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発狂頭巾二世-Legacy of the Madness -  作者: 海月里ほとり


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28/51

英雄の再誕-28

「ですからね。貝介さん。さっきからずっと言ってますけど、私はただの被害者なんですよ。それはあなたも見ていたでしょう?」

 にこにこと穏やかな笑みを浮かべたまま、ヤスケの父親は言った。

「ああ、だから協力してもらって事情を聴いているわけだ」

 貝介は頷いた。

 それは事実だ。その証拠にこうして話をしているのは、発狂改方の詰め所ではなくて、馬鈴堂である。

 ヤスケの父親が返り血を拭い、真っ赤になった手拭いを受け取りながら、馬鈴がぼそりと呟いた。

「俺の店で事情徴収してほしくはないんだけどな」

 貝介はじろりと馬鈴を睨む。

「ただ、客同士が話をしているだけだ。気にするな」

 なおも不服そうな馬鈴に、貝介はため息をついて言葉を加えた。

「では、再帰餅を二つ頼む」

「あいよ」

 肩をすくめながらも笑顔を作ると、馬鈴は厨房に姿を消した。

「ヤスケが心配するじゃあありませんか。早く帰りたいのですけれども」

「まあ、そう言うな。話してくれればすぐにすむ」

 ヤスケは平賀アトミックギャル美が家に送っていくことになった。平賀アトミックギャル美の思考鏡で調べれば、ヤスケの家の場所もたちどころにわかるのだろう。

 ヤスケを心配する父親の気持ちもわかる。随分と驚いた顔をしていた。そうだろう。父親が目の前で人を殺めたのだから。

 それは子供にとってあまり心地の良い体験ではない。貝介はそのことを知っていた。

「話すと言いましてもね」

 父親は笑顔のまま肩をすくめた。

「ただ体が動いていただけなんですよ。ほら、あなたはあの人を止められなかった。で、私の後ろにはヤスケがいた。平賀アトミックギャル美さんも。私が何もしなかったら、二人がどうなるかわからない。ね、困りますよ。そんなことになったら」

 父親はゆっくりと貝介に語り掛けてくる。貝介は頷きながらじっと父親の話を聞いた。

「それで、気が付いたら、あの人の持ってた棒があの人に突き刺さっていたってだけなんですから」

「あの時のあなたの動きについて聞きたいのだ」

「なにせ、無我夢中でしたからね」

「そうか」

 父親が語るのは、もうすでに何度か繰り返し聞いた説明だった。

「あなたは特に武術の心得があるわけではないのだろう」

「そりゃあ、そうですよ。喧嘩だって子供の時にしたきりです」

 変わらぬ笑顔で父親は答える。嘘をついている様子はない。少なくとも、今この男は自分の体験したことを正直に語っている。だが、あの時に見た父親の動きは明らかに異質なものだった。

――あの動きはまるで……

 貝介は浮かんだ余計な考えを振り払う。この問いではこれ以上のことを聞き出すことはできそうにない。

「ところで、話は変わるが、発狂頭巾の物理草紙について何か知っていることはないか?」

「知りません」

 貝介の言葉を遮るように、父親は言った。貝介はその顔を観察する。今までと変わった様子はない。

「物理草紙って、あれですか? 発狂頭巾好きたちが集めているっていう。いやあ、うちはそこまで熱心にはなれないですね。幻影画で十分ですよ」

 変わらぬ笑顔のまま、父親は続けた。


【つづく】

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