第107話 「閑話:認められない人」
2016.02.28 3話目
「遼、話がある」
刀眞家に到着した俺とアインを待ち受けていたのは、獅子王……お父様のぶきっちょヅラであった。
実に不機嫌、と分かりやすい表情で、お父様は俺とアインを見つめている。
俺は直立不動のまま、返事をして後ろについていった。
それに付いて行くように、アインも。
「はい」
「……座れ、栄都もだ」
案内されたのは父様の寝室であった。
ここに来るのは何年ぶりだろう、少なくとも、胤龍がいなくなってからはここに来たことがない。
俺はずっと、親に愛されていたと考えている。成績も悪くなかったし、【顕現】の訓練も受けてきた。
でも、でもだ。胤龍がいなくなって、愛情は俺1人に注がれた気もした。
けれど。あとがなくなって、お父様は焦っているようにも感じた。
……自分で捨てたというのに。
「2人は、終夜古都音に付与された価値を知っているか?」
「はい」
「……はい」
俺は即答したが、アインは一息遅れる。
何か思うことがあるようだ。
……分かっているけれど、アインの思いは永遠に届かないと思う。
「今回、絶対に負けてはならない。愛情は必要なく、ただ終夜古都音という存在を手に入れられればいい」
愛情は手に入れてからでいい。とお父様はそう言った。
それは流石に否定したかったけれど、今古都音さんは胤龍と一緒だ。
なら、相手の真意なんてすべて無視しろと。
それは俺も同しようもないと思う。そのためには、胤龍に勝たなきゃいけないのが唯一の難関だろう。
……颯は弱いし、特に気にすることもない。
「遼、絶対に手に入れろ。そのために……」
そういって、お父様が俺達に与えたのは、2つの【顕装】。
アインにはこれで2本目になる。脇差しの柄レベルのものだけれど。
で、俺が……これは、何?
「これをやる。東雲に作らせた、もう後がないのはわかってほしい」
俺が手に入れたのは【顕装】だった。恐らく剣だろう。
ただ、本体が小さい。丁度指にはめられる程度のものだ。
……なんだろう、これは?
お父様に話は終わった、と告げられ俺たちはそれぞれの【顕装】を握りしめながら部屋を出た。
アインは俺を見つめている。
「遼、私じゃだめなの?」
「……そうだね、アインでも良い気はするけれど、やっぱりだめだ。俺は古都音さんがほしい」
刀眞家のためには終夜古都音が必要だ。その美貌も。
アインも勿論可愛い、だが古都音さんとくらべてしまうとどうしても見劣りしてしまう。
アインは回復手段を持っていない。俺を守ることは出来ても、俺を癒やすことはできない。
だから、……だから、どうしても問題になってしまう。
「今まで、遼のために剣を振ってきたのに」
「アインの気持ちは理解している。けれど、家が……」
アインは俺のために頑張ってくれている。俺のためなら命だって捨てられるだろう。
それを俺は知っている。けれど、彼女の気持ちを俺は、一つも返すことが出来ない。
「私は遼が好き」
彼女から、堪えきれなかった感情が漏れだした。
ずっと我慢してきたことだろう。もう何年になるか、アインが俺に手を伸ばし、俺がそれを振りほどいたのは。
「ずっとずっと、遼を見ていたのに」
俺は何もすることが出来ない。
東雲契も助けてやれなかった。してきたことは、ただ外部の人間を軽蔑することだけだった。
自分もそこまで出来た人間ではないってのに。
「ねえ、ここまで強くなったのよ?」
「ごめん」
俺は彼女に謝ることしか出来なかった。彼女が悲しみで涙を流し、俺のために強くなり、それでも俺は何も出来ない。
「すまない、でも。今回勝たないと行けないんだ。頼む、俺に力を貸してくれ」
刀眞家に縛られている限り、俺のすべき事は決まっているから。
「少しくらい、認めてよ……」
次回更新は早ければ今日、遅くて明日です。
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