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夜はそこに

「星が綺麗だね、シャム」


 私がそう言うと君はむっとした顔をして「わからん!」と言った。君の顔には村のいじめっ子達との喧嘩の痕の絆創膏。友達を殴ったからと両親にこっぴどく叱られたらしい。


 でも私は君が私のために怒ってくれたのを知ってるよ。


「そんな訳あるかよ」


 君はそう言って、銀色の瞳で私を見るんだ。


 君は何を考えているのかわからなくて、そんな夜も好きだったんだ。君の考えを理解して、君の考えについていく人がいつか現れてくれますように。


 私がその資格を持っているかは、まだわからないから。


「たかが光だ」


 意地っ張り。



 ◆



 イリスの腕は結局くっつかなかった。縫合してみても糸が腐って大惨事になった。だから、イリスは隻腕となる。ゴードンの目も治らない。盲目の剣士になる。最高品質ポーションを寝ずに作って500ミリリットルを80本。


 おそらくデコネの能力によるもの。


「分かつ」という能力であるという仮説がたてられたが、俺が作成した盾を斬れなかったのはおかしい。


 デコネに関してはわからない事ばかり。


 マーカスが泊まってる郊外の宿屋へ行ってみる。


「兄貴~。腹蹴って良いか?」

「アヴィス……」


 マーカスも眠っていないらしく、目の下には隈が出来ていた。随分とやつれちまった。そりゃあ……仲間の内ふたりは隻腕と盲目だ。無理もない。


 ちなみにレオナルドはピンピンしてるから「寝たら疲れ吹っ飛んだから義手作ってくるぜー」と機械を学びに故郷ブレニキアへ行ってしまった。


「構わない」

「おっ、キレないね」

「…………」


 つまんね。


「つまんねェから帰るわ! 糞が! くよくよおばけ!」


 宿屋から出て、夜も更けてきている為、俺も宿屋へ帰る。


 あんなくよくよおばけなんかもう知るか! 俺が知るマーカスはいつも理不尽にキレていてだけど勇気のある情熱に満ちた人なんだ。


「元気なマーカスを蹴りたい……!」


 そんな糞みたいな事を考えた。


 どうにかして元気になってほしいが……うーん。やっぱり落ち込むのもわかる気がするからあんまり触れるべきではないのかもしれない。


 …………。


 イリスに銃の扱い教えようかな。あっ、でも装填出来ないか。


 レオナルドがブレニキアから義手を持ち帰ってからかな。……いや、あらかじめ銃の使い方を憶えておいて、という方がいいのか? 義手に慣れるにも時間がいるだろうから。


 いや、でも……ううーん。


「眠られねェぜ……」


 宿屋から出て、復興作業も一旦終わり、小さな電灯が小さく揺れている。馬車の中の小さな電灯が行ったり来たりしている。


 俺は小さな橋の上で足を止めた。


 しゃあしゃあと段差のある水路を水が走っている。

 街灯はなく、メタンフェタミン薬物の瓶が落ちている。


 〈クラフト〉を発生させて、あたりから瓦礫をかき集めて、小さな突起を欄干に作った。意味深に「これは標なり」って掘った。


「ふふ、いつか都市伝説になってたら面白いな……」


 そうしていると、「あっ!」と聞きなじみのある声。アデルモだ。


「シャムさーん! なにしてんすか?」

「げぇっ……」

「何だその反応! 俺に会えるとかウヒョウヒョだろ!」

「ウヒョウヒョではねェな」


 人影がある。

 遠くで揺らぐ薄い明かりではこの視界ではわからないが……俺には嗅覚がある。くんくん……この、少し気取りきれない乙女チックな匂い……。


「パール!?」


 それはパールだった。

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