5. 奪われた聖域
翌日。
私は昼休みを、保健室のベッドで震えて過ごした。
裏庭に行きたかったけれど、行けなかった。淡路くんたちが絶対に見張っていると思ったから。
でも、放課後になって校舎から人が減れば、少しだけなら会えるかもしれない。
そう祈りながら、私は夕暮れの裏庭へ向かった。
裏庭の入り口には、すでに栗原くんの姿があった。
彼はフェンスの前で立ち止まり、じっと何かを見上げていた。
「……栗原くん?」
声をかけながら近づき、彼の視線の先を見て、私は息を呑んだ。
入り口を塞ぐ黄色いテープと、『活動停止命令』の張り紙。
差出人は「生徒会」。
「そんな……」
すぐに分かった。淡路くんだ。
彼は学級委員長として先生や生徒会からの信頼が厚い。彼が「園芸部で危険なことが起きている」と報告すれば、生徒会はすぐに動く。
昨日、私を守るために栗原くんが戦ってくれたことが、仇になってしまった。
「栗原くん……ごめんなさい……私のせいだわ」
涙が止まらなかった。
淡路くんは、私を追い詰めるために、栗原くんの居場所ごと奪ったんだ。
私が関わると、みんな不幸になる。
「泣くな。枯れるぞ」
栗原くんの声。
怒っているわけでも、落ち込んでいるわけでもない。
彼は私の涙を指で拭う真似をして、不敵に笑った。
「想定内だ。むしろ、これで良かった」
「え?」
「立ち入り禁止、結構なことだ。誰も手入れをしなくなったこの庭がどうなるか……高みの見物といこうぜ」
彼の目には、敗北感なんて欠片もなかった。
むしろ、これから起こる何かを楽しんでいるような、強者の瞳。
(……この人は、負けてない)
権力で押し潰されたのに、彼はまだ戦う気でいる。
その強さに、私の涙は引っ込んだ。
栗原くんが言うなら、きっと大丈夫。
私は信じて待とう。このイガ栗くんが、淡路くんたちに一泡吹かせる瞬間を。




