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moDokashi  作者: 季川 貴唯
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1.この関係に名前を付けるとするならば

1. この関係に名前を付けるとするならば



* 制服を着て学校へと向かっているとき、後ろから声がかかる。

 小さな生物が、パタパタと音をさせながら必死に走ってくるのが見えた。


 「まっ…まさぁ!」


 息を切らして、ボロボロに着崩れながら走る鈴。

 パチリとした目、くるりんとしている睫毛。切り揃えられている前髪は、右斜めに分けられている。

 小さめサイズにできている鈴は、女の子に見えても可笑しくないのである。(寧ろそちらの方が正しく思えてしまう。)

 仕方なく目の前の小動物に近づき、一言。


 「鈴、お前ボロッボロ。」


 前髪を指で掬い、揃え直す。体のサイズよりも大きなYシャツの襟を立て直す。 そして緩みきってしまっているネクタイをきちんと絞め直し、胸元にある校章の向きも直すと、鈴が口を開いた。


 「マサ、ありがとう」


 ん、と小さく返事をして、雅也は鈴の頭をくしゃくしゃと撫でる。 その行為が好きなのか、目を細めてニコりと笑う目の前の子。

 小動物のような愛くるしさを常に放ち続けている鈴。

 男子高にいっていたらおもちゃにされてしまう。

 そういう所は…

 初めて会った時から、


 「鈴は変わらないな。」


 「ん?」


 理解をするのに時間が掛かっている鈴は、頭上にはてなマークをたくさん並べている。

 けれど、少し時間が経つと忘れてしまうようで、5分もすればいつもの笑顔になっていた。


* 学校に着く寸前、鈴が急に走り出した。


 「おい!鈴っ…!」


 パタパタと走る鈴が止まった先に居たのは、クラスメイトであるユキだった。

  仲の良い二人。 どちらからという訳でもなく近くに行き、笑顔を振り撒いている。


 「鈴くん、おはよう」


 「ユキちゃんおはよう」


 独特な空気を持つ二人。(いや放つ二人)

 他の人から見たらほのぼのとしたカップルにしか見えないのだ。

 二人の近くまでゆっくりと近付いていくと、ユキが気づいた。


 「あ、まさやくん。おはよう」


 ふわりと笑うユキも鈴と同じく可愛らしい子である。

 セミロングの黒髪で、目はぱっちり。 これまた小動物のよう。

 華奢な体で、全体が小さくまとまっているのが鈴との共通点である。

 この二人が一緒にいるだけで周りの空気がガラリと変わるのだ。

 常にマイナスイオンを放ち続ける二人のことを見守り続けている雅也はペットショップに居るような感覚なのかもしれない。




 ―――天然と天然。

 ―――小動物と小動物。



 この組み合わせが新しいのかもしれない。



* もどかしさを見せつける二人はお互いに顔を見て話せない。

 二人の関係。

 それはまさにパラレルだ。




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