おそらくきっと
兄貴たちとの冒険は続いた。
兄貴の「朝日コレクション」も随分と貯まってきた。
時々自慢しに来てくれた。
兄貴の写真の腕前の成長を感じられてすごかった。
時折、警察官がやってきて、兄貴の戦闘力を見ていった。兄貴の戦闘力は30万だった。
「30万!」
「普通だよ。ヘルトは50万あるし」
ヘルトさんは偶然に偶然が積み重なった結果ライク能力を持たないで此処まで生きてきたらしいが、それでもいろいろと反則級なライクを持つ兄貴に差をつけている。もうほとんど嘘みたいな存在だ。
「でも兄貴ヘルトさんの腕へし折ってたよね」
「それは、多分……段階の補正だ」
第一段階〈クラフト〉
第二段階〈拒絶〉
第三段階〈等価〉
第四段階〈不平等〉
第六段階〈破壊〉
補正がはいって……。
第一段階〈クラフト〉
戦闘力:305,000
第二段階〈拒絶〉
戦闘力:305,000+1,000
第三段階〈等価〉
戦闘力:305,000+5,000
第四段階〈不平等〉
戦闘力:305,000+10,000
第六段階〈破壊〉
戦闘力:305,000+100,000
というフウに補正がかかるというのだが、気になりすぎる事を発見してしまう。
「兄貴、なんで第五段階隠してるの?」
「えっ」
ややあって。
「んー……お菓子食べに行くかい?」
「なんで話逸らすんですか」
俺の突っ込みに、兄貴は観念したようにうなだれる。
「俺の第五段階は……〈戒告〉だ」
「戒告……あっ」
あの〝堕告〟のデコネとの記憶が俺の中に蘇った。そういえばなんかあの男意味深な反応をしていたような気がする。
このことか!
年齢を聞いていたのは、〈戒告〉に覚醒した年齢を知りたかったからと解釈できるけど、あの男なんか普通に怪しい上に兄貴に雰囲気似てるんだよな。
というか、兄貴があの男に雰囲気似はじめている。
それを兄貴に聞いて良いのかどうか悩ましいところではあるけれど、とりあえずは黙っておこう。
「〈戒告〉の能力ってなんですか?」
「断つ能力だ。『剣を構える』『宣告』『斬る』っていう3つの行動を行うことがトリガーになってる。……ミリニオ教に属しているミリニオ派の戦士たちにはこの〈戒告〉の擬似能力が宿っているがおそらく、デコネが持つ付与能力だ。あの男、俺のようにチェスト現象が起こっていたんだ」
チェスト現象……ライクは通常『自分の魂』との接続で発現するが、適性外発現の場合は一説によると何らかの原因で今世まで前世の魂がついて来てしまって、その魂と接続してしまう現象のこと。
「しかも俺の推測が正しいと、奴は俺と同じ付与術士の適性があるらしい」
兄貴は忌々しいといったフウに呟く。
それも仕方の無いことだ。
デコネにある能力の所為で何千何万の人が犠牲になったことか。それを考えると、兄貴の怒り方はむしろ弱いように感じる。
兄貴はデコネに対して何かを察してる。
「兄貴」
「なんだい?」
「あの男……デコネについて何か知ってるんですか?」
すると、兄貴は押し黙ったり「うーん」と悩ましいといった様に唸ってみたり、また押し黙ったり、また唸ったり、また押し黙ったり……。世界でイチバン押し黙ったりした人として記録を狙えるくらい押し黙ったりした。
それでも俺は知りたかったので目を逸らさずにじいっと見つめた。
「わかった、わかった言うよ。怒らないで聞いてくれるか?」
「なんで怒る必要なんかあるんですか」
「だね」
兄貴曰く。
「〝堕告〟のデコネはおそらく、俺だ」
らしい。
俺はしばらく呆けて、正気に戻ったあとも首を傾げた。
「何言ってるんですか?」
「だから、あの男は俺なんだ」
「顔の雰囲気とか全然違いましたよ」
「顔以外の雰囲気は?」
「それは」
兄貴曰く、未来あるいは別次元の兄貴なのだというが。
「どうしてそんな仮説を?」
「まずあの男の剣に滑り止めのグリップが巻いてあった」
「そうなんですか?」
兄貴は戦闘中にそこまで見分ける事が出来る!
「それはなぜか? あの男の手が使い物にならないからだ」
「使い物にならないって?」
「そのままの意味だよ。そして、俺の手も、もうじきに使い物にならなくなる」
それってつまりどういうこと?
「第二段階に覚醒した頃にね、手に痙攣とか痺れを感じるようになっていたんだ。それはライクが覚醒する度に強くなっていっている。多分もしあったらの話だけどあと4回覚醒したら手が動かなくなるね」
「じゃあ今のうちに切り落として義手にしときます?」
「やば……」
ドン引きされてしまった。妙案だと思ったのだけど。




