奪われた!
そして朝食をとった後、馬車で次の目的地に向かう。
がらがら……と車輪の回る音がしている。
じゃらじゃら……と鎖の揺れる音がする。
ちなみに配置的にはこう。
他乗客 他乗客
他乗客 他乗客
他乗客 他乗客
他乗客 他乗客
他乗客
警官 警官 警官 警官
警官 警官 警官 俺
警官 警官 警官 ヘルト
警官 警官 警官 警官
ナタリー ドナさん
ジャネタさん
ナンちゃん
ヘルトは窓からケツを突き出していた。「ト」の部分だ。
ただ服を身につけていなかっただけで14人の警官に囲まれてしまうこの社会の無情を訴えるためにも俺は政治家にならなくちゃいけないのかもしんねぇ。
ヘルトはともかく、俺は関係ないはずだ。
ナンちゃんを剥がしたのは警官なのだから。
「ほんとに君達ってバカだよねェ!」
「いままでどうして彼らの異常性が隠れてたの……?」
「仕方がなければなんでもやるんだろうねぇ。ヘルトはともかく、シャムくんもそっち側だったとはね!」
「俺はともかくってなんだ」
「そっち側ってなんだ」
そうしていると、突如馬が鳴いて馬車が転げた。
「なっ、なんだ!?」
ぐでーん、としばらく伸びていた俺だったが、俺は異常事態発生か! 人並み以上の正義感を突如開花させ、起き上がる。
スッ、とヘルトのケツの谷間に鼻をスライドさせてしまう。
到達点は──そう、ケツの穴だった。
「ぎゅえぇーーっ!?」
「む。痴漢かキサマ」
「バカヘルト! 異常事態だよ!」
俺達は手錠で繋がっていた警官(気絶している)を引っ張って馬車の外にやっとの思いで這い出る。
「女子供にはポーションをかけて捕縛しろ! 警官は脚と両腕を撃って無力化しろ!」
ボスそうな奴が人さらいそうな奴等に指示を飛ばしている。
「この牛はどうします!?」
「夕飯にする! 連れていけ!」
「ナンちゃん! あっ……それに、あの3人も」
3人が眠っている。
「連れていかれたか」
ヘルトは胡座と腕を組んで考え込む。
「ポーションというのは俺達の身体にかかっているもののことか。おそらくは能力を封じる『エリクサー』という薬だな」
「う、うう……ここは……」
「ポリスメーン! 起きましたか!」
目を覚ましたポリスメンに事情を説明する。
「エリクサーの効力が切れるのは8時間……あなた達は何故眠っていないんですか?」
エリクサーというのは、どんな病気や怪我でも治す霊薬にちなんで作られた「非能力こそ世界のあるべき姿」「ライクは病気である」という思想がめちゃくちゃ強いポーションで、触れたものは8時間能力が使えなくなり、3時間眠ることになる。
「俺はもともとライクなど持っていない」
「俺は知りまへん。それより、追わないと……」
「無理です、此処にいた警官はみんな無力化された」
多くないエリクサーを乱用するのは苛まれたか、警官は矢や銃弾で撃ち抜かれていた。
「ふむ、あの人さらいの馬車の臭いは憶えているか」
「…………わ、わるい。お前のケツ穴の臭いが強すぎて……」
「そうか。なら普通に車輪の跡を追おう」
「応援を呼びましょう!」
「いえ! そんなことをしている時間が惜しい!」
「ヘルト!」
「まかせろ」
ヘルトが鎖をちぎろうとする。が、ちぎれない。
「それは誰にもちぎれない鎖です。ゲーマリネッテイトという鉱石を使っていますので、無敵っす」
「……っすか! ならあんまり喋んないでね」
ヘルトがぐぐぐ、と地面を踏み締める。
「何故!?」
「舌噛むから!」




