表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

見えない魚雷

作者: 口羽龍

 ある日、丈一郎じょういちろうは海を見ていた。ここは漁師町で、漁船を多く見かける。丈一郎の家も漁師一家で、将来は漁師になろうと思っている。


 と、そこにたけるがやって来た。尊の家族も漁師で、尊自身も漁師だ。尊は少し悩んでいる表情だ。何があったんだろう。


「どうしたんだい?」

「昨日、漁に出てたら、何かがぶつかったような衝撃を感じたんだ」


 尊は異変を感じていた。昨日、漁に出ていたら、何かがぶつかったような感じがした。何がぶつかったのかは全くわからない。


「船は?」

「それが無傷なんだよ。けっこう大きい衝撃だったのにな」


 だが、実際に船を見たところ、全く傷がないのだ。明らかにおかしい。これだけ大きな衝撃があったのに、傷が全くないなんて、おかしいな。


「僕も気になるな」


 丈一郎も気になった。ひょっとして、幽霊船だろうか? だが、ここに幽霊船のうわさなんてなかった。


「どうしてこんな事が起こるんだろう」

「僕もわからないよ」

「うーん・・・」


 丈一郎は考え込んでしまった。尊は首をかしげている。2人とも、その理由が全くわからないようだ。


 尊は家に戻っていった。もう今日は家に帰ろう。家に帰って、気持ちを落ち着かせよう。


 帰り道、丈一郎考えていた。あの衝撃は、何だろう。全く見当がつかない。それに、傷が全くないなんて、おかしいな。


「大きな衝撃なのに、傷がないって」


 と、丈一郎はとある井戸端会議を聞いた。井戸端会議なんて、そんなに見ないのに、どうしたんだろう。


「知ってる? この辺りって、回天の基地があったんだって」


 回天とは戦時中に日本軍にあった、潜水艦で敵艦に体当たりをする部隊の事だ。丈一郎は首をかしげた。回天の事を全く知らない。神風特攻隊は知っていても。


「それは知らなかった」

「最近、回天の幽霊を見るんだよ」


 主婦は少しおびえていた。最近、回天で亡くなった兵士の幽霊を見るのだ。何かされそうで怖いので、無視しているという。


「えっ、本当?」

「うん。不吉ね」

「私もそう思う」


 丈一郎はその話に聞き入っていた。この漁師町に、そんなのがあったとは。まさか、あの衝撃って、幽霊が原因だろうか? いや、そんなはずがない。


「ここって、こんなのがあったんだ。でも、回天って、何だろう」


 丈一郎は帰っている間、考えていた。果たして回天とは、何だろう。船で感じる衝撃に関係があるんだろうか?




 翌日も丈一郎は海を見ていた。海では尊が漁師をしている。周りには漁をしている船はいない。穏やかな日中だ。今日もこうして穏やかな日々が続くんだろうと思っている。


 と、尊の船に異変が起きた。揺れている。何が起こったんだろう。丈一郎はじっとその様子を見ている。


「あっ、尊・・・」


 尊の船は転覆しそうなほど揺れている。海は全くしけていないのに、何があったんだろう。


「えっ、尊! 尊!」


 と、尊の船の周りから男が出てきた。その男たちは軍服を着ている。まさか、回天の兵士の幽霊だろうか?


「何だあれ・・・」

「な、何をする!」


 尊は抵抗するが、彼らはやめようとしない。彼らは不気味な表情で、尊を海に沈めようとする。


 その時、誰かが丈一郎を捕まえた。突然の出来事に、丈一郎は戸惑った。


「や、やめろ!」


 丈一郎は抵抗したが、全く離そうとしない。彼らは一体、何だろう。まさか、回天の兵士だろうか?


 丈一郎は潜水艦に連れて行かれた。この中に連行されると思われる。でも、どうしてだろう。


「何に乗せる!」


 潜水艦の出入り口が閉まった。無理やり乗せられた丈一郎は辺りを見渡した。様々な機器がある。まさか、彼らは回天だろうか?


「えっ、ここは?」

「発進!」


 潜水艦は発進した。でも、どこへだろう。全くわからない。


「こ、これは潜水艦?」


 実は潜水艦は1945年の太平洋戦争末期にタイムスリップしていた。丈一郎は全く気付いていない。


 と、前方に敵の軍艦を見つけた。これに体当たりをしようというんだろうか?


「おい、戦艦を見つけたぞ!」

「えっ!? まさか、これは回天?」


 えっ、まさかこれに体当たりするの? そんなの嫌だ。死にたくない。もっと生きたいのに。


「突撃!」

「えっ、えっ・・・。死ぬのは嫌だ!」


 潜水艦は敵艦に突撃していく。敵艦は全く気付いていない。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!」


 潜水艦は敵艦体当たりをした。潜水艦に乗っていた人々は全員死んだ、丈一郎も含めて。


 それ以来、丈一郎を見た人はいないという。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ