カレンダー引き千切る私の背後ルームメイトが卒業制作の紙飛行機。私はベランダ飛び降り散歩のつもりが、プール帰りの一団のトレーニングされた体に感心し観覧車お弁当の会話盗み聞き最後には寝言で終わる話
ノヴェンバーと英語で書いてあるカレンダーを引き千切る。
「もう十二月か。一年が経つのは早いものだ。」
私はアメリカの私大の大学生ジョン・ヤンだ。ここは学生寮の一室。私とルームシェアしている日本からの留学生ルームメイトの桃屋杏太郎が私の後ろで卒業制作の空飛ぶ紙飛行機を製作している。紙飛行機なんだから空を飛ぶのは当前だろう。
マッドスチューデント杏太郎に呆れたので、一服しようと思い、私はベランダに出たが、やっぱり散歩をしたくなったので二階のベランダから柵を格好いい感じに飛び越え飛び降りた。
「ああ! ずっしりと響きやがる。少し太ったか?」
足の裏のジンジンとする仕方のない痛みを感じながら私は顔をあげると、スポーツ水着を着たプール帰りの水泳部の女学生の集団が談笑しながら屋根のある廊下を校舎に向かい歩いているのが見えた。
「なかなかにいい体つきをしていやがる。相当トレーニングを積んだのだろう。」
少し太った私と鍛えられた彼女たちの肉体を私は対比させていた。性欲をそそられることはなかった。それは彼女たちが醜かったというわけではない。動物行動学を専攻する私には性欲はそもそもないものに思われていた。発情期にのみ発情するのが哺乳類界のひいては殆どの有性生殖動物の常識である。進化の根はそのような性欲の持ち主だった人間の男も女が思うほど性欲的ではないと思う。もしそうだとしたら男女が共に働くことさえ不可能に違いない。一部の異常者が悪目立ちをしているだけだという持論を私は持っている。また、性的なコンテンツに触れ過ぎて脳がおかしくなっているのだろう。私は女に性交欲を感じたことが一度もない。
「この前うちの彼氏と観覧車デートしたんだけど、高所恐怖症でめちゃビビっててウケたわ〜。」
「あはは、はは。リサ、貴方はサディストね。」
寒さをものともしない女たちの惚気話に私は辟易した。
「あのリサとかいう女の男は気の毒だな。」
私は思った。Mなのだろうか? 蓼食う虫も好き好きという諺が日本にあるように人には人の好むところがあり、それぞれそれで問題ないのだ。私はしばらく彼女たちの会話に聞き耳を立てることにした。
「あ、お弁当買いに行かないと!」
確かにもう昼の13時を回っている。昼食どきだろう。私も自分の空腹に気がついた。何か学食に買いに行くか。
「もうこの小説も終わりだぞ。」
ベンチに寝そべりながら寝むっているらしい黒人学生が寝言を言う。