ありがとう
詰まらない学校を終えて、時間を合わせるために図書館で暇をつぶし、少し経ってから差程遠くない公園へ歩いて向かう。
日が落ち始めた頃になり、ようやく目的地に到着した。
「結さん。いる?」
あまり大きな声を出さずに言う。
こんな所で大声出して呼んだら恥ずかしい事この上ない。
他人から見れば俺しか見えないのだから…。
しかし、結さんの姿がいっこうに見えない。
いや、現わさないといったほうが正しいのかもしれない。
だが、心配するだけ無駄だったみたいだ。
ニッコリ笑顔を浮かべて彼女は空気から浮き出るように現われた。
「来てくれたんだ。ありがとう。篤君」
「約束したしね」
俺も彼女の笑顔につられて顔がほころぶ。結も笑いながら。
「今のは高感度アップですよー」
「ハハ、茶化さないでよ」
俺の笑顔が苦笑いに変わった。昔からからかわれたりされるのは苦手だったためである。
「でも、ありがとう。昨日知り合ったばかりで来てくれるなんて思わなくてさ」
表情が沈むのがわかった。だから俺は笑顔でこう答えた。
「結さんは俺と合うのが嫌だった?」
少し意地悪に聞いてみた。すると彼女は慌てた感じで手をブンブンと振る
「そ、そんなことないよ!」
とても笑える光景に俺は思わず笑ってしまう。
「な、何で笑うのよ…」
少し怒った感じで言うが、俺の笑いは止まらなかった。
「ゴメンなさい…」
俺が即座に誤ったのは、彼女が鋭い目付きで俺を睨んだからである。
呪い殺されるかも…。そんな想像に背筋が凍りつくのが分かった。
「アハハッ」
しかし、彼女は笑いだした。
「何で、そこで笑うの」
と聞いたら。
「さっきのお返し」
そんなに自分の行動が面白かったか?と尋ねると、彼女は。
「とても」
と答えた。そんなこんなで、あっという間に日が暮れていた。
「そろそろ、帰りますか」
俺がそう言うと彼女が少し悲しそうな顔をする。
「ねぇ、篤君。明日も来てくれない?」
おずおずと聞いてくる少女に笑顔を浮かべながら。
「暇だからいいよ」
答えに彼女は幽霊とは到底、思えないくらいの満面の笑みを浮かべる。
「それじゃ、また、夕方に。」
「了解」
「じゃあね」
そう言うと彼女は現われた時とは逆に空気に溶け込むように、その場からいなくなった。
帰りに気付いたが自殺理由を聞いていなかった。
まぁ、明日も会えるわけだから、明日聞けばいいと思い、俺は帰路についた。
どもです。今回はネタから執筆まで一時間で終わらせることがでました。それにしても、なんの捻りもないストーリーです。今後とも「みえるモノ・みえないモノ」(以下「みえ・みえ」)を書いていくのでヨロシクです。