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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第5章 夏休み
113/374

第113話 「利用し、されるもの」

2016.03.02 1話め

『まずいな』

『ん、何がさ。カネミツ』


 黒い部屋、蒼穹城そらしろしんの精神世界で【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】は不満気な顔を見せる。

 その様子に反応する、進。その目には前までの生気のないものではなく、徐々に自信を取り戻しつつあった。


 力を手に入れて調子に乗る人間というのは、こういう人のことを指すのだろう。自信があればリハビリも順調良く、夏休みの始まった今頃は少々足を引きずりながらではあるが、顕現力を持たなくなってしまった右半身と【顕現者オーソライザー】の左半身でアンバランスながら生活に支障はなくなっていた。


『この家は、俺の他に所有者が別にいる【顕煌遺物】があるのか?』

『あるよ、【神座シンザ:氷】といって、氷属性を【顕現者オーソライザー】に付与するものが』


 どうかしたの? と進は不安そうな顔に成る。せっかく手に入れた力が何か不信感を抱いているのに、困っているような気配も見せたが、カネミツは飽くまでも冷静に、進へ情報を確認するように伝える。


『それに感づかれた。もしかしたら、俺の力を警戒しているかもしれない』

『そんなに強力なのかい?』


 進は、家の地下にとどまって常に蒼穹城家を守っている【神座シンザ】が、【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】を警戒していることに対して疑問しか湧かなかった。

 その原因は、【顕煌遺物】同士の反発なのかどうかわからない。研究が進んでいないし、今までそんなことを聞いたことはなかったからだ。


 少年の形をとったカネミツは、なにかを思案するように空を見つめ、さてどうするかと考える。

 空もなく、ただ黒い空間が際限なく広がっているだけであったが。


『最初から進の為に、全ての能力を開放した状態で居るんだからな、当たり前さ』

『……へえ』


 「進のため」というのはあくまでもおだてのために使ったものである。

 が、進はそれでのぼせ上がるほど、やはり「ちょろい」存在だった。


 ぱぁ、と顔を輝かせる彼を見て、寧ろ【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】は困惑してしまう。もっと相手が猜疑心や警戒心を持っていたなら、ここまで上手く行かなかっただろう。


 カネミツはとある血筋を探していた。氷属性でもっとも由緒正しき血筋だ。

 それは【八顕】に選ばれた「だけ」の蒼穹城家ではなく、もっと歴史ある血筋。


『またこれで僕は戦えるんだよね』

『そうだな。同じ【顕煌遺物】であったとしても、完全解放と段階的な、もしくは全く開放がなされていないものとでは雲泥の差だ』


 その言葉は真実でもあり、嘘でもある。【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】に備わっている一般的な3つの顕現特性は、すべて開放されていた。

 顕現特性はそれぞれ、進とカネミツの夜の特訓によってものにしているといっても過言ではないだろう。


 しかし、進はしらない。【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】には、彼とかわした仮契約では発現しない顕現特性があることを。


 通常、所有者と【顕煌遺物】がそれぞれを認める時、「本契約」が行われ人間側が命を失うまで、一蓮托生の存在と成る。

 しかし、今回は違う。あくまでも【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】という存在は、進と「仮契約」をかわしたに過ぎなかった。


『そっかー』

『学園に戻れば、誰もがその力に震えることと成るだろう』


 まあ、能力が伴っていなければ無理だが、という言葉は発さなかった。

 寧ろ、今までの状態を鑑みれば充分にこの蒼穹城進という人物は努力している類に入るのだろう。


 夜、しかもリハビリ中でまともに動かない身体に、鞭打って【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】を振っているのだから。

 太刀筋ははっきりとしていなく、またどこもかしこも不完全で未完成。

 しかし、それを蒼穹城進という男は、八龍ゼクスへの復讐心のみで突き進んでいる。


 それは奇しくも、八龍ゼクスが蒼穹城進・東雲しののめちぎり刀眞とうまりょうに対して復讐心を抱いて5年間鍛錬を積んだのと、そう変わらないものであった。


『僕はもう、誰にも負けたくないんだ。ツグにも、他の誰にも』

『その気持ちはよく分かる。だから俺も遠慮はしないし、進ももっともがけ』


 進を煽るように、文句を言っていく【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】の目は、進の見えない場所で光っている。

 それは何を意味するものなのか、進には気づくはずもなく。


 今日とて、今日とて。精神せ現実に戻ってきた進は、両親から隠れるように【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】を手に持って裏口から外へ。


 そして、いつもの遺跡まで静かに歩いて行くと、刀を振り始める。


『俺の能力は磨けば磨くほど効果を増す。強くなれ、もっと強くなれ、進』


 仮契約でもこれだけ強くなれるのなら、少なくとも少しの間遊んでは居られるだろう。


 自分が「会話のできる道具」程度にしか考えられていないと【氷神切兼光ヒョウジンキリカネミツ】は自覚しつつ、また自分も相手を道具として扱っている。

 カネミツは、一心不乱に刀を振る当分の相方を見つめ、「くくく」と笑ったのであった。

簡単にいえば、ゼクスや國綱のように相手を「人」として接すると本契約

「道具」として接すると仮契約になります。


熱は下がったけれど、次は喉が死んでます。腕に関係は無いのでこうしてかけますけれど。

しばらくは1日2話更新で勘弁ください。


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