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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第5章 夏休み
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第117話 「選ばれる人」

2016.03.04 1話め。

「はぅあ!」


 かえでと共に、神牙達と合流すると、そこにいたのは終夜よすがら先輩と、蜂統はちすべ鈴音すずねがすでにそこに居た。

 ……ゼクスはまだ来ていないか、善機寺よりもあとに車へ乗り込んだし、当たり前か。


 ――ところで、先ほど楓を見るなり変な声を出した、この少女は誰だろうか。歳は俺と同じくらいかソレよりも少々下で、金色の髪の毛は短い。

 顔は完全に女性だが、身体が思った以上に凹凸なく、かなりスレンダーだ。


 ……誰?


「……この子は?」

「俺の弟でスバルって言うんだけど……っおおー?」


 神牙がそう言って頭をぽこぽこはたいていたが。

 ……今、俺は聞き間違えただろうか。今弟と言わなかっただろうか。


 丁度今、やってきたゼクスの方をむくと、話の順番がよくわかっていないのだろう、ポカンとした表情をしている。


「……ゼクス、君にはアレが少年に見えるだろうか、俺の目が間違っているのだろうか」

「間違ってないぞ。……正直俺も、初めてあった時は中性的過ぎてよくわからなかった」


 ああ、中性的でどちらかわからなかっただけなのだね?

 俺には声も容姿も少女だと思ったのだが、違うのか。


 スバルと紹介された中性的? な少年は、俺をじっと見つめながら手を差し出す。


「スバルです。ええと、歳は兄貴の1つ下」

「……よろしく」


 そして握手。その間も、そうちらちらと楓の方を見るのはどうだろうか。

 わざとやっているのか、それとも目を離したくないほど気に入ってしまったのか、俺にはよくわからないが。


「こんな容姿ですけど、ちゃんと男なんで」

「……ああ、分かったからそうチラチラ妹を見ないでくれるか……?」


 その行動には、彼自身も無意識にやっていたらしい。

 たった今気づいたようで、「はぅ!?」と声を上げてこちらに目を向けた。


「おっと失礼。つい美少女だったもので、いてっ」


 ……俺、兄なんだけれど。出来れば俺のいないところで口説きはやってほしいものだ。

 俺が必要なかったら、今日は消えないけれどいつかそんな機会は与えよう。


 よく見たらゼクスもポコポコ頭を叩いていた。勿論、流石に手加減はしているけれど。


「ゼクス兄もやめてください」

「いやーちょっとね。ちょっと色々腹が立ってね。」


 古都音にもそんな目線向けてたよね? と声をあげるゼクスに、スバルが少々怯えた顔を見せるのがどうも面白かった。


「ひぃぃ!?」

「いいじゃないですか。大したことじゃないですよ」


 終夜先輩は微笑んだままで、優しくゼクスを諌めている。

 平和だ、と感じたのもつかの間。


 ……少なくとも見知ったことはないような双子兄弟が、俺達の前に現れた。

 両方共……蒼穹城そらしろと同じような蒼い髪の毛をしている。

 そして、二人共その顔は悪く歪んでいた。


「へーん、君が善機寺ぜんきじの兄妹か」

「……誰?」


 んあー、面倒をかけてくる人間が居るとは想定していたけれど、俺はどうだろうか。俺の存在自体が彼等に面倒なのかもしれない。

 ――目の上のたんこぶ、と言ったところだろう。


 俺は、目の前で神牙アマツが、あからさまに嫌な顔をしたのが見えた。

 アマツは、この2人がキライらしい。


「お前ら来るなよ、さかき有雲あうん無雲のうん


 双子、ということらしい。確かに息のあった、同じ顔だ。

 俺は特に気にしなかった。楓も気にしなかった。


 俺たち兄妹は、それを知っているから。問題はなかった。

 そもそも、本当に俺たちは間接的にしか強力はしていないし、厳密には神牙派の人間ではない。

 神牙たちはそれを理解している。けれど、同じく八龍と協力している【八顕】同士だからとミソラさんが認めてくれたからである。

 

 あの一件から、神牙アマツだってこうやって一緒にいるくらいはしてくれるようになった。

 ――、けれど、この人達はどうでもいいのだろう。


「元とはいえ刀眞の血筋と、善機寺の……か。場違いだねえ、君たち」

「……テメエ、今なんて?」


 「兄貴抑えて」「アマツ様!」と、神牙弟と鈴音が神牙アマツを抑えている。榊兄弟は、まさか怒ると思っていなかったのか、引きつった顔で虚勢を張り続けている。


 神牙アマツは、俺たちの為に怒ってくれているわけではないことは明白であった。飽くまでも、友人である八龍ゼクスのためだ。

 だから、ここは俺が安堵する立場ではなく、ゼクスが安堵するべきなのだ。


「君が怒っても仕方ないんじゃない? 良かったな、お前ら良い壁に守られててよ」


 その言葉に、次は終夜先輩が。

 今さっきまでの穏やかな表情全てをかなぐり捨てて、怒りを爆発させる。


「……なんですって?」

「古都音も抑えろ」


 そんな彼女が【威圧】を始めているのを見てか、ゼクスは慌てて終夜先輩を制す。

 それもそうだ。漏れだした顕現力を感知し、周りの大人達がこちらへ注目し始めている。

 殆どの人は野次馬としてたかるだけで、口を出さない。そりゃあそうだろう。


 榊兄弟のように、恐れ知らずの人は分家でも少ない。


「古都音嬢もそちら側なのですか? 終夜家も、次代は堕ちますねぇ」

「堕ちたって私は構いません。けれど、血筋や過去で今もを判断する、貴方達も刀眞遼や蒼穹城進と同じ存在です」


 終夜先輩への挑発は、その数倍痛烈な批判によって返り討ちになった。

 いつもニコニコ微笑んでいるから、てっきり厳しいことは言えないのかと考えていたが、やはり俺の考えは甘かったようだ。


 終夜先輩は、俺が考えているよりも数ランク上の良い女性だ。

 そんな彼女に選ばれたゼクスは、やはり何か「持っている」のだろう。


 まあ、彼がどれだけ人を惹き付けるかは、この後に榊兄弟の後ろに現れた人間でも充分に判断できる。


「今なんて言ったのかな?」

「えっ」


 穏やかで、また終夜先輩と別の威圧感を持つ声が、後ろから。

 榊兄弟の後ろには、1人の少年と2人の少女が立っている。


 ただいま到着したようだが、彼の顔にはすでに怒りが込められていた。


「今、なんて言ったのか、って聞いているんだけれど? 僕達のゼクス君に、なんていったのかな?」


 亜舞照あまて家当主で、史上最年少の【八顕】当主。


 亜舞照鳳鴻おおとりが、そこに居た。

女子って怖い。

114話が抜けていると頂きましたが、正しくは私のナンバリング間違いでした。申し訳ないです。


次回更新は今日です。

↓人気投票で頂いた【顕煌遺物】のアイデアは、ストーリー上に幾つか出します。

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