第128話 「トリアージ」
2016.03.13 1話め
「なんか、すげえやる気だなゼクス」
パーティの4日後、俺はというと。
狂ったように訓練に勤しんでいた。
補助は颯にまかせているけれど、自分も指示を出したいと思ったのだ。
2学期からはチーム制度も始まる。詳しい話は分からないが、今年からルールが変わるらしい。
だから、俺はよく知らない。
俺が司令塔をやっても良いように、新しい【顕現属法】を習得する。
「3日で、1つ完成させたって本当?」
「うん、出来たよ」
父さん……冷躯さんに言われて、俺はどやっとした顔を見せた。
【開放】と【被覆】に2週間近くもかけた俺にしては、3日というのは中々だと思う。
いや、異常だ。自分でも分かっている。
だって、3日だぞ? 普通、数ヶ月、長い人は数年かけて一つの【顕現属法】を習得するようなものを、たった3日、か。
うーん、やっぱり【顕現】という技術は心の問題になるらしい。
俺はとても、それが楽しく思う。
成長したいと思う気持ちが、ここまで作用するとは。
「【選別】を習得した」
「……んん? 何だそれは」
疑問符を頭の上に乗せた様子の颪さん、父さんや母さんの、そこら辺に対して【選別】を発動した。
それによって、冷躯さんが赤。カナンさんと颪さんが橙に着色された。
これは、彼等の周りに漂っている顕現力を着色したもので、古都音や颯たちにも見えていることだろう。
颪さんは、これを見て納得したようにうなずいた。
「なるほど、これで司令塔として動く時、仲間に伝えやすいと」
「何で俺が超注意人物なのかな?」
父さんは、気に食わないというべきか、「解せぬ」といった顔で俺に問いかける。
【選別】は、俺が判断したものに、赤から紫へ、危険度を示すためのものだ。基本色は7。
ここに居る大人は全員危険だと思う。だから、こんな感じ。
大分分かりやすいんじゃないかな、少なくとも、颯はその意味がわかったようだ。
「いや、どう見ても要注意人物だろう」
納得の行かない父さんに、突っ込んだのは颪さんであった。
父さんの扱いはそんなものだって、流石に分かるものだとは思うけれど。
だって、父さんとんでもなく強いもん。その顕現特性も然り、【顕現】や【顕現属法】の腕前も然り。
とにかく、俺達からすれば別次元なのだ。
多分、本気を出せば。小指だけで俺達を殺せるんじゃないか?
と、考えたところで、父さんが唐突に「今思い出した」といったような顔でこちらを向く。
「……そうか。……ああ、ゼクス」
「ん? 何?」
「なんか、転属になった。カナンと一緒に」
は? 転属って? 何の?
……ああ、いきなり言われたから何のことかと考えたが、顕察の事か。
転属かぁ……確かに、最近は仕事が何もなかったからな。
左遷か何かかね? でも、「八龍冷躯が顕察に所属している」ということ自体が、日本の秩序を守っていると言っても過言ではないほど何だけれど。
「どこに?」
「……なんか知らんが、特殊部隊らしい。詳しいことは家族で説明役がくるそうだ」
何かしらない、ということと。
家族に、ということは俺に対しても説明か何かがあるということ。
こりゃ、なんかありそうだな。
「なにか特別な事情でもあるんだろうか?」
「まー、最近何もなくて働いてないのにお金もらってたからなー」
あ、やっぱりそうなのね。確かに、最近【顕現】関係の大事件は起こっていない。
いや、そもそも小さい乱闘事件すら、例年よりも少なくなっている。
日本で何かが起こっている? ……いや、俺にはよくわかっていないのだが……?
難しい顔をしている俺と父さんへ、母さんがやれやれといったような顔で話しかけた。
「なにもないのが一番なんだけれどもね」
確かに、それもそうだけれども。
……うーん、それでも色々と気に食わない場所があるな。
俺は争いを好んでいるわけじゃないけれど、ていうか、あまり関係ないか。うーん、なんというか。
「それよりも、この【選別】でしたっけ、中々有り難いですね。……味方なら、誰を回復させたほうが良いのか分かりますし」
「……誰を危険視したほうが良いのか、一瞬でわかるのは有り難い」
古都音と颯は肯定的な意見を寄越してくれた。
……まあ、颯は俺を否定しないだろうからそうなんだろうけれど。
これ、やっぱり使えるのかね。
使えるのなら、まあ……いいかな、これ。
ゼクスは「【選別】」を習得した(レベルアップ音
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