第111話 「力の使いみち」
20160.03.01 1話め
「遊びに来た……ぜ?」
神牙アマツと鈴音冷撫が午後、遊びにやってきた。
明後日が神牙側のパーティだからか、なんとなくではあるがテンションが高い気がする。
俺たちは死にかけているけれど、彼等は元気なのだ。妬ましいとは思うが、これも後の幸せのため!
【開放】を習得した俺と、そろそろ竜巻のサイズを大きくしようという段階の颯、そして父さんの攻撃を8秒まで耐えられるようになって、毎回絶えそうになっているアガミ。
この5日間の訓練時間は、……60時間ほどだろうか。
とにかく、やりまくった。自分の中の顕現力量がかなり多くなっている気がするし、【髭切鬼丸】や【始焉】の太刀筋もはっきりとしてきたと考える。
「よし、アマツ」
「ん?」
「俺と組み手してくれ」
おう、いいぜと2つ言葉で返事してくれたアマツに成長した俺を見せようと、休憩を切り上げ俺は立つ。
審判は父さんだ。【髭切鬼丸】は流石に過激すぎるため、【始焉】を持って起動させる。
アマツは両手から金色の焔を噴き出し、準備はすでに終わっていた。
「では、始め!」
父さんの声が響き、俺はアマツへ。
アマツは俺へ向かって疾駆する。逆手に持った俺の【始焉】は、すれ違いざまにお互い時計と逆周りに回転しつつ、アマツの脇腹に向かって伸びる。
アマツは俺の横薙ぎを注視しつつ後ろへ軽くバックステップを踏み、回避――。それを確認しながら、俺も彼へ向かって右で踏み込み、もう一度薙ぐ。
「うおっ」
空振りしてバランスを崩すと予想していたのか、アマツの目が見開かれた。
両手に宿した金焔を振りかぶって、直後殴打の構えを爆発させる。
熱――、これは焔だ。アマツの放った拳に、焔属性が加わって高熱を発している。
俺はそれを「【被覆】」と詠唱し【顕現属法】を発動、そして左拳を右手で受け止め、左手を懐へ伸ばす。
「かふっ?!」
アマツの声は、どちらかと言えば衝撃よりも驚きの声だっただろう。
自分の攻撃が受け止められる感覚。今まで俺と模擬戦をやってきて、俺は防御なんて出来なかったから避けていた。
だから、先回りして拳を撃ちこめばだいたい俺が負けていたのだ。
しかし、今回からは違う。俺は【被覆】という防御手段を得ることが出来た。
それなら、すぐカウンターが打てる!
「いやー、一気に成長した感じがするなぁ」
アマツはにやり、と笑って俺を讃えると、急に厳しげな表情に変わって両手の焔を更に噴き出した。
さすが【一煌:焔】というべきか。あれは普通に見た目だけなら父さんレベルだ。
中身がどうかは分からないが。
「久しぶりだ。蒼穹城と戦って暴走した頃からか? 本気は」
その笑みは、餌を前にした猛獣のようなものであった。
しかし、試合が再開する前に冷躯さんが止める。
「待った」
「なんだ面白くない」
「アマツ、駄目だぞ。それは」
たしなめられて、アマツがちえーと膨れる。
しかし父さんはその表情に嫌な顔はせず、無言で天井を指差した。
……広く焼き焦げた跡がある。
灰がちろちろと落ちてきて……。アマツが青ざめた。
「うえっ」
決してそれは「上」を刺したくて言おうとしたわけではないだろう。
しかし、とにかく。【一煌】がちょっと焔を強くするだけで何が起こるかは分かった。
「やるなら外でやれ……と言いたいが、流石に家にが炎上するのでな。……対顕現にも限度があるし、やっぱりやるならもっと広い場所だ」
周りに市民体育館でもあればよかったんだが、ここらへんは上流家庭の住宅地である。
そんなものがあるはずもなく、アマツは困ったように首を傾げる。
「……神牙研究所の運動場を借りれるか訊いてくる」
思い立ったが吉日、と言わんばかりに直接何処かへ電話をかけるアマツ。
一言目が「親父ー?」ということは、ミソラさんか。
「あそこなら同時に顕現力の測定もできるし、ゼクスの【結晶】の効果のほども聞けるから良いと思ったんだけれども。……うん、うん。じゃあそういうことで」
……これは、OKをもらってきた感じかな。アマツが満面の笑みで俺たちを見つめているのを見て、そう予測する。
「すぐに迎えの車を寄越すそうです、冷躯さん」
「……はぁ」
アマツの行動力には呆れるやら、感心するやら。
……さて、移動のお時間です。
完全に風邪です。今日は3話更新無理かもです。
が、2回は這ってでも書くので次回更新は今日です。
↓冷躯さんスピンオフはほぼ決定ですね、読みたいっていう人が多いみたいで。




