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友人の結婚式

作者: パイン

この話は自分のノンフィクションです。

友人の結婚式の前日に、実家に帰る途中に考えていたことを書いたものです。



 「二子玉川花火大会・・か。」

 車は広い環状八号線の先が見えないくらいに渋滞しており、歩道を歩いているカップルや家族連れが松井誠の愛車である旧型のアコードワゴンを悠々と歩いて追い越している状態だった。

 「6時に花園インターを乗ってまだ都内なのに、もう9時じゃねえか、あとちょっとなのにな。」

 普段なら2時間半あれば自宅の埼玉県熊谷市から実家のある神奈川県茅ヶ崎市まで着けるのだが、この日は高速道路上の事故渋滞と今の状態、すなわち花火大会の道路規制でまだ東京都内の世田谷区あたりである。

 歩道には高校生くらいの桃色の浴衣を着た女の子と少し年上であろうデニム生地のハーフパンツとオフホワイトのポロシャツを着た彼氏が楽しそうに歩いている。

 マコトはそれを愛車の中からポカーンと眺めながら呟いた。

 「あんな感じだったのに、いよいよ結婚ですか・・。」

 少し昔を思い出してみる。

 

  ※


 荒海祐はマコトが通っていた地元にある県立高校の1個上にあたり、同じバドミントン部だった、つまり先輩である。

 先輩といっても多少の上下関係はあったが野球部や柔道部のような体育会系のノリは無く、和気あいあいと常に場に笑いを求めに海に行ったり、飲み明かしたものである。

 ユウが高校を卒業した後も、付き合いが無くなることは無く、よく免許取りたてのユウが、家のボロい軽自動車を運転して色んな処に連れて行ってくれたり、海で飲み明かしたりしたものである。

 「クスッ、飲んでばかりだな。10代だぞ。」

 ユウは大学に進学したが大学でもバドミントンを続けており、しょっちゅう高校の体育館にOBとしてバドミントンをやりにきていた。マコトが高校を卒業した後もその風習は残っていて、マコトの1個下の加藤十二トウジを引き連れてバドミントンをやりに行っていた。

 バドミントンをやりに行くのは本気だったが、半分ナンパな気持ちもしっかりあったのは言うまでもない。

 マコトは高校を卒業して専門学校に通っていたが、その二年の時である。

 そのころマコトは専門学校での授業が忙しく、なかなかバドミントンが出来ずにいたが、ユウとトウジは相変わらず半分ナンパなバドミントンライフを満喫していたある日である。

 「マコトッッ!。今年の高校生はいいぞ。」とトウジが愛車であるヤンキー仕様の黒色トヨタチェイサーの中で叫び声を上げた。

 「いいぞ。」とは「可愛いぞ。」と同義語であるのは言うまでもない。

 「そんなにいいの?。」とマコトはユウに尋ねた。

 「トウジが言ってるのは一人ギャルっぽい子がいるんだけどその子のことだな、俺はその子と一緒に居るおとなし目の子がいいな。」

 「ほー。つってもユウさんも今二十歳になったでしょ?つまり5個下ですか?」マコトはさらに尋ねた。

 確かに20歳と25歳、25歳と30歳、95歳と100歳ならあまり年齢は関係なさそうだが、15歳と20歳はギリギリアウトじゃないのかとマコトは思った。

 「それなんだよ。まあ確かに可愛いんだけど5個しただからな、大学にも可愛い子はたくさんいるし、まあ付き合うことはないなー。」とユウ。

 この人は偶にこういうナンパ師的な発言をするよなとマコトは思った。

 ただユウは実際にモテるタイプであったのでこういう発言は、似合わなくはない。

 「俺は3個下だからなんも問題ないけどな。」と余裕のトウジ。

 「まあお二方精々頑張ってくださいよ。」とマコト。


   ※


 「ドンッドンッ。」と雷に似た爆発音が響き渡った。

 マコトはビクッとして音の方角を確かめた。

 マコトの進行方向の右側の森だか公園だかの奥の方から大輪の花火が二つ見事に打ち上がり、マコトを少し昔の思い出の時代から引きづり戻した。

 愛車は、やっと環状8号線と国道246号線がある交差点に差し掛かっているところだった。

 「花火始まっちゃったのね、こりゃ当分進まないかな。」

 マコトは助手席に置いてあるパーラメントに火を付け、それを深呼吸の様に吸い込み吐き出した。

 「東京は狭い割に大きな花火大会とか沢山あるからな。」

 「花火大会・・ね。」

 花火の名前はよくわからないが、マコトは打ち上がり大きく柳の様に落ちる花火を眺めながら、また少し昔を思い出した。


  ※

 

 マコトは懐かしの母校の体育館でストレッチをしていた。

 事の経緯は昨日の夜に遡る。

 「お前も偶にはバドミントン行こうぜ、紹介するからよ。」と自慢げにトウジが吠える。

 「付き合ってもねえのに、紹介するは無くね?。」とユウが冷静にトウジを制する。

 「ホント可愛いからさ、確認しといた方がいいって。」とトウジは制されいるのにかかわらず興奮している。

 「わかったよ。専門も夏休みだからな、明日行くよ。」とマコト。

 まあ可愛い子を見てみたいのは事実だしな。とマコトは思った。

 「よし。明日迎えに行くからな。」とトウジが満足げに言った。

 そして今に至る。

 「初めまして、松井です。ユウさんとトウジの悪友です、よろしく。」 とマコトが在校生全員に軽く挨拶すると「よろしくお願いします。」と明るく元気の良い返事が返って来た、それに間髪を入れずに

 「右から3番目と4番目の子だ、どうだ?。」とトウジが小声で囁いた。

 マコトは右から数えてそこにいる女の子に目をやった。

 「なるほど。」誠は心のなかで頷いた。

 そこには、ちっちゃい二人組がヒソヒソと喋っており、1人は茶髪のセミロング、目は大きく、かわいらしい顔立ち、いかにも活発そうな女の子だ。

 もう一人は黒髪のこちらもセミロング、目は隣の子ほどパッチリしていないが、かわいらしい顔立ちでこちらはおとなしそうな女の子だ。

 決して悪い意味でなく控えめな感じだ。


 どっちがトウジの好みかはすぐわかっていた。

 奴は肉食系な元気な女の子が好みだからな。

 「どうだ?イイ子だろ?」よくわからないが上機嫌なトウジを無視してマコトはユウに尋ねた。

 「あっちのおとなしそうな方がユウのお気に入りの子?」

 「そっそ。割と気を効かせてくれるんだよね。」などとユウ。すると、

 「荒海先輩。ノック上げてほしいんですけど。」とおとなしそうな子が寄ってきた。近くでみると確かに可愛らしい。

 「おう。じゃあ始めるか。」とユウも万更でない感じでコートの方へ歩いていった。

 

 その二週間後の夜、マコトの携帯が鳴った、着信音はジャックジョンソン。相手はユウからだった。

 「モシ?」この頃は何でも略するのがマコトたちの中でのマイブームになっており電話に出るのもモシモシでなく「モシ」である。

 「来週の土曜暇か?」とユウ。

 「特に何も無いですけどなんですか?」とマコト。

 「花火大会行こうぜってナナとパイクーハンが言ってんだけど、あちらの指名が俺とお前らしいんだよ。」

 「マジっすか、まさかとは思ってたけど、現実になるとは。」というのも、二週間前行った部活初日の時にマコトは例の女の子二人と携帯の番号を交換していた。

 しかしそこで一つ問題だったのは他にもいた可愛く無い子だ。

マコト達の間では通称「パイクーハン」と呼ばれていた子はどうやらマコトのことを気に入ったらしく、その子とも番号を交換したのだった。

 たしかに可愛いい二人とは交換してこっちとは交換しないのはよろしくないし、別に断る理由も無かったので交換したが二日に一回位の割合でマコトにメールが届くのだ。

 「嫌だ。」マコトは速攻で返事をした。

 「そういうなよ。俺もナナと花火行きたいし、かといって二人で行くのも違うだろ?ダブルデートってことでさ、飯奢るからさ。」


 別に二人で行けば良いじゃないか?とマコトは思ったが、ユウが俺に頼みごとをするのが珍しいので、暫く考えた後しぶしぶ了解した。

 「わかった。ちゃんと飯奢ってよ。」とマコト。

 「おう。」と軽快にユウ。

 しかしこの時マコトはコレが悲劇の始まりだとはまったく気付いていなかった。そしてその日がやってきた。

 午後六時半、夏なのでまだ日は沈んでおらず、夕方だ。

 マコトは茅ケ崎駅南口のロータリーにいた。

 この日の格好はオーガニックコットンの淡いピンク色のシャツに、七分丈のデニム、足元はビーチサンダルだ。

 暫くするとユウがやってきた。

 ユウはライムグリーンのポロシャツに迷彩柄のパンツ、足元は白のエアフォースワンだ。

 「待たせたな。ナナとパイクーハンも、もう来るはずだからさ。」とユウ。今日は若干上機嫌だ。

 「俺は気がのらんな。ユウは気に入ってる女の子とだからいいけど俺はなぜパイクーハンとなんだ、てか何故俺にロックオンなんだ。」マコトは沈んでいる。

 「お待たせしました。」と明るく重なる声。

 マコトとユウは声のするほうを向くと黄色い花柄のサマードレスを着たナナが照れくさそうに立っていた。小柄で色白で良く似合っている。

 もう一人は言うまでもなくパイクーハンだ。こっちはなんと紫陽花柄の浴衣だ。

 ユウは上機嫌でマコトは気分が悪くなっていた。

 「じゃあ行こっか。」と軽快なユウ。

 その後、花火会場に着いてからは更にマコトを不運が襲った。

 「荒海先輩あっちに行ってみませんか、いろいろお店出てますし。」とナナ。

 「そうだな、じゃあちょっと行ってくるよ。」とユウ。

 マコトをパイクーハンの元に置いて二人は行ってしまった。

 それから二時間弱二人は帰ってこなかった。つまり花火が打ち上がっている最中はずっと。

 その二時間弱の間マコトはパイクーハンと何を話したのか全然覚えていなかった、覚えていたくなかったのかもしれない、ひたすら花火だけを凝視していた。

 花火が終わった後マコトの携帯が鳴った。

 「モシ。」とマコト

 「よう、調子はどうだ。」と上機嫌なユウ。

 「どこに居るの、早く戻ってこいよ。」

 「おお悪い悪い、もう目の前だ。」

 ふと前方に目をやると、爽やか過ぎる笑顔のユウとその少し右後ろをナナがついてきてる。

 マコトはユウの腕を引っ張り、小声で言った。

 「ふざけんじゃねえぞ、どこ行ってやがったんだよ。」

 「いやいや二人でしっぽり花火を見てた。」とにやけたユウ。

 あんまりにもユウがにやけているので、マコトは怒る気を無くした。

 「まあいいや、でユウさんは告っちゃったわけ。」とマコトが冷やかす。

  少し間を空けてからユウが言った。

 「いや俺から言うことはないだろ、あっちから言われたら考えるけどな。」

 「ん。」とマコトは何か違和感があることを感じたがそのまま何もいわなかった。


   ※


 「ジジジッ。」とタバコが燃え尽きマコトの指をかすめた。

 「あっつう。」と反射的にタバコを灰皿に投げ捨てまた我に返った。

 前を見ると花火大会の会場からいくらか離れたのか車が徐々に進みだしている。

 

「やっと抜けたかな。」 マコトは愛車のアクセルを強く踏みながらひとりぼやいた。

「あの一週間後だったよな、ユウさんがナナに告ったのは。」

「7年か・・早いものだな。いよいよ明日か。」

明日は2人の晴舞台だし、盛り上げるためにも早く帰って早めに休まなければ。

 マコトの車は第三京浜道路の玉川インターに乗っていた。

ここまで来ればあと小一時間で茅ケ崎だ。

マコトはアクセルを更に強く踏んで懐かしの地元へ急いだ。

初めてこのサイトで文字にしてみましたが、なかなか難しいということを実感しました。

これからもっと勉強しなくちゃと思いました。

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