子供達に大人気!
TIPS 将来の夢
11歳シャム「誰も孤独にならない皆にとっての居場所を作りたい」
14歳ラム「冒険者になって世界中の朝日を見たい」
「本当のところ言うと、みんなあんたの事嫌いだぜ」
孤児院でお茶の準備をしていると、子供の一人が言った。
「先生に不義理を働いて、先生の苦労もわからないで」
「……うん」
「でも、俺は嫌いじゃなくなった」
「それは……どうしてだい?」
「俺の話、屈まないで聞いてくれたの、あんただけだ。目線を合わせるのってみんな『対等な証』とか言うけど、本当は真逆なんだ。大人は子供に『合わせてる』だけだから。全然対等じゃない」
「そうか。……君、名前は?」
「マルスさ」
「じゃあ、マルス」
「なに?」
「何かをしたくなったら1年間を空けて……出て行くときは『いってきます』だ」
この少年は俺と同じ雰囲気がある。この少年は何か燻っている目をしている。瞳の奥で燃えようとしている何かがある。
「そんで……何かあったら、君がルールだ」
それから、孤児院の食堂に集まって「おやつ会」が始まった。子供達が美味しそうに土産のまんじゅうを食べている。
「……そうだ、年齢層がわからなくて、あんまりみんなが好く内容のものがあるのかわからないけど、本も買ってきたんだ。小説と、絵本と、図鑑」
「図鑑の著者はすべてボクさ!」
「ナタリーさんの!? すっげー!」
「ありがとう、シャム!」
「ありがとうシャム!」
「どういたしまして。気に入ってくれたみたいで良かった」
子供達が楽しそうだと、自然と口角が上がる。
「アヴィス」
ヘルトが言う。
「眠いから俺は寝る。出発は明日だ」
「やけに自由人だな……」
「いいじゃん! 私ももっと子供達と遊びたい!」
「久しぶりの夜だね」
「私も子供達と遊びたいわ、アヴィスくん」
「うん。……そうだね。そうしたいけど、兄ちゃんと皆次第だ」
子供達の総意は。
「ナタリーさんが泊まってくならいいよ!」
だった。子供に大人気すぎる。
「俺も構わないよ。部屋は空いてるしね」
「そっか。じゃあ、そうするか……」
旅はいつでもできる。それに、損は無いはずだ。
そうして、この日は此処に泊まることになった。「特別授業」と称してナタリーの科学の授業やドナさんの植物学の授業、ヘルトの体育の授業が行われた。
「あんたはなんかねーの?」
マルスが言った。
グラウンドにいた子供達が全員俺の方を向くのを感じた。
「俺か。俺は一芸に秀でている訳でもないしな……」
背嚢をあさって、何かに使えるものは無いか、と探ってみる。ペイント弾を発射する銃がある。
「皆に配るには少なすぎるな」
「それなら俺に任せてよ」
マルスがおもちゃ銃を手に取ると淡く光を発した。
「俺のライク……〈クラフト〉って言うんだけど」
「えっ!?」
「なにか?」
「えっ、いや……なんでもない」
……まぁ、〈作成〉だって何人もいるしな……。〈クラフト〉が二人いてもおかしくはないか……。おかしくはないけど、びっくりしたな……。
「〝研究〟するとアイテムの複製が出来る様になるんだよね。ほい! 〝複製〟っ!」
寸分違わぬおもちゃの銃が完成した。ペイント弾も複製したらしい。
「それで、これをどう使うの?」
「俺は…………例えば……そうだな、このおもちゃ銃はバネが強いから……このグラウンドの端から端までざっと20メートル。この離れた距離にある的に当てられる」
「うっそだぁ! できっこないよ!?」
「風を読み、軌道を計算する。空気宙にはいろいろな物が待っているからそれも込みで計算する。計算したものを、視界に現れるようにイメージする。ほぼ完璧な補助が完成するから、そうしたら、放つ」
少女が的を見に行く。
「ど真ん中命中!」
「一芸に秀でてんじゃねぇか!!」
「動く的だとこうは行かない。俺のこの特技は数学とかいろいろな知識を使わないと出来ない。だから、それはナタリーに教えてもらうべきだ。俺がみんなに教えてやれるのなんて……そうだな、栗の美味しさくらいだが……」
「栗が美味しいのなんて知ってるよ!」
「だね。じゃあ踊ろう」
「踊る?」
「ああ。踊ると楽しいんだ」
楽しい時間を過ごさせてあげられただろうか。




