アヴィスのポーションは
おかしい。何かがおかしい。
アヴィスを脱退させて新しく入れた作成師レオナルドはアイテムの複数同時作成が出来た。完成したアイテムの出来も悪くない──はずなのに、
何かがおかしい。
たとえば治癒ポーションをとって見てもおかしい。
アヴィスのポーションは治癒効果が薄かった。カスだ。対するレオナルドの治癒ポーションはどれも完璧とは言えないが治癒を完了することができた。
それだけなら良いが、ポーションを飲んだ直後の「戦闘力の向上」がレオナルドの治癒ポーションにはなかった。
「何故だ」
「何故と言われても」
レオナルドは困ったような頭を掻いた。
「そもそも治癒ポーションに『戦闘力を向上させる』なんて効果はないでしょ。だって『治癒』の為のポーションなんだから」
「しかし、あいつのポーションを飲んだら……」
現在の戦闘力は「8,900」だが、アヴィス作のポーションを飲めば「8,900+500」という様な、向上効果が確認された。
アヴィスの体調に左右されて「500」の時と「300」の、絶好調の時は「1000」だったことがある。
……両親の死後は「20」程度だったか。
「そのアヴィスって人、もしかして〝打刻〟のアヴィスですか?」
「……だ、こく?」
「はい。前は喧嘩場に良く来てた人なんですけど、あの人がパンチを打つと、相手の戦闘力が向上するんですよ。まるで金属に打ち刻むように。それでいつもボコボコにされてて。身体は傷だらけ。ついたあだ名は〝打刻〟のアヴィス」
「付与術士か……? しかし、あいつの能力は〈クラフト〉で、作成師だ」
「俺教養あるんでわかりますよ。時々いるんですよね。適性とは違う能力が発現するパターン。その場合、なんだっけな。ライクって普通は『自分の魂』との接続で発現するんですけど、適性外発現の場合は一説によると前世の魂が現存していて、それとつながってしまったりするんですね。たぶんアヴィスさんの場合は『現世』と『前世』のはんぶんこなんじゃないかな。現世の部分が『戦闘力の向上効果』として現れてるのかも」
レオナルドは語る。
「ともかく、あの人の治癒ポーションは凄いんすよ」
胸にざわつきが走る。
そのざわつきを振り払うように叫んだ。
「ならばお前も多様なポーションを造れ……! あいつより優れたポーションを造れ!! 『出来ない』なんて言い訳はごみ箱に捨てろ!」
「横暴だなァ~!」
「黙れ……! 馬鹿者……!」
◆
着ぐるみの中で汗を拭いていると、ドナさんが言う。
「そういえばこのパーティ他にメンバーはいないの?」
「いない。俺とドナさんだけ」
「えーっ、わいわいパーティー気分のパーティは!?」
「俺まだ共通語使いはじめて5年だからすべて理解できてる訳じゃねェからいきなり難しい文章はちょっとやめてくれませんかね。っつーか設立から1ヶ月ちょいしか経ってねェのよこのパーティ。だからいないのは当然っつー訳。おわかり?」
「ハンナは2年で共通語マスターしたよ」
共通語めっちゃ難しいのに。
「パワハラですか。警察呼ぶよ」
「多少不細工な新入社員?」
閑話休題。
「つまるところ、このパーティはこれから人が集まる予定、と言うことね」
「まだ見ぬ仲間といろんなクエストを熟して金を得よう!」
「冒険者ドリームだね! おー!」
「まだ見ぬ仲間と夢を追い求めて各地を駆けよう!」
「これまた冒険者ドリーム! おー!」
というわけで。
「受けられるクエストねーかなー」
「ドラゴン討伐とかあるよ」
「バッカ! バッカお前! バッカ! さっきメリイさんに説明してもらったでしょ! 受けられるクエストにはね、制限があるの! あのドラゴン討伐は最低でもCランクまで! 俺はEランクだしあんたはFランク!」
「つまんないの」
ドナさんがぷうと頬を膨らませた。ひっぱたくぞ!
「それにあんたはまだ初心者だから最初は冒険とは名ばかりの派遣労働。俺もまだ身体の傷が癒えないからあんまり戦いたくない」
「傷? あの時に……!?」
「違うよ。前居たパーティをクビになったときにボコボコにされたの」
「訴えなよ!」
「いやいやいや……」
この傷に関しちゃ弱い俺が悪くない……?
「すぐに脱線するんだから。うーん……これにしよう。薬草採取」
「薬草採取! 薬草系も詳しいよ!」
「さすがだぜ姉貴」
「姉……!」
俺の発言に気を良くしたらしいドナさんがニッコリ微笑んだ。
「それじゃあ行こう!目的地は何処!?」
「ウィンタス草原だよ、ドナさん」
ざまぁを書けそうにないのでタグから外してきていっすか?(こらーっ! 逃避すなーっ!)