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ウェルスタンピード

 翌日、俺達は街の清掃クエストを行っていた。


 タールミナトには冒険者ギルド第3拠点──俺たちがいつも通ってるギルド──があり、多くある拠点の中でもいまイチバン活気に溢れている、という性質のため、治安も悪くなる。


 そのため、街の住人達は困っていたらしい。


「サボるなよ! 絶対に! この街を綺麗にし切るまで絶対に帰らない! 今日は暑いため30分おきに水分補給! 少しでも体調に異変を感じたら報告と休憩!」

「たまにはリーダーらしいこともするんだね」

「ね! ちょっとは威厳あるかもね」

「パーティ内で一番弱い癖に」

「イチバンまともなんだ俺が! 変に元気いっぱいとかでもないしゲロキショ学者でもないしパンチで木を焦がせる訳でもない。俺は普通! 覚醒能力〈アドベンチャー〉がちょっと反則級なだけの! 普通の冒険者! 反則級の第二段階なんて他にもやたらといるし。……まぁ、閑話休題。…清掃クエストだから戦闘とかにはならないと思うけど変な冒険者に絡まれても相手にしないで逃げてね。ナタリーは特に。昨日みたいに変に煽ったりするなよ」

「あれは義弟(きみ)の前だったから格好つけたんじゃないか」

「他人をやたらと煽る奴は格好よくない……!」


 そういう話し合いを終えて、俺達はすぐにブラシと水入りのバケツと洗剤を持って街中を駆け巡った。街の至るところにある落書きや泥汚れなんかをブラシでせっせと落としていく。


 こういう地道な作業が実は好きで、考え事があるときなんかはこういうことをしてしまう。いまはまぁ、それなりに無心でやれるけれど。悩みらしい悩みもないし。


 いや……悩みはあった。


 俺の〈クラフト〉というライクの事についてだ。


 やはり、〈アドベンチャー〉の能力が何度考えても「構築の応用」だけで片付けていいような内容ではない気がするんだ。


 ライクは魂内の感情が一定水準を超える程高まると第2接続がはじまり、それにより俺が〝第二段階〟と呼んでいる、「2回目の覚醒」が行われる。


 〈クラフト〉:アイテムを作成する能力

 ────↓2回目の覚醒↓────

 〈アドベンチャー〉:対象外殺傷禁止領域への再構築


 2回目の覚醒で一気に能力の毛色が変わりすぎだ。


 最初に簡単に受け入れすぎて後で「ん?」と思ったときに次々に考えてしまう。


 よくよく考えたら領域への再構築ってなんだよ。


 〝第一段階〟の〈クラフト〉から一気に離れてんじゃねェか。同じ事を何度もぐちぐちと言ってしまう。


「…………」


 ナタリーが言っていた俺の血の話。


 俺が「シヴァ派の一族」の末裔だとかなんとかっていう話。


 もし、その「シヴァ派の一族」の血統が強く関わって来ているなら、俺にはもうどうすることもできない。宗教だとか血統だとか、いろいろありすぎて全部よくわからん。


 全部よくわからんから、触れようにも触れられない。


 ままならん。


 と、そんなことを考えている最中の事だった。ドナさんが慌てて走ってきて、「街の中にあった地下道から魔獣がワッと溢れかえってきた!」と言ってきた。


「俺たちは掃除ひとつ静かに出来ないんか……?」

「スタンピード、と言うらしいな」

「近しい! 正解は『ウェルスタンピード』だ! 『スタンピード』はダンジョン内から魔獣が溢れ出す現象! ウェルスタンピードはダンジョンではない別の場所から魔獣が溢れ出す現象さ!」


 いつの間にか傍らにナタリーとヘルトが立っていた。


 ナンちゃんが「モォ~~……」といつもより長めに鳴いて、身体の形を手にすると、ある方向を指差した。


 そこを見てみる。


 ドドドド……という足音と共に街が破壊されて行くではありませんか!


「こりゃまた斬新な……お掃除だこと」

「シャムくん! 戦闘だ! 〈アドベンチャー〉の発動を!」

「了解した」

「オレイアス! デュラハン! 力を貸して」


 ハジキを出す。おっ、あっ。


「たっ、弾がない!」

「君のメイン武器なんだからいつでも使えるようにしとけ! カス!」


 カスは余計だ!


「ボクのを貸すよ。あとで取り立てるからね」

「感謝する」


 冒険者達がウェルスタンピードの魔獣群に武器を持って突っ走っていく。減れば減る度に補充されていく。


「ウェルスタンピードの魔獣は増えるからね」


 オレイアスとデュラハンが魔獣群に走っていくと、血肉が飛び、あのふたりは大分強いんだなという事がわかる。


「かっけースキルだぜ〈精霊王〉」

「カッコイイのはあのふたりであって〈精霊王〉ではないよ」


 指をトリガーにかけ、放つ。脳天に着弾。


「お前、いつも『狙ったところ』に百発百中だな」


 ヘルトが言う。


「狙ってるんだから当たるに決まってら」

「此処から魔獣群まで30メートル離れていると知った上での発言か?」

「間とは慌ただしく動いているしね」


 銃は当たらないとただの人殺すクラッカーだろ。


「みんな知らないだろうけど、シャムくんは上澄み側の人間だからね!」


 ドナさんが自慢げに言う。


「つーかお前はやく行けや!」


 ヘルトの尻を蹴る。硬かった。見ると、脚が折れていた。……嘘だろ?


「俺の尻は硬いだろ」

「尻が硬ェ男はケツ穴が弱ェんだ」

「なんだその負け惜しみは」


 ぐぐぐ、とヘルトがしゃがむ。ばきり、と音がすると、石造りの地面にヒビが入り、次の瞬間、ヘルトの影が消えた。そしてまた次の瞬間、ヘルトの姿が揺らぎ、そして次には大気がプラズマ化した。パッ、とヘルトの姿が消えた。


 そして魔獣群の方から焦げた血肉が飛んでた。


「彼はもういろいろ規格外だな」 


 ナタリーが〈障壁〉を発動させながら言う。


 うーん。俺もそう思う。多分この世界が物語の世界だとしたら、主人公はきっとあいつなんだろうな。不遜な態度のチート主人公は嫌われるぞ。


 俺を見習ってほしい。


 いや、違う。一瞬でも俺もチート主人公みたいな……変な言い方をしてしまった。俺もは別にチート主人公じゃない。反則技なんかしてないし。


 俺なんて他人よりチンチンがデカいだけのただの冒険者さ。


「俺も反則技使って無双してェ~んであれだな! モテたいな! 尊敬されたいな!」

「うーん、こっちも尊敬したいんだけど……君はなぁ……」


なんだよ。


言えよ。

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