表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

精神科で見た、患者が“正常を演じた”結果

その男性は、

一見して“まとも”だった。



整った身なり。



言葉遣いも丁寧で、

教育者のような雰囲気があった。



話す内容も、理路整然としていた。



「宗教は、心の支えになります」



そう語る一方で、



「のめり込みすぎない方がいい」



と、忠告することもあった。



だが——



別の日には、



同じ口で、


宗教の勧誘をしていた。



人を変え、


場所を変え、


繰り返していた。




早朝。



彼は必ず起きていた。



長い時間をかけて、


読経を続ける。



それは習慣というより、


執着に近かった。




彼は、


自分を“正常”だと信じていた。



病識はなかった。



薬物療法にも納得していない。



時折、


薬を飲んだふりをしていた。



断薬が続くと、


苛立ちが強くなる。



だが、


彼はそれを理解していた。




怒りが続けば、


保護室に入る。



行動が制限される。



だから、


表には出さなかった。




静かに、


何も問題がないように振る舞う。




そして、


機会を待っていた。




ある夜。



消灯後の巡視。



彼は、


布団を頭までかぶっていた。



その日は、


日中も落ち着いていた。



問題はないと判断した。




翌朝。



起床時間になっても、


反応がない。




違和感があった。




布団をめくる。




そこには、


誰もいなかった。




毛布が、


人の形に丸められていた。




ベッドの横。



小さな換気用の窓が、


開いていた。




人が通れるかどうか、


ぎりぎりの大きさ。




しかも、


二階だった。




想定外だった。




すぐに報告。



警察へ連絡。



職員でも捜索を行った。




二日後。



彼は見つかった。



自宅の近くで。




病院へ戻るとき、


彼は暴れなかった。




静かだった。




何も言わない。




ただ、


こちらを見ていた。




鋭い眼で。





壊れている人は、


わかりやすいとは限らない。




むしろ、


“普通に見える人”ほど、


見えにくい。



このテーマに関連する長編も書いています


▶ カクヨム

https://kakuyomu.jp/works/2912051597199534420

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ