矜持というかルール
もみくちゃにされたヘルトをナタリーが救出すると、ちょっと泣いていた。どうやらオバハン達に結構どさくさに紛れて好き勝手されたらしかった。
「許せん……俺のパーティメンバーに……!」
「訴訟しよう訴訟。ボク傍聴席に座るのが夢だったんだ」
「傍聴席割と簡単に座れるぞバカタレ学者」
「知ってたが!!」
嘘つけ。
俺達はこのままヘルト加入記念パーティをすることにした。ドナさんとナタリーは「自分たちの時はそんなのしなかったな」という顔をしていた。
「ナンちゃん、リンゴ食うか? ナシもある」
「モォ~」
ナンちゃんだけが癒しだぜ。
「そういえばお前ってナンちゃんも性的な目で見てるのか? ナンちゃん牝だけど」
調子を取り戻したヘルトが言う。
「そんな訳ないだろ。ナンちゃんは獣人か?」
「魔獣だ」
「だろ? 俺が好きなのはあくまで『獣人』という激エロのモロ種族だけなんだよ。というか獣に性的興奮覚える奴キモすぎです。じゃあ逆に聞くけど二次元の少女が好きな奴は現実の少女に手を出す?」
「出しそう」
「いいや出さない! そうと信じたい! 俺は性善説を信じたい! いいか……ダメなんだよ……! 『獣人』と『動物』を同列に見ちゃ……!! まったく違うんだよ! 獣人を愛している人間が動物に性的欲求をぶつけるっていう行為はね……! いいか!? ないッッ! 品がッッ!! まったくッッ!!まるでテメェの立場を弁えないチンチンにしか脳みそがない粗チンッッ! 獣人を愛する資格もまるで無しッッ!」
「矜持があるんだね」
「矜持というかルールだこれは! 俺は断固として獣人でしか勃起しない! わかるか!? 住み分けだよ! 住み分け以前の人間としての常識だよ! すらりとした四肢ッッ! そこに肉が乗り、毛並みがあるッッ! 五つの指にある肉球! 尻尾! 抱きしめたときの温もりの感覚すべてが『獣人でしか得られない万物に載っていない栄養素』なんだよ! いいか! その栄養素は『動物にはない』ッッ!」
思わず立ち上がり、テーブルを叩く。
「うーん! シャムくん! 君、ガチでキショいね!」
ナタリーが笑いながら言った。
「獣人好きに『動物で興奮してるのか』なんて聞くのはルールで禁止だ」
「そうなのか。わかった」
ちなみに、「普通に動物に対し性的な興奮を覚える奴はだいたい頭がおかしい」っていうのもあり忌避・嫌悪・差別の対象である。
俺はそういうのに厳しいんだ。ふざけるなまったく。
「獣人の腋はいい匂いがするんだよ……むわっと……匂いがこもっているから……嗅ごうと思えば一気に『来る』んだよ……」
「もういいもういいもういい。君って止めないと一生喋るね」
「人とはそういうもんなのさ! 夢は抱いた! 止まらない! ならばヒトはこの腕で、この脚で! 命を削って生き続ける!」




