日記
1日目
兄貴に拾われて一日目の夜だ。これから日記をつけようと思う。ドナさんに「あとでよかったら読ませてね」と言われてしまった。下手なことは書けない。
あのあと穴から出ると、兄貴達は警察に捕まってしまった。
どうやら大暴れしたためそれなりに説教を受けるらしい。
ミリニオ教のような嫌われ者も守らなければいけない、という不思議な哀愁が漂っていた。
宗教事におかしなことを言うといけないから、もうミリニオ教について言わない事にしようと思う。
そのあと、実はジャネタさんが違法奴隷の店を見つけていたらしく、それについての感謝状を貰った。
金銭を受けとるか、という話があったが、兄貴とジャネタさんは「金をもらうために行ったことではないから」と受け取りを拒否していた。
カッコイイ人たちだ。
2日目
ヘルトさんがギルドへ稼ぎに行ったのでついていかなくていいのか、と尋ねてみたらナタリーさんが「あのおバカさん(おそらく兄貴のことだと思う)を部屋に封じ込めた」ので大丈夫と言っていた。
どうやら兄貴の趣味のいかがわしい本を与えたらしい。
兄貴の部屋から「着衣じゃないとエロくない!」という怒声が聞こえてきた。
3日目
ナンちゃんを宿屋の前で洗っていると、ドナさんから花の形をした綺麗な髪飾りを貰った。長らく切っていなかったから伸びきっていた髪を後ろで纏めて髪飾りをそこに挿す。
兄貴は「綺麗だね」と言ってくれた。嬉しかった。
4日目
ジャネタさんが兄貴に手紙を書きなさい、と言っていた。
どうやら兄貴には兄貴分に当たる人たちがいるらしい。
その中に「魔術師ハルカ」という人の存在があるらしい
その人についての話を手紙で尋ねるのだとか。
兄貴は「あの人たちにどういう文体で書けばいいのか」と泣いていた。
5日目
兄貴が大量のリバティリングを作っていた。
〝英雄の夜明け〟の人たちと、孤児院に贈るらしい。
俺も手伝ったけれど、難しかった。兄貴はまるで職人みたい!
6日目
兄貴とヘルトさんに連れられて冒険者ギルドへ行った。
今日は登録を済ませて、冒険者になった。
そのまま〝標の一団〟に入ることができた。
ギルド職員のリリイさんが教えてくれたけれど、どうやら兄貴達はタールミナトという街でウェルスタンピードを対処した英雄らしい。
その時の様子を描いた絵を見せてもらった。
兄貴はやっぱりかっこいい!
7日目
ヘルトさんのクエストについて行ってみることにした。
大型のレッドドラゴンの討伐! 本来ならパーティ単位で挑まなければいけないクエストだったが、ヘルトさんは力を見込まれてひとりで参加できるらしい。
でも、俺がいるので保険としてナタリーさんがついて来てくれた。
兄貴は兄貴で作成師としての薬品作成クエストをドナさんやジャネタさんと行っていた。
ヘルトさんはすごかった! あの大きなレッドドラゴンをワンパン!
「弱い」と言っていた。
8日目
兄貴に武器屋に連れていってもらった。
俺は兄貴の真似をして拳銃を買った。
明日、狙撃の訓練をつけてくれるらしい。やった!
9日目
兄貴と草原狙撃の訓練をした
兄貴は30メートル離れた森の中から弾を放って、岩と岩の間にある的の真ん中に当ててしまった!
すごい! 俺もこんなふうに狙撃手として成功できるようになるだろうか。
10日目
〝標の一団〟のみんなに二つ名がついたらしい
ドナさんは〝精霊王〟、ナタリーさんは〝縄張王〟、ジャネタさんは〝蛇王〟、ヘルトさんは〝神腕王〟らしい。兄貴は「俺だけ王が入ってない」と愚痴をこぼしていた。兄貴の二つ名は「打刻」らしい。かっこいい!
◆
CHARACTER 003
ドナータ・デストリンク
〈精霊王〉という精霊達から力を借りる能力を持つ。魔眼という不思議な力を持つ魔の義眼の適合者。世界中の植物の図鑑を作る為、冒険者となりシャム・アヴィスのパーティ〝標の一団〟に加入した。メンバー第1号。シャム・アヴィスの事は「変な言動をする子だけど他人のために頑張れる優しい子だから大好き」と思っている。
◆
「魔術師ハルカが〝英雄の夜明け〟から脱退していたらしい」
ウーム、と兄貴は唸りながらそう言った。
手には便箋を持っていて、サインを見るに、〝英雄の夜明け〟弓士のイリスからの手紙であるらしかった。
「そもそも魔術師ハルカってどういう人なの?」
「俺の2年後に加入して来た人さ。ライクは〈魔術〉」
「それ以外は?」
「出身はわからない。イリスによれば昔からブレニキア訛りがあったらしいけれど……」
「ブレニキアはミリニオ教が深く根付いてるね」
ジャネタさんが言う。
「デコネの言う通り、ハルカはミリニオ教信者かな。……だとしてもだよ。〝英雄の夜明け〟は俺の尊敬するパーティだ。俺がここまで育ったのは彼らのおかげさ!」
兄貴がそういった。訴えた。
ヘルトさんはソファに寝転びながら言う。
「だからじゃねェの。そのハルカって女が加入してきたのは」
「かもね」
ナタリーさんが頷いた。
「もしかしたら、何処かで君の存在に気付いていたのかもしれない。もし気付いていたとしたら、それは病院か教会経由だが、研究所経由というのも有り得る。それはまぁともかく、君が目的だと言うことには変わりは無いだろうね」
「シヴァ派の一族と敵対しているミリニオ派の一族──ミリニオ教の信者がたまたまシヴァの転生者のいるパーティに加入してきた、なんていうのは、まぁ……有り得ない話ではないだろうけど、可能性としてもおかしな話だね」
ふと、思う。
「タールミナトでウェルスタンピードが起こったこと、ありましたよね」
言ってみる。
「その時、確かミリニオ教のデコネが街にいたんですよね」
「そうだけど……」
「じゃあ、もしかしての話なんですけどハルカさんが手引した、なんてのも可能性として考えられますよね」
「そうだけど……」
そうであって欲しくはない、という顔をする。
そりゃそうだ。自分が尊敬している組織のひとりが敵対者なんて信じたくない。そもそもこれは俺の憶測だし。
「もしそうだったら?」
「〝英雄の夜明け〟には……ルールが有るんだ。『礼儀を欠くな』『名乗りを忘れるな』『弱者を護ることを忘れるな』……〝英雄の夜明け〟のみんなはもうルールなんて守れていないけれどね。でも、持ちだそうと思う。もしハルカが本当にウェルスタンピードの要因のひとつにでもなったのなら、礼節を欠き名乗り上げもせず弱者をいたぶるスリーアウトかな」
もしそうだったら。兄貴はとても怒っている。




