第114話 「反省点」
2016.03.02 2話め
遅れて申し訳ないです。
「ふぅ、疲れ――」
「座るな。ミソラの分析結果を聞いてからだ」
3時間に渡る全力での能力計測が終わり、俺と颯は地面に倒れこもうとした。
が、膝が地面に到達するまでに手が伸びる。父さんのもので、俺達をがっちりとホールドしたまま、だ。
「ふぇぇ」
「なに情けない声だしてるのさ。はい、分析結果いくよぉ」
自分でも驚くくらい、間抜けな声が自分の口から漏れ出るのをきいて、俺は溜息をつく。
全力で数時間ってやっぱり疲れるな……と。
父さんと母さんと、2対2でやらせてもらったけれど。
強かった……やっぱり頭おかしいくらい強かった……。
「まずはゼクス君だけれど。ちょっと防御なさすぎかな。今まで学園の中だったら敵対する人に、君を超えるどころか同等の【顕現者】がいなかったから問題はなかったけれど、これからは攻撃ばっかりじゃないほうがいいと思う」
「はい……」
反論が見つからない。そういえば何十回も攻撃を避けようとしてよけきれず、だからといって防御もしていなかったからふっとばされた。
今回は古都音の回復無しだったから、もろに壁へぶつかったし……。それで骨が折れなかっただけ、【顕現者】の身体に感謝といったところか。
「幸い、終夜家から届けられた【始焉】は防御も出来るだろうし、【髭切鬼丸】だって可能だ。だから、自分から攻めるだけじゃないっていうのも考えてみたらどうかな。特に……」
特に、今回は善機寺颯君もいるんだしね、とミソラさん。
うーん確かにそうなんだけれど。
なんというか、いや颯を信用していないわけじゃないんだけれど。
自分でやったほうが信用できるっていうか。自分でやって駄目だったら自分の責任じゃない?
「次に善機寺颯君へ。本気を久しぶりに出せる喜びっていうのが伝わってくるね、生き生きとしている」
その言葉に、颯が僅かながらも表情を緩めるのを確認した。
やっぱり、嬉しかったんだなぁと。その本気が誰の為に使ってくれているかも分かっているから、少々照れくさくもある。
けれど、次のミソラさんの言葉で俺たちは顔をしかめた。
「けれど、ゼクス君の補助をしようっていう気持ちが大きすぎ。今の君なら、ゼクス君をきちんと立てつつ、自分の見せ場も作ることは難しくないんじゃないかな」
そして俺にも飛んで来る。
「そこんところはゼクス君もだめだね。自分に直接関与するところは颯君の補助よりも先に、君が向かうよね?」
「……それは」
「颯君に任せればいいのに」
うわぁ、思ったよりもバッサリとくる言い方だ。
確かに、そうなんだよな。……さっき俺が考えたとおりだ。
だからこそ、心に来るものがある。言葉が心に突き刺さる。
容赦なく。けれど、ミソラさんは厳しくしているつもりはないようだ。
「いいかな、ゼクス君。君が次相手するのは冷躯じゃないんだよ」
「……それは、どういう意味で?」
「刀眞遼と栄都アインなんだ。目の前の敵に集中したくはないかい? 栄都アインさんを颯君に任せて、とかさ」
ミソラさんの言っているのは、飽くまでも「高い目標を持つのは良いが、今回状況も考えて妥協点を作れ」ということ……か?
でも、油断は禁物だ。その油断一つで敗北するとなったら本末転倒となってしまう。
それだけは、なんとかしたい。
「なるほど」
「そういうこと。まあ、僕が言えるのはこれくらいだね」
そういって、ミソラさんは終わったとリラックスした表情になる。
俺たちは、話はすでに終わったと判断して、そそくさと帰る準備を始めた。
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帰りの車内は、妙に重々しい雰囲気に包まれていた。
殆どが俺と颯のせいである。まあ、正論とはいえきっついことを言われたのだ。
そして、八龍宅に帰ってくる頃、颯が口を開く。
ぼそっと呟いたその声は震えており、心なしか半泣きのようにも聞こえた。
「……連携、取れてなかったな」
しかし、それは、俺に怯えて半泣きになっているものではないと確信ができる。悔しさからの涙だ。
「まあ、仕方ないさ。これから取っていけばいいよ、ゼクスも颯君も」
父さんは、そう言って俺たちを慰めると「まだ時間はたっぷりとある」と。
意地の悪そうな笑顔を浮かべて、俺達の肩を叩いたのだった。
ギリギリセーフですね、目標の最低ラインは2話なので。
これから颯もゼクスもメキメキと強くなっていくことでしょう、多分。
次回更新は明日です。
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