第131話 「デート 2」
2016.03.19 1話め
更新が遅れてしまい申し訳ありません。
「お父様たちが、新しい【Neシリーズ】を作るんだーって仰っておりました」
ということで、古都音とともについたのは【終夜グループ】本社となりにある【顕装】専門店、「アーク」である。
たしか何で、こういう名前になったんだっけ? 忘れたけれど、それ相応の理由があったらしい。
本社となりあってかなり広いが、それでも足りないほど敷き詰められている。
剣や斧と言った、基本的なものでも数百種類陳列されており、中にはオーダーメイドを承っているコーナーもあれば、使い心地を試すためのコーナーもある。
さすが超大企業、と評価せざるを得ない規模に、何度か来ていながらも俺は圧倒された。
「新しいの? 今は、【始焉】で俺は十分なんだけれど?」
「結局、【始焉】は基本形に少しのギミックを加えた程度のスペックしか無い……と、お父様が。神牙家の当主様や、月姫詠家の当主様も協力するらしいです」
ミソラさんとザイラさんが協力するって?
俺は少々嫌な予感すらして、鸚鵡のように言葉を返す。一体何を考えているのだろう?
……まあ、ミソラさんはなんか新しい物を開発して、それを試したいんだろうな。
月姫詠家の当主様は……よく分からない。「月姫詠デザイン」が協力すると聞いて、何かはそういう関係のものなんだろうなと漠然と、予想することしかできなかった。
「みんな、ゼクス君に期待してらっしゃるのですね。ちょっと嫉妬してしまいそう」
「……それはちょっと、やめて欲しいかな」
いたずら好きな小悪魔っぽく笑う古都音に対し、俺は首を振って答えた。
俺は知っている。当主たちは何も言わないが、「協力するからそちらもしろ」と無言の圧力をかけて来ているのだろう。
今のところは、俺は復讐対象が蒼穹城家・刀眞家だから利害が一致するわけだ。
だから彼等も援助をするのだろう。
「わかっていますよ。けれど、神牙家や月姫詠家がそうだったとしても、終夜家はゼクス君を思ってやっていますからね?」
「……おう、ありがと」
少々、やっぱり有り難いんだなぁと。
……そんな話をしていると、店員が1人近づいてきた。年齢を見て予想するに、俺たちとそう変わらない。ということは正社員ではなくアルバイトだろう。
性別は男……だと思う。だとお思うと考えたのは、それが中性的な顔をしているからだ。
スバルに顔がよく似ている……。よく見れば、神牙スバルその人だった。
「なにやってんの、スバル」
「たまにこうやって遊びに来てるんだよ……。正しくは自分から手伝いに来ているわけなんだけれども。……ということでイラッシャイマセー。今日はデートですか?」
その言葉に、おちゃらけたような雰囲気が感じ取れず、俺は若干引き気味に頷く。
スバルも【八顕】の次代候補だから、そういうことには敏感なんだろう。
俺だって、【三劔】の八龍家……その次期候補である。
注目される理由は十分にあると、いうことだ。
「パーティ以来だな」
「うん。……あの決闘は、やっぱりゼクスさんスゲー! って思いました」
あの決闘は……なんというか、相手が舐め腐っていたというか、流石に弱すぎると言うか。
榊兄弟が完全敗北して、一家は颯の監視の中で八龍家・神牙家・鈴音家・善機寺家に対し地面に頭を擦り付けて謝罪した。
それだけで俺は、十分に満足している。
「たしか、スバルって楓ちゃんに一目惚れしたんだっけ?」
話の話題を変えるために、俺が言った言葉。
それに対して、スバルはあからさまに動揺する。
「あ、はい」
「あー、やっぱり?」
「あ、そです、はい」
カマをかけるつもりだったのだが、やっぱりそうらしい。
颯から話は聞いていたんだけれども、やっぱりこうなるのか。
【八顕】同士の婚姻ってOKだったっけ? なんか、風習的にアウトだった気がするんだけれどまあ良いや。
「おすすめの【顕装】を教えてくれよ」
「あ、了解っす」
そうして、俺はスバルに案内してもらうことになった。
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「こんなところにデートに行くぅ? 普通」
「……したことがないからわからない」
「うん、私も一緒。だってそんな機会ないもの」
……俺は、月姫詠と変装して「アーク」へ入る。
ここに来るのは初めてだ。何時も東雲の方に言ったことがあるが、こちらのほうがやはり品揃えは良い。
しかも、ココ一帯全てが【終夜グループ】の【顕装】になるのか。
多い。……多すぎる。
確か、【終夜グループ】の開発した、生産終了のモデルも合わせてカタログを作ってみたところ、六法全書並の厚さになったと聞いたことがある。
つまりは、こういうことなのだろう。
ちなみに、月姫詠の服装はというと。
……説明が面倒だ。なーんで終夜先輩と真逆? 露出狂か何か?
絶対、ゼクスが見ていい顔はしないだろうな。
「ここにあるものすら、全てではないのか」
「結構古いものもあるのよね。他のお店には比較的に新しいものが多いのだけれど、ここなら20年物のものもあるのよねー、欲しい」
欲しい、とか言っているのだけれど。
……やっぱり、麻痺しかけた【八顕】の金銭感覚だとしても、高い。
「……ねえ、見てないでゼクス君の偵察でしょう?」
「あー、そうだったな」
……何で、俺はこんな事になっているのかね。
改めて、更新が遅れてしまい申し訳ありませんでした。
次回の更新は多分今日です。




