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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第5章 夏休み
110/374

第110話 「被覆開放」

2016.02.29 3話目

 訓練開始5日目、朝。


「くっそがっ!」


 腹の底から叫んで、顕現力を外へ向かって【開放】する。

 今日も今日とて訓練だ、はやては朝9時きっかりにベルを鳴らして、先に稽古場へ。


 朝9時、アガミは古都音ことねを抱きかかえて、本当に飛んで来た。


「俺は特に顕現力もかけてないぞ」


 父さん……冷躯れいくさんの風の拘束を解こうとしながら、俺は必死にもがく。

 が、まるで底なし沼に足を突っ込んだ如く、だ。もがけばもがくほど強く締め付ける竜巻に、俺はどうしようもなくなってもう一度叫ぶ。


「動けっ!」


 そして――パァン! と破裂音。自分で自分にダメージを与え、周りの顕現力全てを吹き飛ばして俺は意識を失う。

 ……どうやって攻略しろっていうんだ。


 俺は薄れゆく意識のなか、白い光に包まれていくのを感じて、古都音が回復させようと顕現特性を使っているのを自覚する。


「――意識を保て、ゼクス!」


 父さんの鋭い声。その声に反応し、俺は薄れていく意識を無理やり現実へ引き戻した。

 頭が数秒はっきりとしない。が、地面へ急降下していることは理解。


 受け身をとって地面を転がり、立ち上がる。


「……よし。とりあえずは次第点だな」


 意識を失わず地面へ着地できた俺を見て、父さんは素直にほめてくれた。

 ……古都音の回復と、父さんの声があったからなんだけれど、まあこんな感じか。


 まずは意識を失わないことが先決だ。ダメージを食らっても、それで起きていれば次なんとかなるだろう。

 なら、どうすればいい? ダメージを食らっても意識を失わないようにすればいい、簡単だ。

 楯を張ろう。……颯のやっていた、薄い膜みたいなのが一番ありがたい。


「……ん?」


 俺は中型の竜巻を2個、【顕現属法ソーサリー】で唱えている颯の方を見つめる。

 少々詰まっているのか、おろしさんのような流れる動きではなく、どこかカクカクとした動きだ。


 アガミはというと。父さんの攻撃を受けているが、やっぱりアガミはすげえ。

 さっきからずっと、無傷で父さんの攻撃を耐えている。それこそ、俺達が受けたら急所を疲れなくても地面を転がるような攻撃だ。


「アガミ君は固いな。流石ジンの息子」

「えへへ……グフォッ!?」


 照れて一瞬気を緩ませたアガミが、腹に父さんのストレートを防御なしに食らって後ろへ数メートルふっとんだ。

 あ、あれ手加減あまり込められてないやつだ。完全に沈んでる。


「あ、アガミ君」


 そして回復をかける古都音。

 俺が吹っ飛んだり颯が吹っ飛んだり、アガミが吹っ飛んだりで大変だな。

 でも、段々と効力が増してきているような気もする。


「颯、ちょっと手伝ってくれ」

「おう」


 颯によると、薄い膜はその通り、自分と外部を分断するようにイメージするという。

 ……さて、なんと名付けようか。「うすいまく」では格好がつかないしな……。


「最初は【被覆ひふく】にしていたが、どうだ?」

「お、それでいいや。【被覆】ね、【被覆】」


 ひふく、ひふくと連呼しながら父さんの前へ、そして準備OKと頷く。


「いくぞ」


 そして竜巻、銀色に輝くその風を細かにステップを踏んで避け――。

 ――たかったが無理。範囲が広くて捕らえられる。


 耳元をビュウビュウと風邪が吹き抜け、俺は【被覆】をイメージ。

 そして「【開放】!」と叫んですぐに「【被覆】」を詠唱した。


 前者が焔属性で、後者は氷属性。

 【開放】した瞬間に身が焼けるような感覚を、軽減させようとしたのだが……。


 お、成功したな。今回は特にダメージをうけることなく……。

 でもやっぱり落下する。


 上に押さえつけられていた力が一切無くなったのだ、それもそうかと考えながら着地し、父さんの方を向いた。


 瞬間、目の前に拳が飛んで来た。父さんが、鉄の杭打ち機の如く射出した拳を見てからすんでのところで時計回りに身体を捻って、いなすように躱す。

 振り向きざまに、回転したまま【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を抜き取り、背中へ刀を叩き込む……!


 が、それは【顕現属法ソーサリー】によて張られた盾に防がれ。


「今のは良いな」


 と、父さんに言われながら2撃目をどうすることも出来ず、俺は手首を掴まれて【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】と一緒に投げ飛ばされた。


 視界が横に回転し、独楽になった気分だと気楽に考えていると、颯の竜巻が俺を受け止めるように移動し、視界が元に戻る。

 目をグラングランさせながら必死に立ち、最終的に地面に崩れた俺を父さんは見つめながら颯を褒めていた。


「補助のタイミングがとても良かった。アレよりも先だと回転を殺しきれなかっただろうし、アレよりもあとだと壁に激突していたな。しかも、1つを俺に仕向け追撃を加えられないようにもしていたし」

「……まだまだです。影響力は小さいし、本気を出していたなら少しも足止めできなかった」


 颯は全く納得いっていないようだ。

 褒められて、油断するアガミや俺とは大違いだな……。

 

 ていうか、俺ちゃんと考えたんだけれど。やっぱり【顕現オーソライズ】よりも【顕現属法ソーサリー】よりの【顕現者オーソライザー】なのかもしれない。


 詠唱した瞬間に発動するなら、【顕現属法ソーサリー】のほうが有利に働くし……。


自分の状況を理解して、取捨選択するのも成長。


次回更新は明日です。少々風邪気味です。


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