第104話 「身内パーティ」
『ゼクス君、颯君、アガミ君、古都音ちゃん、一学期お疲れ様ー!』
最終的に、八龍家に集まったのは3家。
善機寺家・終夜家・蜂統家である。
当代たちにねぎらいの言葉をかけられ、内心驚くやら嬉しいやらでよく分からない気分になった。
少なくとも、刀眞家ではこんな場合ではないだろう。
小さな規模のパーティではあるが、充分に人の暖かみを感じ取れるそれではある。
「公的なパーティはつかれるが、こういう身内のものはいいな、落ち着く」
颯も、小さく微笑んでいた。アガミも今日はリラックスしているようで、周りに漂っている緊張感がなくなっている。
八龍家が完全に安全だということは実証済みなんだろう。
攻めてこられても、日本史上最強の【守護者】がいるからな……。
と?
玄関のほうでバタバタとした音がし、1人の女性が入ってきた。
年齢は、30前半。だけれど恐らく【顕現者】だ、それがまったくもって信用出来ないのは分かっている。
『【顕現者】の見た目は絶対に信用するな』という格言がある通りである。
本当に強い人は、古都音のようにだれにでも分かるような顕現力をたまに漏らすからだ。
その女性の容姿は、なんというか……。
黒髪の、いかにも「エリート」といった雰囲気の人だった。
でも古都音に似ている。……ということはそういうことなんだろう。
「ぜぇぜぇ……遅れました……。すみません」
終夜巫と申します! と入ってきた女性に父さんは自然な動きで飲み物を渡す。うわぁ凄く自然過ぎてカナンさんと奏魅さんが若干引いているレベルだ。
やっぱり、父さんって学園時代、ハーレムを作りかけていた説が濃厚になってきましたね。来ましたよ。
父さんのことだから、「学園にいる間はまとめて護ってやるよ」とか言いそうだもんなぁ。
「カンナギさん、お仕事お疲れ様」
「……もう少し早く終わるはずだったのですが」
そういってカンナギさんは大人勢の会話へ入っていく。
俺たち未成年勢は、アガミがいつの間にか現れた美少女と話をしているのを見て、首を傾げていた。
俺は妹が居ないし、古都音も一人っ子と聞いている。アガミの妹ではなさそうだ。
「ねえねえ、颯?」
「……ん?」
「この子は誰だい?」
俺が指差すと、その美少女は黄緑色の長い髪の毛を揺らしながら「無言」でぺこぺこと頭を下げた。
少々顔が赤いのは、恐らくパーティの熱気に当てられているからだろう。
それかアガミに失礼なことを言われて、怒ってるかどっちか。
「妹の楓だけれど。ちなみに1歳下」
「紹介しろよ……」
そういうと、颯は少々右の口角を釣り上げた気がした。
……なんか、ろくでもないことを言い出しそうな雰囲気である。
颯は楓ちゃんを引っ張ってこちらに連れてくると、俺の耳だけに聞こえるように囁いてきた。
「……三親等以上の結婚は特に問題ないって知ってたか?」
「ないけれど、無いからな?」
問題はないけれど、そのつもりは無いと伝えておく。1人で十分すぎるし正直。
包容力は、古都音に勝る人いないんじゃないかな今のところ……。
多分だけどなー多分。多分。
――っと、父さんがこっちに近づいてきた。そばには善機寺家当主の颪さんも一緒である。
「ゼクスゼクス」
「んー?」
「正確にはゼクスと颯君にだが。予定のある日以外、平日は基本的に訓練漬けだ」
あー、うん。知ってたと言わざるをえないか。
休日は休ませてくれるのが唯一の良心だろう、それでも夜は訓練するんだろうし。
颪さんが指をボキボキと鳴らしているのを見たら、地獄が見える気もした。
次はタッグの決闘だろ? だからタッグで連携攻撃の方法とか教えてくれるのかね。
地獄は到来してきそうだが、楽しみな気がしてきた。
俺は頷く。と父さんは颯の方に視線をうつす。。
「颯君も実家から歩いて20分もかからないだろうし」
「……是非。強くなりたいです」
そこ是非、とか言うから颪さんが邪悪な笑みを浮かべているんだが。
どんな訓練を受けさせられるのか、正直怖くなってきた。
「古都音ちゃんは……毎日来たそうな顔をしているね」
「……うー。学園ではずっと一緒でしたから」
最後に古都音。古都音はスメラギ氏に回復の仕方を教えてもらうんだったか。「ゼクス君の助けになりますので」とか言っていた気がする。
しかし、古都音はこちらをちらちらと見やって、何かを悩んでいるようだ。
一緒にいたい、ってそういうことなのか。いやー良い彼女だなぁ。
「でも、迷惑はかけられませんし」
「アガミが毎回飛んでこればいい」
「へっ!?」
名案だ、と発言したのは蜂統神さんであった。
いきなり話を振られたアガミが間の抜けた声を発し、取ろうとしていたチキンを取り落とす。
確かに、アガミなら【翼】を顕現できるし、それならなんとかなる……のか。
この周りは【顕現者】だらけだし、空を人が飛んだくらいでは驚かないだろう。
「いや、別にいいけど。良いけどスメラギさんは許可してくれるんです?」
「アガミには信頼を置いている。君なら対空ミサイルからも護ってくれるだろう」
「まあ、そうですけどね?」
そこは自信あるんだ……。
どうやってアガミの防衛を突破すればいいんだろう?
父さんなら、なんとかしそうだけれど。
「良かった」
「ん?」
そんなこんな感じでワイワイしていると、古都音が俺の手をとって優しく微笑む。
彼女を正面から目線で捉えると、少々恥ずかしげに顔を赤らめて、しかしそのまま視線を返してきた。
「夏休みも、一緒にいていいんですね」
「……勿論。ずっとそばに居てくれると俺は嬉しいかな?」
「はい」
「巫」は1年前くらいに人名として使えるようになったんでしたっけ?
次回更新は明日です。
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今回は要望のあったとおり、理由に必須はありません。




