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発狂頭巾二世-Legacy of the Madness -  作者: 海月里ほとり


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48/51

英雄の再誕-48

 貝介の非振動鉈と父親の振動鉈がぶつかり合う。高い金属音が鳴る。貝介の非振動鉈が砕け散る。構わない。ここで相手を止められるのであれば。刃が砕け、刃の根元が砕け、鍔が砕ける。そして、柄が振動に分解され、貝介の手に振動鉈の刃が触れる。

「貝介!」

 叫び声が聞こえた。衝撃。貝介は自分が吹き飛ばされるのを感じた。振り返る。鮮血が飛び散る。貝介がいた場所に八がいるのが見えた。その肩口から血が噴き出ている。貝介は転倒しそうになりながらも踏みとどまり、その反動のまま父親に身体ごとぶつかった。

「ぎゃあ!」

 父親が悲鳴を上げる。もみ合いながら、振動鉈を蹴り飛ばす。振動鉈が物理書籍の山に突っ込み、音を立てる。貝介は倒れ掛かる勢いのままに、鋭く肘を振った。肘が父親のこめかみを捉える。さらに振り上げるように顎を打つ。

「ぐが!」

 貝介と父親は床に倒れこむ。貝介はそのまま父親の肩を抑え込む。

「八! 動けるか」

「なんとか!」

 貝介は父親の首をぐいぐいと締め上げる。八が自身の肩を押さえながら駆け寄り、父親の腕を縛り上げた。

 やがて、父親の抵抗が止まった。

「危ないところだったな」

「貝介さん、さっきのはなんですか」

 八が貝介を睨みながら言った。その低い声には怒りがこもっていた。

「何がだよ」

「あっしが止めなければ腕砕けてたじゃねえか」

「割って入ってくるとわかっていた」

「そんな戦い方を教えた覚えはないぞ」

 ぎろり、と八の目が貝介を射抜く。すくみ上りそうになるほど恐ろしい目だった。

「顔、怖いぞ」

「貝介」

「わかっている。だが、あの場面ではああするのが最善だった」

 目をそらし言う。八がため息をついた。

「もう二度とあんなことはせんでくださいよ」

「わかっている。それよりお前は大丈夫なのか?」

 貝介は八の傷口を見ながら言った。傷口を抑える八の手の隙間から、だくだくと血は流れ続けているが、幸いちゃんと腕は動かせているようだった。

「まあ、なんとか。ただ、そいつを背負っていくのは無理そうですな」

 肩をすくめ、床に転がるヤスケの父親を指して八は言った。

「ああ、すまないが、空夜さんに報告に行ってくれないか? 俺が見張っておくから」

「ええ、分かりました」

 八は頷きゆっくりと歩き出した。

 その背を見送りながら貝介は右手を開いた。手の中にまだ柄の破片が残っていた。ゆるく手を振って破片を払う。危ないところだった、と思う。八の介入があと一瞬遅ければ、貝介の手も粉々に砕けていただろう。八が怒るのも無理もない。あのような無謀なことは自分でも再びしたくはないと思う。

 だが、勝った。危ないところだったが。

 貝介は床の上のヤスケの父親を見た。まだ気絶したまま、身じろぎもしない。起きてから話を聞けば、もっと詳しいことがわかるかもしれない。もはや遠慮することはない。貝介たちに襲い掛かってきたのはまぎれもない事実なのだから。

 貝介の頭にヤスケの顔が浮かぶ。頭を振って振り払う。知り合いだからと言って、容赦をすることはできない。いつかヤスケ自身に危害を及ぼすかもしれないのだから。

 ふと、床に散乱した物理書籍に目がいった。先ほど見た物理草紙はどれだろう。貝介は自身の無謀な行動はあの物理草紙がきっかけになったように思えた。父親への警戒を解かぬまま、物理草紙の山を探る。あの輝いていたものはどれだ? その時


「狂うておるのは、儂か? お主か?」


 声が聞こえた。

 

 衝撃。


 そして、貝介の意識は闇へと落ちていった。


【つづく】

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