はじめまして
生きていく上で、必要な物は何もない。
ただ息を吸って吐いて、吸って吐いて、吸って吐くだけ。
それの繰り返しで、こんな惨めな人生の連続。
生まれてきた事に尊重はない。
ただ、たまたま父と母が性交して、受精が成功しただけ。
それ以上の意味はこの人生にはない。
惨めな物で、空っぽの人生だった。
生きていく内に見つける何個かの宝物は見つけられず。
人として生きているだけで、人ではない何か。
きっとそういう、おかしな物の集合体が、俺なのだろう。
誰にも尊重されず、誰にも見向きもされない。
ただのオブジェクトと同じもの。
生きれど死ねど、それは誰かの人生には何の影響もない。
ただの生命器官の鼓動の副産物。
生きているだけで、死んでいるのと同じもの。
呼吸も最小限に、影は薄く。誰にも気付かれないように。
ただひたすらに、地面だけを眺めて。
ただひたすらに、惨めに。
ただひたすらに、ただ、ひたすらに。
「おっ」
爆発と怒声の中。
「大丈夫か! どうした少年」
貴方だけは見つけてくれた。
銀髪で褐色で、銀の瞳の体格の良い男の子。
赤いシャツを着ていて、鎖で黒髪黒目の人と繋がれている。
「一緒に逃げよう。おいで!」
俺と彼はこうして出会った。
◆
CHARACTER 001
シャム・アヴィス
破壊と再生の神シヴァの転生者。創造・再生の性質を受け継ぎ〈クラフト〉の能力を使う。
◆
彼はシャム・アヴィスと言うらしかった。
タールミナトからやってきたと言っていて〝標の一団〟という冒険者パーティのリーダーをやっているらしい。
黒髪黒目の方はヘルトと言うらしい。
2人は〝標の一団〟の戦力ツートップなのだと言う。
いまはどうやら知らぬ間に街が混乱に陥ってしまったので、この騒ぎに便乗して逃げ出そうという腹積もりを立てているらしいが、どうも見ていると、騒ぎの中心はこの2人のような気がしてならなかった。
「見つけたぞシャム・アヴィィィィィィィィィィス!」
「ヘルトもいた! 今度こそ死ねィ!」
勘違いではなさそうだった。
飛んで来る爆弾に何処からともなく盾があられて、それを弾く。
俺が困惑していると、ヘルトさんが言う。
「案ずるな。こいつがいる」
「いや……」
この騒ぎの中心はこの2人な気がしている!
「にゃーはっはっはっ! ウザったい! おい、ヘルト! 戦うぞ!」
「そうだな。お前も〈クラフト〉が使えるようになったことだし……そろそろ暴れてケリつけよう」
ヘルトさんが立ち上がり、腕を振るうと、ジャラララ! と鎖が蛇のようにうねり、シャム・アヴィスさんが吹っ飛んで行った。
「第四段階ッッ!」
彼が叫ぶと、青い腕が現れ、嵐のように回転して追っ手を殴り飛ばしはじめた。
「みんな気をつけろッ! シャム・アヴィスはおかしな覚醒能力を使う!」
「ミリニオ教の強靭な魂を削ってでも、シャム・アヴィス! ヘルト! キサマらはここで殺しておく!」
「出来もしないコトを」
ヘルトさんが言うと、追っ手のひとりが拳銃を出し、引き金を引いた。銃弾がヘルトさんにあたる。
「効かん! 筋肉があるからな」
「「「「なんじゃそりゃ!」」」」
ヘルトさんの恐ろしい筋肉信仰に追っ手とシャム・アヴィスさんがツッコミを入れていた。
「く、くそう……! どうしてヘルトひとりも殺せんのだ!」
「応援はまだか!」
「もう来るはずだが、どうして来ない!?」
シャム・アヴィスが笑う。
「この街に来ているのが俺達だけだと思ったか!? ならばマヌケッ! 笑止千万!」
シャム・アヴィスさんの皮膚が青色に染まっていく。
「なにぃっ」
「リーダー! 〈千里眼〉からの連絡来ました! 『ドナ』『ナタリー・コルケット』『ジャネタ・シャロトン』に応援が全滅させられたそうです!」
「1000人の応援を3人のおなごで……!?」
たった2人に1000人の応援を!?
「もしかしたら此処がキサマらの墓場かもしれないね」
「ほざけッ! それは此方が言う台詞だッ!」
シャム・アヴィスの背後に斧を構えた男がいる。
危ない……!
そう思い、能力を発動させる。
影を極限まで薄く、息は潜めて、存在感を希釈する。
地面に落ちていた拳銃を拾い、男の腕に弾丸を撃つ。
「ギャアアア!」
「なにっ!」
俺の能力は〈透明化〉と言う。能力詳細は読んで字の如く。
「ありがとう」
彼は俺にそう言って腕をぐるぐると振り回して追っ手達を殴り飛ばした。ほんとに、まるで嵐のような人。




