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ぷしゅう

「狙撃体制を!」

「しかし! リーダー! 先程のように……!」

「相互作用の排除という無敵時間は長くは持たないはずだ! そして副作用はきっと大きい! 強い力には強い反動が宿る。もしそれすらないのなら、彼は神だ」

「来ないのか」


 〈スペクテイター〉はやめよう。改名だ。〈アドベンチャー〉もやめよう。生温い命名はやめよう。改名だ。これからは〈スペクテイター〉ではなく、〈等価〉だ。〈アドベンチャー〉ではなく〈拒絶〉だ。


「俺から行っても構わんか」

「来れるものなら」


 ミレニアム・ディスコがこの挑発を受けたのはおそらく「相互作用の排除」というところに注目したのだろう。


 相互作用の排除──つまり本来ならばミレニアム・ディスコの攻撃を透過するばかりでなく、俺の攻撃もミレニアム・ディスコには通用しない筈であるからだ。


「ハッタリ」と認識したか?


 あるいは「攻撃時に限り〈等価〉の解除」が行われると推測できる。そしてその推測は極めて正確である。


 後者であった場合、不意をつく事は出来ない。きっと対応されてしまう。


 第四段階のヒントに成り得るな。


 〝俺の攻撃は通じる〟〝相手の攻撃は通用しない〟……それだけでは〈等価〉と変わらないからそれに加えて〈クラフト〉本来の〝アイテムの作成〟にフォーカスが当たる筈だ。おそらく、世界を自由に創造し直す能力か。


 閑話休題。


 やることは決定した。


「じゃあ行こうか」


 人差し指を伸ばし、中指でトリガーを弾く。ミレニアム・ディスコの右肩に弾丸がぶち当たる。


「なにっ!?」

「前者か。呆れたな」


 駆け出し、地に潜り、地上に現れて拳を引き絞る。


「な、なんだ……っ!?」

「パンチだよ」


 ナタリーが叫ぶ。


「明確に殺すつもりで殴れっ! そうしなければ君の拳は敵に塩を送るぞ!」

「承知した。助言感謝する」


 ばきり、と腕全体に血管がほとばしり浮かび上がると、皮膚が青色に変化した。


「なんだその拳ィっ!」


 ミレニアム・ディスコは腕でガードを構える。そのガードに拳をぶつけ透過。前髪を掴み、地面に叩きつけた。


「ぐあーーーっ!?」

「〝(よわき)〟を破壊し〝(つよき)〟を再生する。俺が破壊と再生を統べてやる。ただ故にっ! 邪魔な物は抹消だ」

「うるせェ」


 ぎりり、と引き金が弾かれ弾丸が

 両眼球にぶち当たる。視界が弾丸の内部構造で埋め尽くされた。


「しまった!」

「小さいものだと部分透過に慣れがなくてその箇所に集中しちゃうか! 全身透過すれば良いものを! だから隙を作られ破られる!」


 腹部に蹴りを受け、吹き飛んだ。

 空中で停止する。


「浮遊能力! どんなチートだよ」

「かなり効いたな……骨が折れたどころか」


 どろり、と血が足れる。どうやら腹部に穴が開いたらしい。


「透過がぎりぎり間に合って良かった」

「惜しいですね! もうちょっと踏み込んでいれば殺せたのに! うーん! 咄嗟の蹴りでは力を発揮できないと言うのが私の欠点ですね!」


 腹に空いた穴の疼きを撫でながら立ち上がる。


 ふむ。


「剣はどうした?」

「なんですか」

「剣で切れば殺せたろう」

「〈障壁〉が恐ろしいのでね、『防がれる』あるいは『突破できる』……この2点をね! 明らかにすると楽しくないのでね!」

「そうか。ならフェアに行こう。もっと楽しくしてやる。俺はまだお前に勝てないほど弱いらしいから」


 両手、両肘、両肩、両足、両膝、両太もも、股関節、両耳、を撃ち抜く。腹に5発。


「うん、フェアだ」

「いつ、銃をこちらに向けた?」

「嫌なら避けろ。的に見えたぞ」

「能力頼りってだけじゃないんですね! すごいです! だけど、うーん! そうだなあ、こうなっては勝てません! 勝てないとおもしろくない! 私は勝てる相手にしか喧嘩を売りたくないですので! 逃げます!」

「そうか。せいぜい強くなれよ。楽しいからな」

「待っててくださいね! 他の人に殺されないでね! 今は逃げるけど殺されたりしたら嫌ですからね! わかりましたか!」


 瞬きの内にミレニアム・ディスコと黒服達は消えていた。


「行かせて良かったのかよ!」

「ちゃんとトドメをさすとかさ!」


 子供達が怒り心頭に発しながら言う。


「今はそうするのが最善だ。状況を整理しよう。あの時俺達は君達を護りながらどうにか切り抜ける必要があった。加えて俺の兄は両脚を切られていた。大きな枷になる。君達だけならなんとかなるが、兄がいるとダメだ。一人怪我人がいると状況が変わる。出血量、出血スピード、それらを鑑みると逃した方がいい。ナタリー、治癒ポーションを飲ませなさい」

「あ……ああ!」


 地面を見る。


「短靴の種類はバラバラだな。ジャネタさん、あんたの実家の権力でブレニキアの短靴を販売している店舗の購入履歴なんかを調べられないか。それとよければ義足の材料を教えるから、集めて来てほしい」

「わかった! けど、靴屋の購入履歴はなんで……?」

「俺もやりたい事があってね。あいつらの真似をしようと思う」


 ぷしゅう、と煙が抜ける。


「アッッッ! いっ、イタいっ!! イタっ! イッッタ! 痛ェ! いってぇ! いたいいたい!」


 お腹の穴が激痛ゾ!これ死ゾ!激痛ゾ!これ死ゾ!激痛ゾ!これ死ゾ!激痛ゾ!これ死ゾ!激痛ゾ!これ死ゾ!激痛ゾ!これ死ゾ!激痛ゾ!これ死ゾ!激痛ゾ!これ死ゾ!激痛ゾ!これ死ゾ!激痛ゾ!これ死ゾ!


「治癒ポーション飲め!」

「もうないよ~!」

「作れ!」

「材料がないよ~!」

「待ってて! 私ちょっと採ってくる! ヘルト! 行くよ!」

「俺もか」

「運んで! 案内は私がするから」


 ドナさんとヘルトが出ていく。


「しばらく寝る」


 少し寝よう。

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