第101話 「小話:適正試験前日」
短い。
「兄さん、明日が怖くないの?」
「なんで?」
何年か前のある日、刀眞邸の兄弟部屋には2人の男の子がいた。
両方共、黒真珠のような艶のある黒い髪の毛をした、美少年。
名前を、刀眞遼と胤龍と言う。
「だってもし【顕現者】としての【しかく】がないと……」
「考えなければいいんだよ、だって俺達は刀眞家の兄弟だぜ」
先程から弱音を吐いているのは胤龍の方だった。兄と11ヶ月差の弟で、顔からは「優しそう」というイメージを持たれる。
逆に何の心配もなく、構えている様子のほうは兄である遼。
こちらは対称的に、若干10歳にしてどこか頼りがいのある風格を漂わせている。
「なくても気にすんな、刀眞家は受け皿はたくさんあるだろうし……少なくとも【顕現者】の身体能力はあるんだ、問題ないさ」
遼は刀眞の仕組みを半分理解しながらそういった。刀眞には【顕現者】の資格が必要ない部署だって存在する。
もし【顕現者】として落第しても、それを許容できるだけの場所があると遼は考えていた。
だからこそ、胤龍を安心させるようにそういったのである。
「俺よりも努力してて、ツグは偉いな」
特に、遼は胤龍が努力家ということはすでに知っている。才能にも恵まれ、またそれに溺れていないことも知っている。
自分と違う。遼はそれをわかっていた。
だが、自分の感覚が、親の感覚に直結するとは限らない。
遼は、親が【顕現者】至上主義だということを知らない。
「ただ、実演をしたことがないんだ」
「……父様が許さないんだから仕方ない」
胤龍は不安を隠せない。もし、試験に落ちたらどうなるか。
名家の刀眞がそこまで甘いわけがない、胤龍は不安を隠すことなく、地面の方を見た。
「明日か……」
「明日だな……」
【顕現者】適正試験、前日。
刀眞兄弟はそれが運命の分岐点となると全く知らず、それぞれの気持ちで臨もうとしていた。
次回更新は明日です。小話書くか、第5章書くか悩み中




