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英雄の再誕-19

「なにって……」

 唐突な質問に貝介は鼻じらんだ。いまさら過ぎる質問だった。そんなものはわかりすぎるほどにわかっている。

「発狂頭巾は……英雄なのだろう。お前たちが言うところの」

「うん。じゃあ、なんで英雄になったの?」

 吐き捨てるように言った貝介に、平賀アトミックギャル美は頷いて先を促す。まっすぐに見つめてくる平賀アトミックギャル美の瞳から目を逸らせないでいた。

「それは、だから、大惨禍を終わらせたからであろう。旧江戸城塞で三悪党を倒し、そこで命を落とした。その話をお前たちが英雄譚に仕立て上げたんじゃないか」

「他には?」

 平賀アトミックギャル美はさらに先を促してくる。

「他には……他に?」

 貝介は言葉を探す。発狂頭巾とは何か。

「怪しい者共がそれを模倣していて……だが、あんなのは発狂頭巾でも何でもないだろう?」

「うん、そうだね」

「なにが、言いたいのだ」

 開いた口からは、苛立ちの乗った声が飛び出した。そもそも調べているのは貝介の方なのだ、どうして自分が問い詰められなければならないのか。

「ごめんごめん」

 平賀アトミックギャル美は笑いながら、手を合わせて謝ってくる。

「ううん、でもそうだよね。それでも結構知ってる方だと思うよ」

「俺が何を知らないというのだ」

「いろいろ。そうだね、じゃあ質問を変えちゃうけど、発狂頭巾っていつからいると思う?」

「それは……父上が生きておられたころなのだから、大惨禍の少し前からだろう?」

 貝介は再び首を傾げながら答えた。父、吉貝は大惨禍の始まる前から発狂頭巾として活動していたらしい。そのころはあくまで小規模な悪党を人知れず成敗する存在であったと八から聞いている。

「でもさ、発狂頭巾の幻影画とかって、それより前の時代に活躍してるのもあるじゃん」

「それはお前が勝手にでっち上げたのだろう」

 眉間に皺を寄せながら貝介は言い返す。

 確かに発狂頭巾の幻影画の中には、発狂頭巾が戦乱の世で悪の大将を倒したり、未開の前線地で街を襲う強盗団を壊滅させたりする話もある。だが、それはあくまで幻影画の中だけの話だ。そして、その幻影画を作っているのは、目の前の平賀アトミックギャル美に他ならない。

「ま、そうなんだけどさ」

 平賀アトミックギャル美は、貝介の怒りを受け流すように肩をすくめてから続ける。

「でも、本当にそのころに発狂頭巾がいたとしたら、どうする?」

「は?」

 平賀アトミックギャル美の言葉は意味のない過程のように思えた。発狂頭巾は、貝介の父親である吉貝だ。父が戦乱の時代や、未開の時代に生きていたはずがない。

「じゃあ、もう一回質問変えるね」

 混乱する貝介に、平賀アトミックギャル美は再び問いかける。

「キミのパパ、吉貝さんってどうやって発狂頭巾に成ったの?」

「どうもなにも、それは世にはびこる悪を許せなかったのだろう」

「それは、『なんで』じゃん? 『どうやって』なったの?」

 平賀アトミックギャル美は、じっと貝介の目を見つめてくる。

 貝介はその眼差しを感じながら問い返した。

「それが、物理草紙に関係しているのか?」


【つづく】

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