情けない
木製の簡易的な義足を兄が嵌める。
動作性はあまり良くなくて、兄は今日のうちは立てなかった。
夜になると夕食を作ることになった。俺は手先があまり器用ではなかった。
第三段階〈等価〉に覚醒した後から、手の震えが止まらなかった。
強い力には強い反動が伴うらしい。
〈等価〉を発動している間は震えない。
「大丈夫?」
そう言うのはマルスだった。
「マルス」
「手伝うよ」
マルスはそう言って、洗った手をこちらに向けた。
「使わないのかい?」
「使わないよ。先生が言うには『魂のこもったご飯には幸せが宿るんだ』って。だから、能力はつかわない」
「そっか」
兄らしい言い分だ。
「……あんたのライク、俺と同じ〈クラフト〉だったんだな」
「ああ。でも、少し違う。俺の〈クラフト〉には複製なんて能力はない」
「そうなの?」
「第一段階〈クラフト〉の能力は『材料が揃えば過程をスキップしてアイテムを作成できる』という能力で、第二段階〈拒絶〉は『対象外の破壊は禁止』……つまり『非戦闘対象へのあらゆる攻撃を無効化する能力』だ。第三段階〈等価〉は『相互作用の排除』だ」
「第三段階……?」
マルスが首を傾げる。
「とりあえず、おかしい。俺の〈クラフト〉第一段階は『作業台等の前に立ち材料さえ揃っていれば過程をスキップしてアイテムを作成できる』って能力。第二段階が〈複製〉なんだ」
同じ名前の違う能力。今度は逆だ。
違う名前の同じ能力──が今まで認識していた〈クラフト〉だったが、此処に来て変わってしまった。
この能力は一体なんなんだろう?
「でも、そんなことよりさ……俺、ありがとうって言わなくちゃって思ってたんだ。俺達を護ってくれてありがとうって」
「…………君達の先生を護れなかった。君達の先生は両脚を失った、俺ならどうにか出来たのに、せずに、油断して、護れなかった」
俺にはまだ出来ない事だらけだ。
それで俺だけが痛い目を見るならまだいいのに、今回みたいに誰かが傷つくと、自分の至らなかったところが脳みそに突き刺さって、「死ね」と言う。
俺だけが傷つけば良いのに。それすら出来ない。
「情けねェよなァ……一瞬でも強くなれたと思えても、すぐに弱い自分が現れて牙を剥くんだもんなァ……」
手の震えはおさまらない。
「その牙研いだらあんたの武器じゃん。おっかねー」
マルスはそう言って、笑った。




