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四煌の顕現者  作者: 天御夜 釉
第5章 夏休み
105/374

第105話 「一方的訓練」

2016.02.28 1話目

「早く戦いたい」


 パーティもそろそろ終わり、そろそろ解散というところで、核爆弾をぶち込んだのは颯であった。

 バトルジャンキーが流石にすぎる感覚もなくはないが。どうなんだ一体。


 夏休み1日目だぞー。少しくらいは休んでくれないのだろうか?


「はっ!? ちょっとは休めよ」

「いや、早く戦いたいんだ自分の実力が知りたいです、冷躯さん」


 俺が嫌そうな顔をしたのを見て、颯が話を振ったのは父さんである。父さんがそんなこと、断るわけがなかろう。

 地獄にするとかなんとか言っていたんだから。


 変な戦慄を覚えながら、俺は黙々とサラダを頬張っているかえでちゃんのほうを見つめた。

 少女は、こちらの視線に気がついたようで。

 俺を見つめ、戸惑ったように首を傾げた。


「楓ちゃん、颯っていっつもこんな感じなの?」

「…………」


 こくこくと頷く彼女。ということは、バトルジャンキーなのは昔からということなのだろう。

 俺は最近の彼しか知らないけれど、ここは俺と違うところか?


 俺は、出来るだけ意味のない戦いは避けたいからな……。

 と、自分で考えているだけかもしれないけれど。とにかくどうしようか。

 父さんが、ニヤリと笑っているから怖いんだが。


「今日は休みにしようかと思っていたが、そうかそうか。良いだろう」


 よし、俺は自分の部屋に戻ろう。持って帰った【始焉】をメンテナンスするんだ。

 あと、【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】を置く場所も用意しなければ。


 大変な作業が俺を待っている。だから、今は離脱して――。

 ……なんか、おろしさんに肩を掴まれてるんだけれど?

 ジタバタ、と暴れてみるが一向に離してくれないんだが。


 なんだか、スメラギ氏も変な笑顔なんだけれど?


「颯君がやるのなら、勿論ゼクスもやるんだぞ」

「へっ!?」


 父さんの言葉に、俺は間の抜けたような声をして思わずそちらを振り向いてしまった。

 絶対に勝てない試合は出来るだけしたくない。ていうか八龍冷躯と戦うとか無謀にもほどがある。


 多分、俺の見立てで父さんが……【顕現オーソライズ】なし【顕現属法ソーサリー】なしで。

 俺が【re】式・【exe】式つかっても駄目だと思う。


「【髭切鬼丸ヒゲキリオニマル】、使っていいから」

「いや、関係ないから……」


 オニマルが俺を強くするわけじゃないからな。あくまでも頭で「認識」しやすくするものだ。

 俺の感覚はブーストしてくれても、身体能力までを一気にブーストしてくれるわけじゃない。


 それを分かっているからこそ、訓練は明日から始まるものだと思ってたからさ……。

 心の準備をしておきたかったんだが、颯の思考は俺の遥か上を行くものだった。


「とりあえず、今日は颯の観戦をするよ」

「おう、颯君がボッコボコにされるのを見て震えろ」


 父さん、訓練のためとはいえそんなに物騒な事を言わないでくれ。

 俺たちは極地に達した貴方達レベルじゃないんですよ。








「うわぁ」


 面白いほど吹っ飛んで行く颯の姿を見ながら、俺・古都音・楓ちゃんの3人は戦慄していた。

 アガミも訓練に参加していて、なんとなんと父さんの攻撃を防げている。


 防げるのも1秒ちょいで、すぐに突き破られるのだが。

 吹っ飛んだ颯と、防御しそこねてパンチを食らったアガミは、母さんと奏魅かなみさん、カンナギさん、スメラギ氏の四重クワドラプル回復を食らってすぐに復帰させられている。


 明日からアレが始まるのか。

 ……いや、無理じゃね?


「【不可侵】だって避ける方法がある! 心を強くもて、俺よりも!」


 颯にそういっている父さんは、復帰した颯に【不可侵】の一撃を叩き込んで、そう叫んだ。いや、無茶をいいなさんな。

 勿論手加減している。けれど、手加減したからといって相手の意識を奪わないとは言われていない。


 一撃で、鳩尾にそれを食らった颯はまたも意識を失い、カナンさんに空中でキャッチされていた。


「……スパルタすぎる」


 隣のほうで聞き慣れない声がして、そちらを向くと声を発したのは楓ちゃんだった。

 じっと自分の兄、両親をみつめて感想を述べただけという様子ではあるが……。

 俺も否定出来ない。


「やっぱりゼクスも来いよ。多分手加減した颪先輩くらいなら充分戦える」


 さっきから、片手間でアガミの楯をぶち破っている颪さんと対等に戦える?

 ……まあ、言われたからには参加するけどさ。


 俺が立ち上がると、古都音は「大変だとは思いますが、意識がなくなったらすぐに回復させますね!」なんて狂気に満ちた笑顔を浮かべていた。

 古都音……。自分は戦わないからって、それはやめたほうがいいぞ。


「来たか、ゼクス君。……【re】式でも【exe】式でも、【顕煌遺物ゼガシー】でもいいぞ。かかってこい」


 途端、颪さんの周りに巨大な銀色の竜巻が3つ、俺の前に現れた。

 顕現力を流された現象は色を持つ。だからこそ、それが3つというのが分かる。


「こちらは手加減するため、軽い詠唱をしよう。【テンペスト】」


 けれど、分かったからといってそれにどうやって対処するか……。

 俺は【始焉】を握って、顕現力を流し込む。

 【顕現オーソライズ】や【顕現属法ソーサリー】を斬ることが出来ればかわってくるだろう、というのを考えてだ。


 剣の形になったそれを構え、銀色の竜巻に向かって顕現力の中心向かってそれを振る――。


 しかし、刃がそこに到達するよりも早く。

 残りの2つが俺を天高く巻き上げ――。


 俺は、稽古場の天井にたたきつけられていた。


「ほう、意識はあるのか」


 アガミよりは強いな、と颪さん。

 どういうことだ、と自由に動かせない首を捻ってアガミの方を見れば、丁度今。

 同じように巻き上げられているところである。


 俺と違い、巻き上げられている途中ですでに意識はなくなっていた。


「実戦では【顕現属法ソーサリー】に詠唱なんて無いぞ」

「それは、わかって、ます、けど!」


 どうやって突破しろっていうんだよ!


「基本は冷躯の言っていることと一緒だ、心を強くもて。……そうだな古都音さんに対する思いを【顕現属法ソーサリー】に乗せて、顕現力を爆発させるイメージを作れ」


 颪さんの言うとおりにしてみる。



 ――直後、パーンという風船の割れるような音がして、俺は意識をふっ飛ばした。

これはすでに訓練でなく、蹂躙かなにかだと思われる。


要望があったので、前書きに一日中何話目の更新か表記します。


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