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2 魔戦学へ、ご案内

二人が集合場所───リンがいた草原から1キロほど離れたところにある、村の前に到着すると、既に他の生徒は揃っているようだった。

すかさず鬼教官として知られる、エヴァリーン教官の怒鳴り声が飛んでくる。

「遅い! 3分17秒の遅刻だぞ、レジオスター、スミス!!」

黙っていればカッコイイ美女なのだが、職業柄か、怒ると鬼の形相に見えてしまう。

(お〜怖っ)

(リン、おまっ…なんでそんな冷静なワケ?)

二人がひそひそと話しながら生徒たちの後方に付くと、教官が皆に向き直った。

「さて、貴様らが今、この場所にいるということは、各々の課題はこなしているものとみなす。まさかサボタージュしおった者がいるとは思いたくないが……まあ、した愚か者は首を洗って待っているんだな」

にやり、と教官が凄みを効かせて笑う。

その言葉に一部の生徒が冷や汗を滝のように流し始めたのをリンは見たが、自分には関係ないと早々に目を反らした。

「では戻るぞ。我らが魔戦学へ」

教官の言葉とともに、足元に巨大な魔法陣が現れ、視界がホワイトアウトした。



◆ ◆ ◆



リンが目を開くと、そこは魔戦学の校門前だった。

「教官の帰還魔法…ホント便利だよな〜」

魔戦学の校舎───というか、敷地全体に魔法を無効化するバリアが張られているから、直接校舎の中には戻れないけれども。

それでも歩いて帰るよりは早いから良いよな、とリンはよく考える。

「今日の授業はこれで終いだ。ゆっくり身体を休めて明日の訓練に備えろ。以上!」

教官から解散の宣言を受け、生徒たちが思い思いに動き始める。

リンも、さて寮に戻って汗でも流すかな、と一歩踏み出そうとすると。

「リィィィンくぅぅぅん? どぉこ行くのかなぁぁぁ?」

「ひっ」

後ろから呪いじみた声を放つアスターがいた。

ギギギ、と後ろを振り向くと、鬼気迫る様子でにっこりと笑ったアスターが、どすの効いた声を放つ。

「大人しくフェリクスのところへ行くかい? それとも…俺に蜂の巣にされるかい?」

ガシャン、と物々しい音と共にアスターが取り出したのは、マシンガンだ。

なるほどこれは蜂の巣だ。

「………はい……フェリクスのところに行きます………」

半ば項垂れながら、リンはアスターと共に校舎に入るのだった。



◆ ◆ ◆



魔戦学に学年という概念はないが、とりあえずクラス分けはある。

実技・筆記ともに成績優秀な者が所属する"ドゥーベ"、まあまあ平凡な成績の者たちが所属する"メラク"、そしてすこぶる成績が悪かったり、何かしら問題を抱えている者たちが集められる"フェクダ"。

リンとアスターは"メラク"だが、今彼らが会いに行こうとしている相手は、魔戦学のトップクラスの成績を持つ者だった。

つまり、"ドゥーベ"。

成績が優秀な者は、結構格下を嘲るような態度をするため、行きたくはないのだが、これも自分たちのためだ。

レポートを写すのを断られても、最悪なにかアドバイスがもらえれば万々歳だ、と二人は考える。

そして"ドゥーベ"の教室の前に立ち、深呼吸。

リンは横に立つアスターを見遣ると、アスターは実に爽やかな笑顔でサムズアップをしていた。

(…オイラに丸投げかコンチクショー)

ひくり、と口元が引き攣るが、キリッと顔を引き締めて戸に手を掛けた。

そして思いっきり、開ける!

バンッ、となかなか大きい音が響く教室に居たのは───

「………あ、あれ?」

一人の少女だけだった。


「何してんの? リンにアスター」

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