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 緊張を紛らわせるためにナンちゃんを撫でていたらナンちゃんは嫌になったのか女性陣の方へ行ってしまい、ジャネタさんに甘えていた。


 俺は頭の中をぐるぐると走り回ってぐちゃぐちゃにしていく余計な思慮をここぞとばかりに恨んでいた。


 だが、「考えるな」と考える度に考えてしまう。


 もし拒絶されてしまったら!?

 もし兄が俺をストレスに感じて死んでしまったら!?

 もし子供達に恨まれていたら!?

 もし、もし、もし……。


 吐きそうなくらいだった。こんなに辛い道中なんて他にあっただろうか。ゆらゆらと視界が揺れている。


 いまさらどんな面をして兄に顔を向けるんだ。いまさら何を言えば良いんだ。母さんを殺したのは俺だとか。父さんを殺してたのは俺だとか。兄さんに負担をかけてしまったこととか。葬式終わったあとに兄さんから逃げたこととか。いままで一度も何も言わなかったことについてとか。


 何を言っても俺は惨めなクソガキでしかない。


 俺は気がつけば着ぐるみの頭を被っていた。


 暑くて苦しかったが、これが逃げている自分への戒めであると思えば、いくらでも受け入れた。


 それから2時間後、ビンギス村から30キロメートル離れたところにある小さな建物が併設された所に到着した。アヴィス孤児院とアヴィス学校。兄が運営している学校だ。優しくて強い人。


「あっ! あーっ! ナタリーさんだ! ナタリーさんだ!」

「ほんとだ!」


 校庭で遊んでいた子供達がナタリーを見つけて大はしゃぎ。


「な! ナタリーさんいま女になってんだよ!」

「うわあ、ほんとうだったんだ……」

「先生ェーッ! ナタリーさんが愉快な仲間たちを引き連れて来た!」


 子供達が兄を呼びにいった。すぐに兄が現れる。


「ナタリー!」


 俺は兄の靴の爪先が見えた時点で既にヘルトの影に隠れていた。ヘルトは土産を抱えながら小さく「情けない」と言った。


「珍しいじゃないか、連絡も無しに……そちらの人達は?」

「パーティの仲間たちさ。しばらく旅に出るから挨拶に来たんだ」

「それはそれは……」

「どうも! ドナって言います! 冒険者パーティ〝標の一団〟メンバー第1号!」

「私が第2号」

「ヘルト。第3号」

「ブレニキア、シャロトン公爵家出身のジャネタ・シャロトン、メンバー第4号です。以後お見知りおきを」

「どうもよろしく。……リーダーは来ていないのかい?」


 俺がリーダーだという事は兄に伝わっていないのだろうか。伝えていたらこの場合「シャムは来ていないのかい」になるはずだから。


「リーダーはこいつだ」


 ヘルトが俺を前に突き出す。


「君が? なんだかユニークな恰好をしているね。黒いオオカミ?」

「アノッ」

「あっ、裏声だ」

「エット、ソノ……」


 何て言えば良いんだ。何て言えば……何て言えば。


 少し、深呼吸をしてから、ヘッドを外す。


「……ごめん、俺だ。兄ちゃん」

「シャム!」


 兄は驚いた様な顔をしていた。


「久しぶりじゃないか! 元気にしてたか!? 怪我はしてないか!? 腹とか空かせてないか!? 何かあったのか? 言え! 兄ちゃんが味方になる!」

「兄ちゃん」


 頭を下げた。


「いままで、本当にごめん。何も言わないで家を出たり、父ちゃんとか母ちゃんとかの事とか、兄ちゃんの厚意無視したりして、葬式の時もそそくさと逃げたりした。逃げ癖がついてた。本当にごめん」


 兄は、そんな事をいきなり言い出した俺の肩に手を置いた。


「許さない」


 思わず顔を上げると、兄はにっこりと笑った。


「許さないから、許されるまで生きてくれ。わかったか? シャム」

「…………」

「兄はそんなに優しくないんだよ。ほら、そろそろ3時だ。おやつにしよう。入りな、君たちもおいで」

「おー。俺クソ腹減ったぜ」


 みんな孤児院の方に入っていく。


「優しい人だね」


 ドナさんがハンカチを俺に渡しながら言った。


「……うん……兄ちゃんには一生敵わないな……」

「いこ、シャムくん」

「うん。いく」

〝標の一団〟が出揃ったので


シャム・アヴィス     15歳

ドナータ・デストロング  18歳

ヘルト          18歳

ナタリー・コルケット   23歳

ジャネタ・シャロトン   24歳


っていう年齢

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