着信音
ピヨ ピヨ ピヨ
食堂に気の抜けた音が響く。どこかで聞いた事のある音。
友人が自分のスマホを取り出す。
「なんだ着信音を変えたのか。」
僕が笑うと、友人は険しい顔をする。
「警察からだ。」
まじかよ、と思いながら、彼の電話が終わるのを待った。
「一昨日、俺の目の前で交通事故があったの知ってるよな。」
「僕が君に電話した時だろ。」
「そうそう。話を聞きたいから、五時前に家へ来るんだって。」
「なんだ。てっきり君が捕まるのかと思ったよ。」
僕が悪戯っぽく言うと、彼はムキになって反論する。
「そんなわけないだろ。隣のおっさんが、赤信号なのにスマホ触りながら歩き出したんだぜ。俺に何の罪があるっていうんだ。」
「確かに。」
「友達を疑うなよ。」
彼は笑った。
「警察も来るし、そろそろ帰る。」
いつものように彼は先に帰って行った。
僕は仕方なく、彼の分も会計して食堂を後にする。
帰り道。僕は信号待ちでスマホを見ていた。
ピヨ ピヨ ピヨ
彼のスマホの着信音が聞こえてきた。
違う。横断歩道が青の時に流れる音だったのか。
周りの人が歩き出す。
じゃあ、事故の原因は……。
僕は五時に、彼へ電話を掛けた。
彼とはその程度の友情だ。
※視覚障害者の方が勘違いする危険性がありますので、決して彼のマネをしないようにしてください。警察に捕まるかは分かりませんが。