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第一話 勘弁してくれ…

初投稿になります。

更新は不定期になりますがよろしくお願いします。

外は今すごい雨だ、雨は嫌いじゃないが旅をしている身としては迷惑きわまりない。

「そろそろここも出るか…」

もともと目的のある旅ではない、ここに留まって一週間ぐらいになると思うが、どこかも知らない場所に留まっていたのは少し懐かしい気がするから…それだけだ。

 俺は昔の記憶がすごくおぼろげだ、そりゃ昔のことを全部覚えているって人はいないし、人は誰でも忘れる。だが俺のは他人から見ると記憶喪失のレベルらしい。自分の名前はなんとか覚えてるが、年齢となると自信はない。たぶん17ぐらい?ってな感じ、どこ出身だとか、親は誰だとかそういった感じのはもちろん覚えてない。これって記憶喪失?

 だが俺は昔のことを思い出したいとかは思ってない、俺みたいな人間が忘れた記憶だ、きっとろくでもないものに違いない。

 少し懐かしい気がしてこの場所に留まっていたが、何も得るものはなかったし、何も感じなかった、雨があがればまた適当にどこかに行こう。


 そう思って寝ようとしたんだが。外で車の止まる音がした、足音が聞こえる…音からして3~4人ぐらいか、こんなところに何のようだ、安眠妨害しやがって訴えるぞ!

「いや!やめて離してください!」

 女?たしかに女の声だ

「うるせぇ!こいつやっぱり口塞いだほうが良くないすか?」

「ばかやろう、口塞いだら楽しさ半減だろうがよ」

「俺も混ぜてくださいよ、こんな上玉とやるのは久しぶりなんすよ」

なんだなんだ人が寝るってときに騒がしいやつらだな。

「…アニキだれかいますよ」

「おいショウそれは本当か?」

「はい、間違いないですさっき人影が見えました」

こっちに気づいたみたいだ…

「やめて…ください…おねがい…します」

「おいケン、そいつ抑えとけ」

こっちに近づいてくる、面倒そうだし、見つかる前にこっちから顔をだしますかね。

「はいはい、なんですかこんな時間に良い子は寝る時間だぞ」

ちょっと軽めのコミュニケーション、第一印象って大事だからね、あきらかに良い子ではなさそうだけど…

「おい、兄ちゃん今からちょっといいことやるんでなこっから出て行ってくれんかな?」

 うん、間違いなく良い子ではないね、ていうかおっさんだし

「ふざけろ、ここは俺が先に見つけたんだ、今からなにすんのか知らないけど、静かにして俺の安眠を妨害しなかったら文句も言わないから、それで一つどうよ?」

 我ながらなかなか良い提案だ平和な日本らしい平和的解決方法。これであちらさんが納得してくれたら完璧…

「ふざけんな!怪我したくなけりゃさっさと出ていけや!」

 ですよねー、そうそう事がうまくいくとは思ってませんでしたよ。

「ショウこいつたたんじまうぞ」

「了解、アニキ」

 交渉決裂、交渉にすらなってなかった気がするけど…喧嘩なんて久しぶりだな、久しぶりついでに派手にやりますかぁ!

「アニキたち遅いな、なにやってんだ?もう我慢できねえし先にいただいちゃいますか」

 女の体に男のいやらしい手がのびる。

「やめて…触らないで…」

「なんだ?聞こえねえなぁ、あんたがこんなに可愛い顔してるのがいけないんだぜ」

 彼女は今までの人生で一番恐怖していた、腰がぬけてしまい立つこともできない、できるのは助けを呼ぶことだけ、だがこんな人気のない倉庫に誰も来るはずがない、そのことが彼女にさらなる恐怖を与えた。

「たすけ…て、誰かたす…けて」

 来るはずのない助けを呼ぶ、それがわかっていても今の彼女にできる唯一の抵抗、それをしないわけにはいかない。


「さぁ、観念しな助けなんてこねえよ」

 ポンポン、男が女に襲い掛かろうとしたそのとき、男の肩を誰かがたたいた。

「アニキ、遅かったっすねえ、先にいただいちゃうところでしたよ…って誰だてめえは」

「ここの倉庫で寝泊りしてた一般人です、よろしく」

 とあいさつしたはいいけど、状況がまだつかめてませんよ、とりあえず二人ほど倒しちまったけど、ていうかあいつらたいしたことなかったな。

「おい!アニキとショウはどうした」

 いかつい兄ちゃんがなんか言ってるし、アニキ?ショウ?あのおっさんらのことか?

「あの二人なら寝てるよ、良い子は寝る時間だからな」

 いかつい男はこちらをにらんでくる。

「てめえ、覚悟しな」

 男はナイフを懐からとりだした。武器…これがあれば実力差が多少あってもそれ一つでその差をひっくりかえすことのできるもの、多少…なら。

「ぐえっ」

 男はパンチ一発で気絶した。

「こいつも弱い…たった一行かよ、つうかこいつら結局なんだったんだ?」


「さて…あとは」

この男らときた女、顔を見る限り少女だろう、俺と同じぐらいの年齢っぽいがこいつに事情を聞いた。かいつまんで言うと、この娘はこの男三人組みに誘拐されたんだそうな、そこで襲われそうになったところに俺が男らを倒しちまったということらしい。あれ?俺かっこよくね?まぁそれはいいとして、こんなところにいるのもなんなので、この娘を家まで送ってやるとした。

「おい、立てるか?肩かしてやっから」

「ありがとう…ございます」

 少女は男ら襲われた恐怖からか、ひどくぐったりしている。少女に肩をかしながらとりあえず倉庫からでる。少女に家はどこだ?と聞こうとしたらサイレンの音を鳴らしながら複数の車がやってきた。パトカーだ、警察がきたならこの娘は警察に預けたのでいいかと思いパトカーに近づいていくと、急に何人もの警官に取り押さえられた。

「ええっ!何事!」

「誘拐事件の現行犯で逮捕する!」

 ちょっと待て、俺は警察に捕まるようなことはいっさい…してないこともないが、誘拐はしたことないぞ!何これ、一話目から逮捕END!?勘弁してくれ

「俺は誘拐なんてしてねえよ、最近やったイタズラなんてピンポンダッシュぐらいだ!」

「黙れ!誘拐犯、犯人はみんなそういうんだ」

こいつ話聞かねぇ、人の話を聞かないやつを国家公務員にするのは良くないと思うんだ。

「こいつ…」

おれが言い返そうとしたとき、この場を救う一声が少女から発せられた。

「その人じゃありません!」

 助かった安堵からか、なかなか大きな声がでていた。

「その人は私を誘拐犯から助けてくれたんです、本当です、その人は私の恩人なんですはなしてあげてください…」

その一声をうけ警官が力を弱めつつ聞いてきた。

「本当かね?」

「助けたかどうかは知らねぇけど、少なくとも誘拐犯ではねえよ、誘拐犯ならあそこの倉庫にいるよ」

 俺が指をさした倉庫に複数の警官が向かったところで俺を取り押さえてたやつらも力をゆるめていった。

「ふぅ…」

 今度は俺が安堵しているとパトカーではない車から一人の男が降りてきた。

「琴音!大丈夫か!」

「お父さん!」

 車から降りてきた男と少女が抱き合う、セリフから察するに誘拐から無事に帰還した娘と抱き合う父親ってところかな、いい場面だな、俺泣けてきちゃうよ。せっかくのいいシーンなので俺は一言だけ声かけてからここを離れることにした、あの誘拐犯も警官に任せてればいいだろう。

「あの…ことね…ちゃん?とりあえず俺はこれでおいとましますんで」

 俺がその場から去ろうとすると…。

「待ってください」

 琴音というらしい少女に呼び止められた。これ以上の面倒事は勘弁なんだけど…。

「お礼をさせてください、危ないところを助けていただいたわけですから…」

 正直お礼はありがたいんだが、警察がらみのことで礼はうけたくない。

「そんな…お礼なんてお気持ちだけで…」

 早くここから離れたい、これってあれだろ?警察から表彰状みたいなのがもらえる展開だろ?勘弁してくれ。マジで。俺が割りと焦っていると。

「君が、娘を助けてくれたのか…」

 いい歳したおっさんが涙ぐんでいる。

「ありがとう!君が、君が、む、娘を助けてくれなかったら今頃は…礼をさせてくれ!何が欲しいか言ってくれ!」

 今度は号泣しだした、俺がおろおろしている間にも話は進んでいく。

「何をしよう…そうだ、いったん家に招待してそこでご飯をごちそうして、そこで決めよう、そうだそれがいい、ささ、雨も降っていることだし、早く車に乗って」

 おっさんの勢いにおされてそのまま車に乗せられちまった。もうあれだ…なるようになれってな感じだ。


 あの誘拐犯は3人とも捕まったらしく、後日警察から感謝状のことで連絡がくるらしい、

めでたしとめでたくない。

「勘弁してくれ…」

 俺の悲痛のつぶやきは車の音楽にかき消されたとさ。



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