表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第5章 夏休み
120/374

第120話 「斬灯の告白」

2016.03.05 2話め

「八龍君、最近楽しい?」


 月姫詠つきよみ斬灯りとに連れて行かれるように、俺は彼女のあとについて入った。

 完全に扇情的すぎてヤバイ格好をしているから、きっと声をかけまくられるんだろうという予想ではあったが、さすが【三貴神さんきしん】。


 全く話しかけられない。俺がそばにいるとか関係なく、寧ろ俺がくっつき虫か何かみたいに感じ取られるほど、全くと言って視線を感じない。

 とにかく、月姫詠、月姫詠、月姫詠。


 普通に美少女で間違いないからな……仕方ないか。


「こっちは何時も忙しいの。……【三貴神】って色々やってるんだよ?」

「例えば?」


 そうこうしているうちに、人気ひとけの少ない場所に来た。やっぱり神牙家ってすげえや、家に噴水があるんだもの。

 勿論、パーティ会場の中心からかなり離れている、ということもあってか人はほぼいない。

 周りを見回しても、俺達だけだ。


「遺跡の調査? とか?」

「はてなを浮かべられても」


 【三貴神】が忙しいのは知っている。でも、それを次代である彼女が一緒にいるのがちょっと良くわからない。

 ただ、学園にこなさすぎて馴染みが無いっていうのは問題だと思う。


「今はまだ言えないけれど、きっともっと、八龍くんが強くなるなら知らないといけない世界だよ」


 そういって意味深に笑う少女の顔は、やはり魅力的だ。

 古都音の美人、というものではない。子供が妙に背伸びして、大人ぶったような感覚がする。


 と、噴水のそばにあるベンチに座った少女、月姫詠斬灯は俺をじっと見つめた。


「……あのね」


 前置きをして、そっと一息。意を決したように、彼女は俺をもう一度見つめる。

 目は心なしか涙を含んでいるようにも見えた。


「私、八龍君のことが好き」

「えっ」


 その言葉に、俺はどうしようもなく絶句する。

 は? 一体何を言っているの? だとか。今までそんな素振りを出してきていない彼女が、何を……と。


「貴方が古都音さんと結ばれたのは、知ってるの」


 俺が何を言いたいのか、彼女は理解しているようだった。

 ただ、それでも我慢できなかったように、顔を赤らめてこちらをを見つめている。


「ごめんね、困らせるようなこと言っちゃって。でも、最近あまり会えなかったから、ね? 私も……ずっと貴方を支えたいとは思ってたよ? でも、アピールする時間も、機会もなかったの」


 彼女の声が段々と萎んでいくのを感じて。

 最後は、声が半分涙目になっているのも感じて。


 俺は、気がつけば月姫詠に向かって頭を下げていた。


「済まない、月姫詠」


 言葉では内包しきれなかったのだろう、彼女の気持ちが痛いほど分かったから。

 だからこそ、俺は頭を下げることしか出来ない。


 終夜古都音からの告白と、月姫詠斬灯からの告白は意味が完全に違う。

 前者も後者も「支えたい」のは一緒だろうが、しかし恐らくスケールが違うのだ。


 だって、神牙側とはいえ企業の令嬢と【三貴神】の一角だぜ……?


「俺が古都音を思う限り、月姫詠の思いには応えられない。済まない」

「……斬灯って呼んで」


 それは、彼女の一つだけの、願いだったのだろうか。

 俺はよく知らないけれど。とにかく、彼女はそう言った。


「斬灯……さん?」

「おけっ」


 にかっ、という表現が似合う笑いを見せて、ベンチから彼女は立ち上がる。

 そして俺をじっと見つめた。その顔は、どんな感情を内包しているのか、俺にはわからない。


「それだけで、私は充分だよ」

「話、これだけ?」

「うんっ。なんだかすっきりしちゃった」


 戻ろう? と斬灯さんは俺の手を引っ張り、会場を空いたほうで指差す。

 ……当たっているが。「何が」とは言わないが、あたっているけれど。


 まあ、良いか。俺は俺を好いている人が悲しんでいるのはあまり見たくない。

 俺が傷付けるのは、「敵」だけでいい。


 でも、彼女の事を受け入れられないのは、結局彼女を傷つけていることになるのだろう。

 ……どうしようかな?


「これからも宜しくね、八龍君。……あ、私もゼクスって呼んでも良い?」

「ご自由に」


 俺が頷くと、斬灯さんは輝くような笑顔をこちらに向けて、並ぶように歩いていた。

 ……多分、本当の意味でこう並ぶのは無いのだろう。


 そう考えると、妙に寂しい気分になった。

圧倒的潔さ


次回更新は明日です。咳出過ぎて喉から血が出た……。


↓人気投票まだまだやってます! ご意見ありがとうございます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ