じ取ってしまうから。
「遼? ……どうしたの?」
「……いや、なんでもないよ」
アインの心配そうな声に曖昧ながら答え、俺は目の前の実体あるホログラムを見つめる。
レベル最大。勿論殴られれば痛いし、気絶することだってある。
けれど、あの時受けた痛みは……。
こうやって受けるよりも、何倍も痛かった。
「集中して」
「……わかってる」
やっと、ホログラムの動きについてこれるようになった。
それでも、俺は胤龍に勝てないと思う。古都音さんを手に入れたいという気持ちを捨てられれば簡単なんだが。
……俺も、お父様も、それを望んでいない。
正直、もう胤龍と戦いたくないのだ。復讐を受けると分かっているからこそ、それを覚悟する必要もあるだろう。
だが、出来れば俺は足掻きたくないのだ。もう、このまま罰を受けて終わりたいというのに。
「アインには、申し訳ないと思ってる」
「……?」
「こんな面倒事に、アインの気持ちを全く無視しているのもよく分かっている」
俺が弁解するようにつぶやくと、アインはきょとんとしたように首を傾げた。
「私は、大丈夫」
その表情は、どうみても大丈夫ではない。
不満もあるだろうし、少なくとも俺に文句はあるのだろう。
お父様には逆らえないが、そちらにも言いたいことはあるはず。
……いや、今は彼女の気持ちを優先してやれるほど、俺も余裕はない、か。アインには申し訳ないが、古都音さんを手に入れるほうが先だ。
【終夜グループ】の技術力を手に入れるほうが優先される。
これは俺の願いでなく、お父様の命令だから。
「……きちんと、なんとかアインのこともしてみるよ」
4月から本気出します。
この話で第5章は終了し、夏休み編はまとめることもそうないのですぐに第6章へ。
次回更新は明日、早くて今日デス。




