第112話 「神牙研究所」
2016.03.01 2話め。
短め
「というわけで、善機寺は初めてかな、神牙研究所へようこそ」
迎えの車は本当にすぐ、やってきた。
アマツは冷撫と、俺、颯、アガミ、古都音と父さんを「いいからいいから」と適当に乗せると、運転手に出発するように声をかけて、30分後。
俺たちは、「神牙研究所」の敷地の前にいる。
「……広いな」
「うん、広い」
久しぶりに来たが、やはりここは広い。日本の主要な研究者達はここにかき集められていると言ってもいいだろう。
それらは、すべて【顕現】関係のもので。アメリカや別の國よりも研究が数十年と遅れているはずの日本が、ほとんど同じラインに立てるようになっているのは、ここが原因だろう。
そして、場所も広い。研究員やその助手たちが、好きな時間に好きな研究ができるようになっているためだ。
1年中ここに「暮らし」、研究をしている人も一定数いるという。
【顕現】関係の研究の楽園なのだ、ここは。
「運動場はこっちですっ」
何度も来ているのだろう冷撫が、俺達を誘導するように運動場へ歩く。
運動場、っていっても測定器沢山のフリースペースなわけなんだが。ミソラさんみたいな、強い力を持つ【顕現者】のちからを数値化しようとしているらしい。
まあ、このおかげで【数煌】という基準もできたんだが。俺は難しいことをよく知らないけれど。
「やぁやぁやぁ、ゼクス君よくきたねぇ」
運動場に到着すると、そこにいたのはずっと俺達のことを待っていた、というような顔でこちらを見つめているミソラさんだった。神牙ミソラ、神牙家の当代当主にして、ここの所長である男はにっこりと笑う
「そこは自由に使っていいよ、そこを使う限り、データは取らせてもらうけれど。……で、ゼクス君は先にこっちー」
アマツたちには自由に利用させて、俺には先に聴取があるらしい。
いつものことだし、こちらも【結晶】をもらっている分しかたがないことだから特に気にはしないけれど。
「最近は【神牙結晶】を使っていないんだね?」
「まあ、安定してきましたから。……授業では使っていますけれど。流石に【re】式を使う訳にはいかないし」
【結晶】をつければ一般的な【顕現者】に偽装することは出来るけれど、もともとの戦いが出来ないから少々苦戦もする。
【結晶】をつけなければ、完全に一般的な【顕現者】からはなれたよく分からない存在になるが、少なくとも負ける気がしない。
俺はどこまでも異端である。父さんのように王道で、無類の強さを誇れるわけじゃない。
「この前の事件があったから、少し効果を強くしたけれど……どうかな?」
「効き過ぎですね。……元ので問題無いです」
【改】のほうは効果強いよな。感情の抑制がかなり強くてしかもそれを自覚できないっていうのがやばい。
……あれはちょっと、ね。
「分かったよ。……じゃあ、またいくつか作って送っておくけれど、……終夜さんにも持たせていたほうが良いかな?」
「お願いします」
「いいよぉ。君が頑張ってくれるとこちらも助かるし?」
データとして、って言う意味なのかな?
やっぱり、この前の感情の激化による結晶の破損は、興味深いものだったらしい。
「なんといっても、八龍という存在は神牙家としても有り難いからねぇ」
……それが本当はどういうことなのか、わからないけれど。
ミソラさんと父さんは長年の親友だと聞く。そういう意味であると嬉しいけれど、それじゃ駄目だろうな、と。
「特に今日は、冷躯のデータも取れるしねぇ……ふふふ、僕も自分のデータが欲しくなってきたところだし。一肌脱ぎますか」
ミソラさん、焔属性っていういかにも主人公で脳筋そうな属性を持ってるのに、実際は研究者だからなぁ……。
さてさて、と。
俺は見渡す限り白が広がる、研究所を見回した。
ちょっくら俺も運動してきますか……?
この前来た時からの変動も見たいものだし。
次回更新予定は明日です。大分体の調子も良くなった……なってない?
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