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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第5章 夏休み
123/374

第123話 「怒りの原因」

2016.03.08 1話め

 榊兄弟との決闘まであと30分。


「大丈夫です? なにか不備などはございませんか?」

「大丈夫だよ、古都音ことね


 古都音は色々と心配になっているようで、あれやこれやと訊いてくる。

 特に気になることはない。ただ、俺達は日頃の訓練の成果を発揮できればそれでいいから。


「これって、決闘前に自動回復などの特性を付与しておくのはアウトでしょうか?」

「武器制限なしだから良いんじゃないか? ちょっと確認取ってくる」


 父さんが、今回審判を務めるミソラさんの方へ走っていった。

 古都音、もしかして新しい技術でも習得したのかな? 最近は毎日俺たちと一緒にいるけれど、その間でもスメラギさんや母さんに何かを叩きこまれていたようだし。

 訓練に関しては、無理しても俺は特に気にしなくなっていた。俺も無理をしているからね。


 と、考えているうちに戻ってくる。


「全然構わないそうだ。顕現特性って言ってしまっても、限度っていうものがあるしね、だそうだ」

「わーい。……それでは、ゼクス君のお手伝いが出来るように出来るだけ頑張ります!」


 そう言って、彼女は俺の右手を両手で包み込んだ。

 黄緑色の顕現力が可視化され、彼女の両手から俺の右手へ。そこから血管を通るように、体全体へ浸透していく。


「これは?」

「ゼクス君の、自動的に回復する顕現力の量をいくらか増やしました。まだ、習得したばかりなので過信は出来ませんが……」


 【顕煌遺物】に吸い取られ続けても、かなり減る量は少なくなると思います、と。

 俺の、【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を見てそれを考えついたのだろう。

 本当に有り難い。……本当に、良いな。


「私も何かしたい」

斬灯りとは、今ここにいて一緒にいてくれるだけでも有り難いよ」


 何かしたい、と言った俺を好いてくれた少女に笑いかける。斬灯は見ているだけで癒しになるなぁ、と思いながら。


「今回は、【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】をはやてに使わせる予定だ。流石に補助として使ってもらう」

「……了解」


 颯は頷き、俺は【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を彼に渡す。

 これは彼に補助の部分をやってもらうのと、もう一つの機能を使うためだ。


『聞こえるか?』

『……なるほど、問題ない』

『我も問題ない』


 テレパシーといえば良いのかは分からないが、これで意思疎通が出来るのは大きな利点だ。

 わざわざ声に出さずとも、早い意思疎通が可能になる。双子も同じ様なことが出来るというのなら、別だろうが。


「これでオーケー。万事オーケー」


 慢心はしているわけではないが、まあ。

 本当に申し訳ないとは思っているが、榊兄弟「如き」に負ける訳にはいかない。


 俺は父さんを目標にしてるんだ、この程度で負けていたら、今でさえ及ばないのに、もっと離れてしまう。


「準備できたな」






---


 時は2時55分、神牙かみきばミソラが用意した会場に、多くの観客が集まっていた。

 フィールド内にいるのは、4人の少年とミソラ。


 榊兄弟と、八龍ゼクス・善機寺ぜんきじはやての決闘まで、あと少しというところ。


「ルールの説明をもう一回するよぉ? 助命有りの武器制限無しで良いんだね?」


 ゼクスと颯は渋々と言った感じで頷き、榊兄弟も逆の意味で渋々頷く。

 ゼクス側はその程度の覚悟で決闘をふっかけるのか、と考え。榊兄弟は何故、目の前の男たちは覚悟ができているのかと不思議に思っているのだ。


「武器の性能で押しきれるのなら、この世界も簡単なんだがな」


 そう考えつつ、ゼクスは観客の見つめるなかで【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を、颯に与えた。

 どよめく観客。しかし、ゼクスは意にも介さない。


「【顕煌遺物】が全てじゃないさ。俺はこっちを使わせてもらう」


 そう言って取り出したるは、【始焉】である。

 今回、ゼクスは「相手は敵ではない」として、【re】式と【exe】式の使用を自分で戒めた。


 そのため、【神牙結晶】は付けてある。寧ろ【顕現オーソライズ】も使わず、右手に構えた【始焉】と今まで訓練してきた【顕現属法ソーサリー】のみで戦おうとしているのだ。


「両者、準備はいいかな?」


 生中継も始まっている。多くの視線に自覚しつつ、目の前の榊有雲あうん無雲のうんをゼクスは見つめていた。

 目の前の2人には覚悟がない。それはひと目で分かる。


 だからこそ、絶対に。


 絶対に、負ける訳にはいかない。


「これ、助命は有りですけど試合中止の判断はどうするんです?」

「親かなぁ。止めたほうが負けね? 同時に、要件は全て勝利者が要求すること。榊兄弟の要求は、ゼクス君颯君の即刻退場で良いんだね?」


 榊兄弟が頷く。


「じゃあ、君たちは? 勝ったらどうしたい?」

「……そうだな、俺は古都音への一家総土下座かな」


 ゼクスは無表情のまま、そう言った。顔から表情は察せられないが、その目には怒りが宿っている。


「古都音だけじゃなく、終夜一家のほうがいいかな。あと勿論、先ほど愚弄した人間全員だから、鈴音家と神牙家にも、善機寺家と俺以外の八龍家にもお願いね」

「……俺も抜いて構わない。俺以外の、善機寺家で頼む」


 分家である榊家に、どれだけの屈辱を与えられるか、という考えを一緒に吟味した結果がこれである。

 ゼクス達は、ただ。


 自分たちの周りへの言葉のみに怒っていたのだ。


 勿論、榊兄弟のみならずその両親も、というのが肝である。

 分家とはいえ、榊家であってもかなりの地位を持つ家。そのプライドを打ち砕こうというのだから鬼畜であろう。


「榊有雲、榊無雲。君たちは、俺だけに文句を言っていればよかったんだ」

「……周りの人まで影響を及ぼした償い、それ以上のものを俺たちは要求する」

ゼクスは無表情を取り繕ってますが、本気でキレてます。


次回更新は明日。咳が治らない……。


↓人気投票、斬灯さんが株を上げてきました。まだまだ募集中です。

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