六流れ 猪は急には止まれないだろう?
やっとかけたぁ。
・・・。
ではどうぞ!
私は信じられない気持ちでその戦いを見ていた。
黒髪の青年は何度もギガンテスボアに拳をぶつけている。あのままでは倒すことはできないであろうとは思うが、一方では倒してしまいかねない。そう感じてしまう。
「なぁフィリップ。本来あれはどうやって倒すものなのだ…?」
「本来は攻城兵器のような大型の兵器か、大規模な掃討部隊で少しずつ攻撃して倒すかですね。1対1はクラスA以上の冒険者ならできるかもしれませんが、実際に戦って勝ったという話は聞いたことがありません。」
「そうか。出鱈目だなあれは。」
そういって私は戦いに目を戻した。
まったくキリがねぇなぁ。攻撃が単調だからよけるのも止めるのもさほど難しいことではないんだが…。
戦いながらゲームやアニメの知識を探していく。
突進してきたら躱して崖に落とせるのがあったなぁ…。だけどここにはそんなものない。岩にぶつけて気絶させて隙を作る。岩が負けるわな。罠を仕掛けて動きを止める。罠なんてない。
…。よし、あれならいけるかな。
「よっしゃ!これで決めるぜ!」
俺はそう叫んで一気に後ろに下がり距離をとる。いつでもいいように準備をする。
「さぁこい猪野郎!!」
その声が聞こえたからかどうかは知らないが猪野郎が走ってくる。
だんだん近づいてくるがまだ早い。タイミングをしっかり見極めなくちゃな。
「ブォオオオオッ!!」
よし、いまだ!
「大地よ!わが呼び声にこたえその牙をたてよ!グレイブランス!」
魔力を一気に地面に流し込み魔法を唱える。一瞬で地面から岩の槍が生える。猪野郎はそれに気づき止まろうとしているがあれだけの巨体があれだけの速度で突っ込んできてるんだ。そんな猪が急に止まれるわけないだろう?
ドグシュッ!!
重く鈍い音が響き魔法で作り出した大地に槍に猪が突き刺さる。
すごい勢いで突っ込んできてたせいで喉元へ刺さった槍が背中にまで
突き抜けていた。
「うへぇ。すげぇ。でも何とか倒すことができたな。えーと。どこか売れる部位でもあるのか?肉は食えるのか…?」
しばらくそんなことを考えていたらさっきの騎士のような人が2人楓と一緒にこっちへ来た。さすがにさっき怪我して倒れたやつは意識戻ってないみたいだし、移動するのは難しいだろう。
「お初にお目にかかる。私はファレス王国が魔法騎士、エイリスと申します。横にいるのが同じく魔法騎士のフィリップだ。危ないところを助けていただき、瀕死の怪我を負った仲間を助けていただき感謝する。」
「いんやー。たまたま見かけただけだから気にしなくていいよー。それよりお願いがあるんだけど。」
隣りの騎士が何かを言ってるようだけどなんだろ?まぁいきなり現れた見知らぬ人間に対して警戒するのが普通なんだろうけどさ。
「私たちで聞けることであるなら話を聞こう。」
「まず俺も自己紹介しとかないとな。俺の名前はシュンタ・ア《ゴスッ》…。シュンタ・クラウドだ。横にいるグリフォンが楓。よろしく!」
(いきなり突っつくなよ!いてぇじゃねぇか!)
『名前はさっき話して決めてたよね?ちゃんと言わないからよ』
(へいへい。)
「ああ。よろしく。」
「そうだな、まずは俺が何者なのかっていうのはっきりさせとこうか。」
「いや。敵でないことは分かる。そのグリフォンが一緒にいる時点で無暗に人に危害を加えようとする人間でないことはな。契約もされているようだし。」
「契約?」
「はっ?その左手の紋章はそのグリフォンとの契約の証でしょう!?」
言われて左手を見ればグリフォンにも見える白い紋章のようなものが描かれていた。楓の左前足には同じ紋章が書かれている。
「へぇー。これ契約の紋章だったのかー。」
「本当に知らなかったようだな…。まぁいい。ところで頼みとはなんだ?」
「ん?ああ。これの解体の仕方教えてほしいんだけど。あとどこが売れるとか。」
「「…。」」
『あんた頼む順序おかしくない?』
とりあえず楓のツッコミをスルーして話を続ける。
「とりあえずあの怪我した奴はしばらくあまり動かさない方がいいから今日はどこかで野営したほうがよくないかー?その時に俺のことは話すからさ。」
「わかった。フィリップ、バラムとクレバーを呼んできてくれ。」
「わかりました。」
その女騎士は気の抜けたように笑顔を作りながらもう一人の騎士とさがっていった。
六流れ 終
閲覧ありがとうございます!
補足
魔装鎧:魔力を流すことで物理的、魔法的防御力を高めることができる。魔力を流している間は重量も軽くなる。魔法騎士たちの標準装備。
騎士の名前
姫騎士エイリス、魔騎士長バラム、重魔騎士アラン、魔道騎士フィリップ、魔騎士ナイア、魔騎士クレバー
ぶっちゃけメインの二人以外は書くとき考えました。