第124話 「下らない決闘」
遅くなって申し訳ありません。
2016.03.09 1話め
誰かのために力を付け、誰かのために力を使うことが、ここまで素晴らしいことだとは思っていなかった。
……ゼクスの為に力を使う、ということの意味は、やはり美しい。素晴らしい。
もっと、強く、強く。
強くなりたいと、俺は願った。
自分の力を……!
「はじめ!」
……神牙ミソラの合図がするとともに、俺は【髭切鬼丸】を持って後ろへ、ゼクスを前へ配置する。
最初は補助だ、相手の情報を【顕煌遺物】によって読み取り、顕現力の流れを読み取る。この【顕煌遺物】が顕現力の流れを見ることが出来るのは大きなメリットだろう。
……俺が彼の補助を出来ることが、最大のメリットだ。
『突っ込め、ゼクス』
『了解』
頭のなかで意思疎通を図り、俺は顕現力を感じ取りながらゼクスを前に押し出した。
最初に狙うのはどちらか。こう見つめてみると、どちらも決闘なれしていないのだろう。そもそも、戦闘自体そんなに経験が内容にも見える。
つまらん。俺は【竜巻】を2つ【顕現属法】にて生み出しつつ、両方を榊兄の方へ仕向けた。
『【髭切鬼丸】は、俺でも振ることが出来るのか?』
『ゼクスが見込んだ貴様なら問題ない』
……ゼクスは、どうも俺を信用してくれているようにも見える。
本当に有り難い。こちらが力になりたくとも、信用してくれていないのなら意味が無いからな。
……さて、どうするか。弟か、今攻撃している兄か。
弟の方はゼクスが【始焉】をもって突っ込んでいる。さすが、ゼクスだ。相手の【顕現】を物ともせず、膂力のみで押し切っている。
『なら、俺は兄のほうをやろう』
俺は総判断して、榊兄の方へ突進した。よくよくきちんと握ってみれば、この【髭切鬼丸】はかなり使い心地が良い。恐らく、俺が使っても真価は発揮できないのだろうが。
……だから、蒼穹城進は最初なんとかなっていたのか。
なるほどね。
「ちぃっ!?」
俺の斬撃を間一髪で躱すその身のこなしには、キレも何もない。
……さて、かなりの……あれだな。
「なんだ、雑魚か」
竜巻の檻の中へ、榊有雲を閉じ込める。藻掻けば藻掻くほど、強く締め付ける竜巻は、最終的に相手を縛り付け全く動かそうとしなくなった。
「……弱すぎるぞ、いい練習台だ」
……俺は【髭切鬼丸】で殺さない程度に、峰打ちで地面に沈める。
全くおもしろくない。さっきまで、「ゼクスのために力を使う!」なんて意気込んでいた俺は何だったんだ……。うう、恥ずかしい。
ゼクスの方を見れば、彼の方も全く心配はない。
寧ろ、本当に練習台にしているようで【開放】が顕現力の爆発ということを利用して、それでふっ飛ばしていた。
……ふっ飛ばしたら、上に飛んだ榊無雲を脚力からの跳躍で追いつき、地面に叩きつける。
あ、これは俺が受けたことのあるものだ。……頭痛がする。
あの時、俺は悪夢を見ている気分だった。終わることのない衝撃、しかし地面の感触はせず、ただ蹴りや殴りは継続的に入っていく。
少々考えただけでもこの頭痛。さて、俺はただ見ているだけでいいのだろうか。
「やめて……やめてくれ!」
そう声を上げたのは、榊当主だろうか。可哀想だとは思うが、神牙ミソラすらゼクスの行動を止めようとしていない。そもそも、ゼクスはまだ本気も出していない。
……訓練の成果を見せたいとか言っていたのに、相手がこれではな。
俺はふぅと息を吐き、ゼクスの姿をじっと見つめた。
キレが増しているな、うん。
短くて申し訳ないです、また風邪が……。
次回更新は明日です。
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