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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第5章 夏休み
107/374

第107話 「閑話:認められない人」

2016.02.28 3話目

「遼、話がある」


 刀眞とうま家に到着した俺とアインを待ち受けていたのは、獅子王ししいおう……お父様のぶきっちょヅラであった。

 実に不機嫌、と分かりやすい表情で、お父様は俺とアインを見つめている。


 俺は直立不動のまま、返事をして後ろについていった。

 それに付いて行くように、アインも。


「はい」

「……座れ、栄都えいともだ」


 案内されたのは父様の寝室であった。

 ここに来るのは何年ぶりだろう、少なくとも、胤龍がいなくなってからはここに来たことがない。


 俺はずっと、親に愛されていたと考えている。成績も悪くなかったし、【顕現オーソライズ】の訓練も受けてきた。

 でも、でもだ。胤龍がいなくなって、愛情は俺1人に注がれた気もした。


 けれど。あとがなくなって、お父様は焦っているようにも感じた。

 ……自分で捨てたというのに。


「2人は、終夜よすがら古都音ことねに付与された価値を知っているか?」

「はい」

「……はい」


 俺は即答したが、アインは一息遅れる。

 何か思うことがあるようだ。


 ……分かっているけれど、アインの思いは永遠に届かないと思う。


「今回、絶対に負けてはならない。愛情は必要なく、ただ終夜古都音という存在を手に入れられればいい」


 愛情は手に入れてからでいい。とお父様はそう言った。

 それは流石に否定したかったけれど、今古都音さんは胤龍と一緒だ。


 なら、相手の真意なんてすべて無視しろと。

 それは俺も同しようもないと思う。そのためには、胤龍に勝たなきゃいけないのが唯一の難関だろう。


 ……颯は弱いし、特に気にすることもない。


「遼、絶対に手に入れろ。そのために……」


 そういって、お父様が俺達に与えたのは、2つの【顕装】。

 アインにはこれで2本目になる。脇差しの柄レベルのものだけれど。


 で、俺が……これは、何?


「これをやる。東雲に作らせた、もう後がないのはわかってほしい」


 俺が手に入れたのは【顕装】だった。恐らく剣だろう。

 ただ、本体が小さい。丁度指にはめられる程度のものだ。


 ……なんだろう、これは?

 





 お父様に話は終わった、と告げられ俺たちはそれぞれの【顕装】を握りしめながら部屋を出た。

 アインは俺を見つめている。


「遼、私じゃだめなの?」

「……そうだね、アインでも良い気はするけれど、やっぱりだめだ。俺は古都音さんがほしい」


 刀眞家のためには終夜古都音が必要だ。その美貌も。

 アインも勿論可愛い、だが古都音さんとくらべてしまうとどうしても見劣りしてしまう。


 アインは回復手段を持っていない。俺を守ることは出来ても、俺を癒やすことはできない。

 だから、……だから、どうしても問題になってしまう。

 

「今まで、遼のために剣を振ってきたのに」

「アインの気持ちは理解している。けれど、家が……」


 アインは俺のために頑張ってくれている。俺のためなら命だって捨てられるだろう。

 それを俺は知っている。けれど、彼女の気持ちを俺は、一つも返すことが出来ない。


「私は遼が好き」


 彼女から、堪えきれなかった感情が漏れだした。

 ずっと我慢してきたことだろう。もう何年になるか、アインが俺に手を伸ばし、俺がそれを振りほどいたのは。


「ずっとずっと、遼を見ていたのに」


 俺は何もすることが出来ない。

 東雲契も助けてやれなかった。してきたことは、ただ外部の人間を軽蔑することだけだった。

 自分もそこまで出来た人間ではないってのに。


「ねえ、ここまで強くなったのよ?」

「ごめん」


 俺は彼女に謝ることしか出来なかった。彼女が悲しみで涙を流し、俺のために強くなり、それでも俺は何も出来ない。


「すまない、でも。今回勝たないと行けないんだ。頼む、俺に力を貸してくれ」


 刀眞家に縛られている限り、俺のすべき事は決まっているから。


「少しくらい、認めてよ……」

次回更新は早ければ今日、遅くて明日です。


↓人気投票は古都音優勢です

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